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第27話
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油断していた。
離宮には王宮や後宮の様に沢山の使用人がいる訳ではない。
何故気付かなかった。彼が狙われる可能性に…。
彼に王位を渡したくないならば、彼を殺めるのが1番の早道だ。そして、狙うなら使用人が少なく、警備の手薄な離宮だと言う事に…。私は自分を責めた。
そして気付いた。私は信じていたのかも知れない。まさか彼らがそんな事までする筈がないと…。何故なら私は彼らの境遇に少なからず同情していたから…。
王妃を…。エドモンドを…。信じたかったのだ…。
知らせを聞いて、慌てて離宮に駆けつけた私を側妃が出迎えた。
「側妃様! リシャールは! リシャールの容態は!? 無事なんですか!?」
息を切らしながら問い質す私を、側妃は彼の部屋へと案内してくれた。
「会ってやって下さい。こちらへどうぞ」と…。
会ってと言うのだから、彼は無事だったはず…。そう祈りながら側妃の後に続く。
部屋の中へ入ると、リシャールはベッドに横たわっていた。
顔は青白く、生きているのか死んでいるのかさえ分からない。
私はベッドに駆け寄り思わず彼の手を取った。その手は温かい。良かった…生きてる。無事だった。
それを確認し、ほっとすると涙が出て来た。
「リシャール、リシャール…」
私は彼の手を握り締めながら泣いた。
「どうして…。どうして貴方がこんな目に…。私のせいだわ…」
そう呟きながら…
すると…
「………重い…」
掠れた声が聞こえた。
「…え?」
リシャールが薄らと瞳を開けて微笑んだ。
「別に死ぬ訳じゃないからそこ退いて…」
また掠れた、聞き取れるかどうかギリギリの、か細い声が聞こえた。
その言葉に私はサッと退いてリシャールを見た。彼は辛そうに視線を彷徨わせる。
私は無意識に彼の手にしがみついていた。毒を飲まされ弱った体には、重かったのだろう…。それでも彼は私を安心させようと微笑んでくれたのだ。
「…ごめんなさい」
私は彼に頭を下げた。彼は首を振ってまた微笑む。
すると…
「妃殿下、ご心配をおかけし申し訳ありません。ですが、医師の診察では命に別状はないそうです」
私達の様子を見ていた側妃がそう言って頭を下げた。
「良かった…」
側妃のその言葉を聞いて、安心して体から力が抜けた。
だが…。
「ですが、毒のせいで喉が焼け爛れております。その為、掠れて声が満足に出せません。また、そのせいで食事も流動食がやっとの状態です。暫くは起き上がる事さえ難しいと…」
側妃はそう言って目に涙を浮かべた。
「妃殿下、妃殿下には申し訳ないと思っております。ですが私は、こんな目に遭うくらいなら、この子が王になる事など望みません。この子と二人、城を出て、何処か静かな場所で平穏に暮らせたら他には何も望まないのです。お願いです。もう私達の事は放っておいては頂けませんか?」
リシャールはその母の言葉を聞いて、ベッドの上で涙を流した。
彼を王に…。
そう望んだ私や父の願いは、やっと責務から解放され、静かな生活を手に入れた親子からその生活を奪ってしまったのかも知れない。
「そうですか…」
私が頷いた時、リシャールが声を出した。
彼は声にならない声を振り絞り、必死に母親に語りかけた。
「母上…自分の欲のために…こんな卑劣な事をする人間が…王になっても良いのか…」と…。
リシャールのその言葉に側妃は目を見開いた。
王になる。それは即ちエドモンドの事だった。リシャールは今までその境遇に同情してか、王妃の事は悪く言っても、エドモンドの事を悪く言った事は無かったのに…。
「そう…それが貴方の意思なのね?」
側妃は優しい声でリシャールに語りかけた。その言葉にリシャールは頷いた。
でも、私はこの二人の会話を聞いて何か違和感を感じた。
何故、さっき側妃は城を出ると言ったの? リシャールは第2王子。今の段階で城を出る事など出来ないはず。
それにリシャールのあの言葉…。
まるで毒を持ったのはエドモンドだとでも言う様な…。
答えは1つしか思い浮かばなかった。
「側妃様、もしかしてルルナレッタが懐妊したのではありませんか?」
私は側妃に問う。すると、側妃は頷いた。
「ええ…。陛下の側近から内々に知らせを受けました。彼は私達に同情し、いつも私達を気に掛けてくれているのです」
「そうですか…。だから、リシャールは命を狙われたのですね?」
「……私はそう思っています…」
側妃のその答えに私は憤りを感じた。彼らは私との約束を破ったばかりが、その事によって邪魔になったリシャールを事もあろうに殺めようとしたのだ。
それから数日後、今度は陛下から正式にルルナレッタの懐妊が発表された。
リシャールが毒に倒れた今、私が何も言ってこないと思ったのだろう。そればかりか陛下は、リシャールに毒を盛ったのが王妃とエドモンドだと薄々気付きながら、犯人を探そうともせず、何の対処もしなかったのだ。
許せないと思った。
そしてこの事は、父と言う虎の尾も踏んでしまった。
離宮には王宮や後宮の様に沢山の使用人がいる訳ではない。
何故気付かなかった。彼が狙われる可能性に…。
彼に王位を渡したくないならば、彼を殺めるのが1番の早道だ。そして、狙うなら使用人が少なく、警備の手薄な離宮だと言う事に…。私は自分を責めた。
そして気付いた。私は信じていたのかも知れない。まさか彼らがそんな事までする筈がないと…。何故なら私は彼らの境遇に少なからず同情していたから…。
王妃を…。エドモンドを…。信じたかったのだ…。
知らせを聞いて、慌てて離宮に駆けつけた私を側妃が出迎えた。
「側妃様! リシャールは! リシャールの容態は!? 無事なんですか!?」
息を切らしながら問い質す私を、側妃は彼の部屋へと案内してくれた。
「会ってやって下さい。こちらへどうぞ」と…。
会ってと言うのだから、彼は無事だったはず…。そう祈りながら側妃の後に続く。
部屋の中へ入ると、リシャールはベッドに横たわっていた。
顔は青白く、生きているのか死んでいるのかさえ分からない。
私はベッドに駆け寄り思わず彼の手を取った。その手は温かい。良かった…生きてる。無事だった。
それを確認し、ほっとすると涙が出て来た。
「リシャール、リシャール…」
私は彼の手を握り締めながら泣いた。
「どうして…。どうして貴方がこんな目に…。私のせいだわ…」
そう呟きながら…
すると…
「………重い…」
掠れた声が聞こえた。
「…え?」
リシャールが薄らと瞳を開けて微笑んだ。
「別に死ぬ訳じゃないからそこ退いて…」
また掠れた、聞き取れるかどうかギリギリの、か細い声が聞こえた。
その言葉に私はサッと退いてリシャールを見た。彼は辛そうに視線を彷徨わせる。
私は無意識に彼の手にしがみついていた。毒を飲まされ弱った体には、重かったのだろう…。それでも彼は私を安心させようと微笑んでくれたのだ。
「…ごめんなさい」
私は彼に頭を下げた。彼は首を振ってまた微笑む。
すると…
「妃殿下、ご心配をおかけし申し訳ありません。ですが、医師の診察では命に別状はないそうです」
私達の様子を見ていた側妃がそう言って頭を下げた。
「良かった…」
側妃のその言葉を聞いて、安心して体から力が抜けた。
だが…。
「ですが、毒のせいで喉が焼け爛れております。その為、掠れて声が満足に出せません。また、そのせいで食事も流動食がやっとの状態です。暫くは起き上がる事さえ難しいと…」
側妃はそう言って目に涙を浮かべた。
「妃殿下、妃殿下には申し訳ないと思っております。ですが私は、こんな目に遭うくらいなら、この子が王になる事など望みません。この子と二人、城を出て、何処か静かな場所で平穏に暮らせたら他には何も望まないのです。お願いです。もう私達の事は放っておいては頂けませんか?」
リシャールはその母の言葉を聞いて、ベッドの上で涙を流した。
彼を王に…。
そう望んだ私や父の願いは、やっと責務から解放され、静かな生活を手に入れた親子からその生活を奪ってしまったのかも知れない。
「そうですか…」
私が頷いた時、リシャールが声を出した。
彼は声にならない声を振り絞り、必死に母親に語りかけた。
「母上…自分の欲のために…こんな卑劣な事をする人間が…王になっても良いのか…」と…。
リシャールのその言葉に側妃は目を見開いた。
王になる。それは即ちエドモンドの事だった。リシャールは今までその境遇に同情してか、王妃の事は悪く言っても、エドモンドの事を悪く言った事は無かったのに…。
「そう…それが貴方の意思なのね?」
側妃は優しい声でリシャールに語りかけた。その言葉にリシャールは頷いた。
でも、私はこの二人の会話を聞いて何か違和感を感じた。
何故、さっき側妃は城を出ると言ったの? リシャールは第2王子。今の段階で城を出る事など出来ないはず。
それにリシャールのあの言葉…。
まるで毒を持ったのはエドモンドだとでも言う様な…。
答えは1つしか思い浮かばなかった。
「側妃様、もしかしてルルナレッタが懐妊したのではありませんか?」
私は側妃に問う。すると、側妃は頷いた。
「ええ…。陛下の側近から内々に知らせを受けました。彼は私達に同情し、いつも私達を気に掛けてくれているのです」
「そうですか…。だから、リシャールは命を狙われたのですね?」
「……私はそう思っています…」
側妃のその答えに私は憤りを感じた。彼らは私との約束を破ったばかりが、その事によって邪魔になったリシャールを事もあろうに殺めようとしたのだ。
それから数日後、今度は陛下から正式にルルナレッタの懐妊が発表された。
リシャールが毒に倒れた今、私が何も言ってこないと思ったのだろう。そればかりか陛下は、リシャールに毒を盛ったのが王妃とエドモンドだと薄々気付きながら、犯人を探そうともせず、何の対処もしなかったのだ。
許せないと思った。
そしてこの事は、父と言う虎の尾も踏んでしまった。
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