41 / 161
第四十一話
しおりを挟む
確かにその通りだけれど、それって、もてもての望月先輩みたいな男が言うならまだしも、女の子である板額が言うかって僕は思った。それって板額が浮気を公認するって事ではないのかと思った。そりゃ、板額がそう言ってくれるのは男の僕としては嬉しいと言えば嬉しいが、やっぱり何か違うと僕は感じた。
「もちろん、僕だって与一が僕以外の女の子を愛してるってのは嫌だ。
与一が僕以外の女の子とキスしたりいちゃいちゃするのは許せない。
与一の愛は独り占めしたいってのが正直な気持ちだ。
こう見えて僕はとても独占欲の強いんだよ」
そう続けて板額は笑った。
「いや、君が独占欲強そうなのはもう分かってるって。
でも、それなら何故、僕に二人とも選べば良いって言うんだ?」
「相手に因るって事さ。
僕は相手が巴なら与一が僕以外に愛しても許せるんだ」
「いやいや、今、自分で独占欲が強いって言ったところじゃなか。
それに板額、君はさっきまで巴を散々挑発してたよね。
あれって、嫉妬じゃないのかい。
どうみても今しも緑川に殴り掛かりそうだったぞ」
僕は思ったことをそのまま口にした。だってそうだろ、あの時の板額はまさに嫉妬に狂った鬼女と化していた。刃物でも持っていれば確実に刃傷沙汰にするところだったとマジで僕はあの時思った。
「そうよ! それにもっと前からあなた、私を挑発してたでしょ!」
僕の言葉を聞いて、今まで黙っていた緑川が声を上げた。
「えっ、前から緑川を挑発してたって?」
僕は緑川に反射的に問い返していた。まあ、考えられる事は色々あった。そもそも、転校初日に彼女にしてって言ったこともしかり。告白ショーの後、特別教室で緑川を含めたギャラリーの前でキスしたのもしかり。でも、あれは挑発って感じとは違った気がした。
「板額、あなた、わざと私の目に触れる所で与一とじゃれてたでしょ」
んっ? 緑川の前で僕らがじゃれてた? 僕にはちょっと心当たりが無かった。
「与一の手をあんな風に……。
あれって私に対して……
『もう与一とは軽い関係じゃないわよ』
……ってアピールだったんでしょ。
与一が全然普通の態度でそれを受け入れてたのが、
私はまた腹立たしかったけど」
あっ! あの時の板額の指の動きか! 僕は思い出した。
緑川が言ってるのは、板額が僕の机に座って他のクラスメイト達と話す時に、時折、人目を盗んでちょっとエッチな動きで僕の手のさすってたあれだ、と僕はすぐに分かった。
しかし、確かにちょっとえっちな動きだったけど、あれはほんのわずかな間。しかも当人にしか分からないような動きだったはず。それを緑川がちゃんと見逃さずにいたなんて驚きだった。でも同時にあの時の緑川の目は板額と僕の秘め事を見ての事だったのだと理解出来た。あれは緑川の板額への嫉妬と憎悪だったのだ。
「だって、巴も与一もここまでやらなきゃ踏み出せないままだろ。
そりゃ、与一が巴に呼び出し食らった時点で、
僕がここまで出しゃばらなくても良かったかもしれない。
結果だけを知りたければ僕がここに来なくても
『僕の目』はここにもあるからね」
んっ? 『僕の目』? 今、なんか板額は変な事言った気がしたが気のせいか? 聞き返したい気持ちは強かったが、ここはこの先の板額の言葉の方が僕は知りたかった。
「僕がここまで悪役演じなければ君たちは全然相手を分かろうとしない。
与一は与一で……
これだけ傍に自分を想ってくれる素敵な女の子がいるのに、
全部の女の子を十羽ひとからげにして『めんどくさくて嫌い』だなんて。
巴は巴で……
それだけ与一の事が好きならその気持ちを言葉にするか、
はっきりしたたいどで示さなきゃ鈍感な与一には伝わらないよ。
ホント、二人とも不器用なんだから。
でもすごく優しい人たちだよね」
「板額、あなたって人は……」
板額の言葉に緑川はそう言って涙を拭いながら微笑んだ。その緑川の微笑みはすごく素敵だった。あの板額の微笑みと比べても全然引けを取らない程素敵な微笑みだった。
でも、僕はここでも板額の言葉にひっかかる所があった。緑川が優しいのを板額が知るのは分かる。でも僕が優しいとはちょっと分からない。僕はクラスでは他人と関わる事を極力嫌っている。それは板額が居る時でもほとんど変わらない。板額と二人ならそうでもないが、優しいと思われえる様な事はしてない気がする。これが仮に相手が緑川なら分かる。何故なら緑川は今と違う僕を知っているからだ。
「もちろん、僕だって与一が僕以外の女の子を愛してるってのは嫌だ。
与一が僕以外の女の子とキスしたりいちゃいちゃするのは許せない。
与一の愛は独り占めしたいってのが正直な気持ちだ。
こう見えて僕はとても独占欲の強いんだよ」
そう続けて板額は笑った。
「いや、君が独占欲強そうなのはもう分かってるって。
でも、それなら何故、僕に二人とも選べば良いって言うんだ?」
「相手に因るって事さ。
僕は相手が巴なら与一が僕以外に愛しても許せるんだ」
「いやいや、今、自分で独占欲が強いって言ったところじゃなか。
