52 / 161
第五十二話
しおりを挟む
「まあ、誰もがそう思って諦めて暗記に励むよね。
でも違うんだ。
僕らが気がつかないだけで極々基本的な単語以外は、
日本語でいう所の『熟語』と同じ構造なんだよ。
僕らが知らないだけで、より細かく裁断してもそこに意味があるんだ。
まあ、上げれば切りがないから一度調べてみると良いよ。
その辺りを突いた参考書もあるからね。
他人に教えられるより自分で調べた方が頭に入りやすい」
板額はそう言って笑った。
僕らは分からない事があるとすぐにネットで調べる。それにはほとんど労力はかからない。でもそれで簡単に頭に入るかどうかは別問題だ。ネットの無い頃の学生は必死で参考書などに当たって調べたそうだ。だから、その当時はそんなより高度な参考書を探し出す労力とセンスがより上を目指す学生には必要だった。母の話によると、そんな頃の学生は自分が探し出して来た参考書を自慢しあったりしたそうだ。だから地方の本屋でも参考書の部類は結構たくさん置いてあったらしい。今では生き残ってる大型書店でも雑誌と漫画が半分以上のスペースを占めて、参考書の部類はかなり隅っこに追いやられている。
「なるほどね。
だからそこが自然と身に付くからネイティヴは、
知らない単語が出て来ても前後の話の流れから類推出来て読めるのね」
「そう、いくらネイティヴだと言っても100%単語を理解出来てたり、
100%の言葉を聞き取ってるわけじゃないからね。
基本、僕らが日本語を読んだり聞いたりするのと同じなんだ。
僕らは日本語を必死に暗記したりしないのはその為なんだ。
常にその言葉に触れているとそのあたりのセンスも身に付く物だよ。
だから常に英語に触れている者は有利なんだ。
でも僕らだって意識してそう言う事を考えながら暗記すれば、
より少ない努力で多くの単語力を身に付けられる」
英単語は僕らが思っている以上に分解できる単語が多いと言う事に僕は驚いていた。僕は日本語を分解するのは結構得意で、漢字も分解して意味を覚えながら暗記したほどだった。でも事、英単語に関してはさっき板額が例に出してた『restart』など極々一部の物しか分解できるなって思っていなかった。
「まあ、同じ人が使う言葉なんだからそうなんでしょうね。
と言う事は数学の公式も同じって事でしょ。
最低限の公式を暗記すれば、そこから高次元の公式は、
仮に忘れてもその場で導き出す事が出来るって訳ね」
緑川が板額の先を読んでそう言った。
「でも、そっちばかりに進むのもダメだよ。
これはあくまで緊急回避的な知識としておいた方が良い。
基本は王道の暗記の努力をする。
でもその暗記する時に常にこの事を意識すると、
その記憶はより短時間でより強固な物になるんだ。
またテスト中に度忘れした時、サルベージする良い鍵にもなる」
板額がそう言い終わる頃、ちょうど朝のHRの開始10分前を告げる予鈴が鳴りだした。それでも周りに居た者たちは板額と緑川が行うこの貴重なレクチャーを、もっと聞いていたい者がほとんどだった。しかし、そこはさすがは葵高の生徒である。後ろ髪を引かれる思いながらそれぞれが各自の教室に向かい撤収を始めた。
そして僕も板額と緑川を連れて、と言うか二人に連れられて僕たちの教室へと歩き始めた。
「授業中はあんな態度してるから馬鹿にしてた人もいたけど、
私はね、どうせあなたの事だから猫被ってると思ってた。
油断してると絶対に中間考査の結果は上の方だと思ってのよ。
それでこっちも負けられないって頑張ったけど、
まさか私を軽々と超えて行くなんて……」
「軽々って訳じゃないよ。
さすが葵高、正直なところ試験は結構難しいって感じたよ。
油断してると足元すくわれそうな問題が多かった」
歩きながら緑川が呆れ顔で言うと、板額はそう謙遜気味に答えた。
「こりゃ、僕も今日から早速、勉強の仕方を見直さないとね。
それで期末考査では大幅に成績のジャンプアップを狙えるな」
そして僕はそう半分冗談めかしてそう言った。
「与一は変な小細工に走らず今は地道に努力しなきゃダメだよ。
あれはあくまで巴とか上位成績者が自分の壁を超える時に必要な物」
「そうそう!」
するとすかさず板額がそう言った。それを聞いて緑川も笑いながら頷いた。まったくこの二人、こういう時は彼女じゃなくて口うるさい姉みたいな感じになる。まあ、そう言う二人もこれはこれで魅力的だと思ってしまうのは惚れてしまった弱みなのだろう。
でも違うんだ。
僕らが気がつかないだけで極々基本的な単語以外は、
日本語でいう所の『熟語』と同じ構造なんだよ。
僕らが知らないだけで、より細かく裁断してもそこに意味があるんだ。
まあ、上げれば切りがないから一度調べてみると良いよ。
その辺りを突いた参考書もあるからね。
他人に教えられるより自分で調べた方が頭に入りやすい」
板額はそう言って笑った。
僕らは分からない事があるとすぐにネットで調べる。それにはほとんど労力はかからない。でもそれで簡単に頭に入るかどうかは別問題だ。ネットの無い頃の学生は必死で参考書などに当たって調べたそうだ。だから、その当時はそんなより高度な参考書を探し出す労力とセンスがより上を目指す学生には必要だった。母の話によると、そんな頃の学生は自分が探し出して来た参考書を自慢しあったりしたそうだ。だから地方の本屋でも参考書の部類は結構たくさん置いてあったらしい。今では生き残ってる大型書店でも雑誌と漫画が半分以上のスペースを占めて、参考書の部類はかなり隅っこに追いやられている。
「なるほどね。
だからそこが自然と身に付くからネイティヴは、
知らない単語が出て来ても前後の話の流れから類推出来て読めるのね」
「そう、いくらネイティヴだと言っても100%単語を理解出来てたり、
100%の言葉を聞き取ってるわけじゃないからね。
基本、僕らが日本語を読んだり聞いたりするのと同じなんだ。
僕らは日本語を必死に暗記したりしないのはその為なんだ。
常にその言葉に触れているとそのあたりのセンスも身に付く物だよ。
だから常に英語に触れている者は有利なんだ。
でも僕らだって意識してそう言う事を考えながら暗記すれば、
より少ない努力で多くの単語力を身に付けられる」
英単語は僕らが思っている以上に分解できる単語が多いと言う事に僕は驚いていた。僕は日本語を分解するのは結構得意で、漢字も分解して意味を覚えながら暗記したほどだった。でも事、英単語に関してはさっき板額が例に出してた『restart』など極々一部の物しか分解できるなって思っていなかった。
「まあ、同じ人が使う言葉なんだからそうなんでしょうね。
と言う事は数学の公式も同じって事でしょ。
最低限の公式を暗記すれば、そこから高次元の公式は、
仮に忘れてもその場で導き出す事が出来るって訳ね」
緑川が板額の先を読んでそう言った。
「でも、そっちばかりに進むのもダメだよ。
これはあくまで緊急回避的な知識としておいた方が良い。
基本は王道の暗記の努力をする。
でもその暗記する時に常にこの事を意識すると、
その記憶はより短時間でより強固な物になるんだ。
またテスト中に度忘れした時、サルベージする良い鍵にもなる」
板額がそう言い終わる頃、ちょうど朝のHRの開始10分前を告げる予鈴が鳴りだした。それでも周りに居た者たちは板額と緑川が行うこの貴重なレクチャーを、もっと聞いていたい者がほとんどだった。しかし、そこはさすがは葵高の生徒である。後ろ髪を引かれる思いながらそれぞれが各自の教室に向かい撤収を始めた。
そして僕も板額と緑川を連れて、と言うか二人に連れられて僕たちの教室へと歩き始めた。
「授業中はあんな態度してるから馬鹿にしてた人もいたけど、
私はね、どうせあなたの事だから猫被ってると思ってた。
油断してると絶対に中間考査の結果は上の方だと思ってのよ。
それでこっちも負けられないって頑張ったけど、
まさか私を軽々と超えて行くなんて……」
「軽々って訳じゃないよ。
さすが葵高、正直なところ試験は結構難しいって感じたよ。
油断してると足元すくわれそうな問題が多かった」
歩きながら緑川が呆れ顔で言うと、板額はそう謙遜気味に答えた。
「こりゃ、僕も今日から早速、勉強の仕方を見直さないとね。
それで期末考査では大幅に成績のジャンプアップを狙えるな」
そして僕はそう半分冗談めかしてそう言った。
「与一は変な小細工に走らず今は地道に努力しなきゃダメだよ。
あれはあくまで巴とか上位成績者が自分の壁を超える時に必要な物」
「そうそう!」
するとすかさず板額がそう言った。それを聞いて緑川も笑いながら頷いた。まったくこの二人、こういう時は彼女じゃなくて口うるさい姉みたいな感じになる。まあ、そう言う二人もこれはこれで魅力的だと思ってしまうのは惚れてしまった弱みなのだろう。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
甘灯の思いつき短編集
甘灯
キャラ文芸
作者の思いつきで書き上げている短編集です。 (現在16作品を掲載しております)
※本編は現実世界が舞台になっていることがありますが、あくまで架空のお話です。フィクションとして楽しんでくださると幸いです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
貸本屋七本三八の譚めぐり ~実井寧々子の墓標~
茶柱まちこ
キャラ文芸
時は大昌十年、東端の大国・大陽本帝国(おおひのもとていこく)屈指の商人の町・『棚葉町』。
人の想い、思想、経験、空想を核とした書物・『譚本』だけを扱い続ける異端の貸本屋・七本屋を中心に巻き起こる譚たちの記録――第二弾。
七本屋で働く19歳の青年・菜摘芽唯助(なつめいすけ)は作家でもある店主・七本三八(ななもとみや)の弟子として、日々成長していた。
国をも巻き込んだ大騒動も落ち着き、平穏に過ごしていたある日、
七本屋の看板娘である音音(おとね)の前に菅谷という謎の男が現れたことから、六年もの間封じられていた彼女の譚は動き出す――!
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
彩鬼万華鏡奇譚 天の足夜のきせきがたり
響 蒼華
キャラ文芸
元は令嬢だったあやめは、現在、女中としてある作家の家で働いていた。
紡ぐ文章は美しく、されど生活能力皆無な締め切り破りの問題児である玄鳥。
手のかかる雇い主の元の面倒見ながら忙しく過ごす日々、ある時あやめは一つの万華鏡を見つける。
持ち主を失ってから色を無くした、何も映さない万華鏡。
その日から、月の美しい夜に玄鳥は物語をあやめに聞かせるようになる。
彩の名を持つ鬼と人との不思議な恋物語、それが語られる度に万華鏡は色を取り戻していき……。
過去と現在とが触れあい絡めとりながら、全ては一つへと収束していく――。
※時代設定的に、現代では女性蔑視や差別など不適切とされる表現等がありますが、差別や偏見を肯定する意図はありません。
イラスト:Suico 様
はじまりはいつもラブオール
フジノシキ
キャラ文芸
ごく平凡な卓球少女だった鈴原柚乃は、ある日カットマンという珍しい守備的な戦術の美しさに魅せられる。
高校で運命的な再会を果たした柚乃は、仲間と共に休部状態だった卓球部を復活させる。
ライバルとの出会いや高校での試合を通じ、柚乃はあの日魅せられた卓球を目指していく。
主人公たちの高校部活動青春ものです。
日常パートは人物たちの掛け合いを中心に、
卓球パートは卓球初心者の方にわかりやすく、経験者の方には戦術などを楽しんでいただけるようにしています。
pixivにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる