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からあげ処『大和』?

からあげ処『大和』?2

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 「イリア。俺は冒険をしたい。」
 偽りはない。
 「ダンジョンに行く。という事ですか?」
 「ああ。」
 イリアの問いに俺は頷いて答える。
 「今のままではダメなのですか?命の危険を犯してまで、ダンジョンに行くというのですか?」
 「ああ。そうだ。」
 「今の暮らしに、ご不満ですか?」
 イリアと共に生活して、もう二ヶ月以上。俺はこの最後の質問が一番イリアにとって大事な事だと分かった。俺の思っている事を伝えなればならない。そう、思った。
 「今の暮らしに不満はない。イリアも居るし、知り合いも増えた。お金も一杯貯まったし、新しい家やお店を考えるくらいに……。でも、俺はもっと美味しい物があるなら、それを調理したいし、イリアにも、お客さんにも食べさせたい。この世界の人に食の素晴らしさ、楽しさを教えたい。もっと色々な意味で冒険がしたいんだ。」
 イリアは少し沈黙し、ため息を一つついた後、口を開く。
 「分かりました。ヤマト様がいずれそう仰ると思っていました。今のままで満足はなさらないだろうと……。思っていたよりは、お早かったですが……。」
 「なら!」
 「ただし、一つだけ、条件があります。」
 俺が喜ぼうとした矢先、イリアは俺の言葉を止めるように言う。
 「お店は続ける事です。最低でも、一週間……七日の内の三日はお店を続けて下さい。冒険とお店は分けて考えて下さい。仕入れ、特例以外、ダンジョンに行った日は、お店は休みです。そして、七日に一回は必ず休日を作って身体を休めて下さい。よろしいですか?」
 イリアなりに俺を気遣っているのだろう。俺の事だ、冒険とお店の両方を毎日続けると思ったのだろう。きっちり冒険とお店を分けて、そして休日もちゃんと確保。イリアも俺の事が分かってきたじゃないか……。
 「ああ。分かった。それでいい。とりあえず、明日から冒険!と行きたい所だけれど、エミール達にも話をつけないといけない。だから明後日からダンジョンへ行こう。」
 「分かりました。」
 イリアはそう言い、お酒を飲み始めた。

 翌日。
 エミール達に冒険を再開するため、週の半分は店を休む事を伝えた。
 いきなりの事で、出荷量などに影響し、怒られると思っていたけど、逆に安堵された。
 売れすぎて、生産追いつかなくなりそうだったり、大ニワトリの数が足りなくなるところだったらしく、ウチが半分以上休むとなんとかやっていけそうらしい。
 タイミング的にはバッチリだったようだ。
 
 そして、冒険再開当日。
 俺達は早朝からギルドに居た。
 クエストボードを見ながら、ふと思った。そういえば、長らくギルドカードを更新していなかったな。最初の一回だけだった。ここ二ヶ月、毎日、毎日、大ニワトリ時々ゴールデン大ニワトリばかり狩っていたので、少しは上がっただろう。ダンジョンに潜る前にステータスを更新しておこう。
 「アリシア。すまないけど、ステータスの更新を先にお願いしていいか?」
 俺とイリアはギルドカードを取り出す。
 「かしこまりました。」
 そう言い、アリシアは俺達からギルドカードを受け取り、直ぐに戻ってくる。
 「どうぞ。ところでヤマト様、からあげ屋さんはどうなさったのですか?今日は何時もと雰囲気が違うみたいですが。大ニワトリ狩りではないのですか?」
 アリシアはギルドカードと何時も受ける、大ニワトリのクエスト用紙を大量に持っていた。
 「ああ。今日から冒険者も再開さ、店は半分休む事にしたんだ。だから、その大ニワトリのクエスト、今日はいいよ。」
 それを聞いてアリシアは落胆する。
 「そうなんですか?あぁ。今日も楽しみにしていた、からあげが食べられないなんて……。それも週の半分も……。」
 アリシアは心底悲しそうにうなだれる。
 ちょっと悪い事をしたかな?そう思いながら、ギルドカードを確認する。
 レベル30
 ステータス、力100、魔力0、敏捷150、耐久215、器用100、運230。SP60
 おお~。力と敏捷と器用がかなり上がったな。耐久はレベルが上がった分だけか……。やはり、ステータスは本当に体験した事が反映されやすいのかもな。大ニワトリの攻撃は一発も食らってないから耐久は、ほぼ上がらなかったのだろう。
 させ、職業は……。お!冒険者が選べるようになってる。これで駆け出しは卒業だな。
 後は……おお!!料理人の職業がある!!まず料理人になって、スキルを習得して、冒険者に切り替えよう。
 スキル、『高速三枚おろし』を覚えた。
 さて、イリアのステータスはどうなったかな?俺はイリアのギルドカードを見せてもらう事にした。

 
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