それに板額、君はさっきまで巴を散々挑発してたよね。
あれって、嫉妬じゃないのかい。
どうみても今しも緑川に殴り掛かりそうだったぞ」
僕は思ったことをそのまま口にした。だってそうだろ、あの時の板額はまさに嫉妬に狂った鬼女と化していた。刃物でも持っていれば確実に刃傷沙汰にするところだったとマジで僕はあの時思った。
「そうよ! それにもっと前からあなた、私を挑発してたでしょ!」
僕の言葉を聞いて、今まで黙っていた緑川が声を上げた。
「えっ、前から緑川を挑発してたって?」
僕は緑川に反射的に問い返していた。まあ、考えられる事は色々あった。そもそも、転校初日に彼女にしてって言ったこともしかり。告白ショーの後、特別教室で緑川を含めたギャラリーの前でキスしたのもしかり。でも、あれは挑発って感じとは違った気がした。
「板額、あなた、わざと私の目に触れる所で与一とじゃれてたでしょ」
んっ? 緑川の前で僕らがじゃれてた? 僕にはちょっと心当たりが無かった。
「与一の手をあんな風に……。
あれって私に対して……
『もう与一とは軽い関係じゃないわよ』
……ってアピールだったんでしょ。
与一が全然普通の態度でそれを受け入れてたのが、
私はまた腹立たしかったけど」
あっ! あの時の板額の指の動きか! 僕は思い出した。
緑川が言ってるのは、板額が僕の机に座って他のクラスメイト達と話す時に、時折、人目を盗んでちょっとエッチな動きで僕の手のさすってたあれだ、と僕はすぐに分かった。
しかし、確かにちょっとえっちな動きだったけど、あれはほんのわずかな間。しかも当人にしか分からないような動きだったはず。それを緑川がちゃんと見逃さずにいたなんて驚きだった。でも同時にあの時の緑川の目は板額と僕の秘め事を見ての事だったのだと理解出来た。あれは緑川の板額への嫉妬と憎悪だったのだ。
「だって、巴も与一もここまでやらなきゃ踏み出せないままだろ。
そりゃ、与一が巴に呼び出し食らった時点で、
僕がここまで出しゃばらなくても良かったかもしれない。
結果だけを知りたければ僕がここに来なくても
『僕の目』はここにもあるからね」
んっ? 『僕の目』? 今、なんか板額は変な事言った気がしたが気のせいか? 聞き返したい気持ちは強かったが、ここはこの先の板額の言葉の方が僕は知りたかった。
「僕がここまで悪役演じなければ君たちは全然相手を分かろうとしない。
与一は与一で……
これだけ傍に自分を想ってくれる素敵な女の子がいるのに、
全部の女の子を十羽ひとからげにして『めんどくさくて嫌い』だなんて。
巴は巴で……
それだけ与一の事が好きならその気持ちを言葉にするか、
はっきりしたたいどで示さなきゃ鈍感な与一には伝わらないよ。
ホント、二人とも不器用なんだから。
でもすごく優しい人たちだよね」
「板額、あなたって人は……」
板額の言葉に緑川はそう言って涙を拭いながら微笑んだ。その緑川の微笑みはすごく素敵だった。あの板額の微笑みと比べても全然引けを取らない程素敵な微笑みだった。
でも、僕はここでも板額の言葉にひっかかる所があった。緑川が優しいのを板額が知るのは分かる。でも僕が優しいとはちょっと分からない。僕はクラスでは他人と関わる事を極力嫌っている。それは板額が居る時でもほとんど変わらない。板額と二人ならそうでもないが、優しいと思われえる様な事はしてない気がする。これが仮に相手が緑川なら分かる。何故なら緑川は今と違う僕を知っているからだ。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
甘灯の思いつき短編集
甘灯
キャラ文芸
作者の思いつきで書き上げている短編集です。 (現在16作品を掲載しております)
※本編は現実世界が舞台になっていることがありますが、あくまで架空のお話です。フィクションとして楽しんでくださると幸いです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
彩鬼万華鏡奇譚 天の足夜のきせきがたり
響 蒼華
キャラ文芸
元は令嬢だったあやめは、現在、女中としてある作家の家で働いていた。
紡ぐ文章は美しく、されど生活能力皆無な締め切り破りの問題児である玄鳥。
手のかかる雇い主の元の面倒見ながら忙しく過ごす日々、ある時あやめは一つの万華鏡を見つける。
持ち主を失ってから色を無くした、何も映さない万華鏡。
その日から、月の美しい夜に玄鳥は物語をあやめに聞かせるようになる。
彩の名を持つ鬼と人との不思議な恋物語、それが語られる度に万華鏡は色を取り戻していき……。
過去と現在とが触れあい絡めとりながら、全ては一つへと収束していく――。
※時代設定的に、現代では女性蔑視や差別など不適切とされる表現等がありますが、差別や偏見を肯定する意図はありません。
イラスト:Suico 様
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる