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第14話
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「それでもお前がリシャール殿下と接点を持てた事は我らにとって朗報だ。して、お前から見た殿下はどうだ?」
父は私に、リシャールが王に足りる人物かどうかを聞きたかったのだろう。
だが、どうだと聞かれても、同級生だったとはいえ1度しか話した事もない相手だ。ただ、気さくに話し掛けてくれたし、笑ってもくれた。
夫になったエドモンドよりもずっと私に優しくしてくれたなぁと思い返す。
「彼の人となりまでは分かりません。ですがこれは私の直感ですが、悪い人では無いと思います」
そう答えた私に父は驚いた様に目を見開いた。
「そうか…?」
父は尋ねる。
「はい…」
私は頷いた。
瞬間、父はこれまで私が見た事もないほど声を出して嬉しそうに笑い、「そうか…そうか…」と繰り返した。
「分かった。では、我が家はお前の直感に賭けてみよう。して、お前は目的を果たすため、これからどう動く?」
これが父の答えだった。この時、父はエドモンドよりもリシャールを次の首に選んだ。だから、父のこの質問の意味は、リシャールを王にする為の道を私に示せと言ったのだ。
私は答えた。リシャールをあの離宮から再び表舞台に引き出すと。
そして、それは今まで王家に尽くしてくれた側妃の功績に報いる事にも繋がると…。
「現状、王太子はエドモンドです。ですから、私はこれからリシャールと共に王宮の裏方を仕切り、陛下と王妃に抗う力を手に入れようと思います。お父様の仰る通り、このルクソール公爵家の娘として、必ずお父様の思惑通り、リシャールを王にしてみせます」
私は父の前でそう誓った。
「そうか…」
父はまたそう言って頷いた。
「では私からも1つ提案しよう。お前は白い結婚を貫き通せ。いいか? 必ず純潔を守り通せよ」
父はまるで言い聞かせる様にそう言った。
私とて、今更あんな男に純潔を捧げるなんてまっぴらごめんだ。私はすぐに頷いた。
「全てお前の好きにするが良い。お前が目的を果たす為に必要だと思うなら我が家の名も金もいくらでも使って構わん。我が家はお前とリシャール殿下を支えよう。但し、我が家の金は、領地の民達が必死に働き納めてくれた税だ。金に色は無い。側妃の実家の様に死に金は使うなよ」
父は最後にそう言った。
私は帰りの馬車の中、これからどう動くべきか考えた。
今日、陛下に飲ませた3つの条件はこの時必死に考えたものだった。
私の白い結婚。
リシャールをエドモンドの次の王太子として認めさせる。
そしてリシャールを表舞台に立たせ、彼との距離を縮める。
全て認めさせた。
現時点での目的は果たせたと思う…。
翌日、リシャールが執務室に現れた。
昨日の今日。誰が彼に声を掛けたんだろうと訝しんでいると、リシャール自らが答えを出した。
「父上が昨日離宮へ来て、今日からここで君の仕事を手伝う様に言われたんだ」
そこまでは良かった。だが、何故かその後、エドモンドも執務室に現れた。
「母上に今日からお前の仕事を手伝えと言われたんだ…」そう言って…。
父は私に、リシャールが王に足りる人物かどうかを聞きたかったのだろう。
だが、どうだと聞かれても、同級生だったとはいえ1度しか話した事もない相手だ。ただ、気さくに話し掛けてくれたし、笑ってもくれた。
夫になったエドモンドよりもずっと私に優しくしてくれたなぁと思い返す。
「彼の人となりまでは分かりません。ですがこれは私の直感ですが、悪い人では無いと思います」
そう答えた私に父は驚いた様に目を見開いた。
「そうか…?」
父は尋ねる。
「はい…」
私は頷いた。
瞬間、父はこれまで私が見た事もないほど声を出して嬉しそうに笑い、「そうか…そうか…」と繰り返した。
「分かった。では、我が家はお前の直感に賭けてみよう。して、お前は目的を果たすため、これからどう動く?」
これが父の答えだった。この時、父はエドモンドよりもリシャールを次の首に選んだ。だから、父のこの質問の意味は、リシャールを王にする為の道を私に示せと言ったのだ。
私は答えた。リシャールをあの離宮から再び表舞台に引き出すと。
そして、それは今まで王家に尽くしてくれた側妃の功績に報いる事にも繋がると…。
「現状、王太子はエドモンドです。ですから、私はこれからリシャールと共に王宮の裏方を仕切り、陛下と王妃に抗う力を手に入れようと思います。お父様の仰る通り、このルクソール公爵家の娘として、必ずお父様の思惑通り、リシャールを王にしてみせます」
私は父の前でそう誓った。
「そうか…」
父はまたそう言って頷いた。
「では私からも1つ提案しよう。お前は白い結婚を貫き通せ。いいか? 必ず純潔を守り通せよ」
父はまるで言い聞かせる様にそう言った。
私とて、今更あんな男に純潔を捧げるなんてまっぴらごめんだ。私はすぐに頷いた。
「全てお前の好きにするが良い。お前が目的を果たす為に必要だと思うなら我が家の名も金もいくらでも使って構わん。我が家はお前とリシャール殿下を支えよう。但し、我が家の金は、領地の民達が必死に働き納めてくれた税だ。金に色は無い。側妃の実家の様に死に金は使うなよ」
父は最後にそう言った。
私は帰りの馬車の中、これからどう動くべきか考えた。
今日、陛下に飲ませた3つの条件はこの時必死に考えたものだった。
私の白い結婚。
リシャールをエドモンドの次の王太子として認めさせる。
そしてリシャールを表舞台に立たせ、彼との距離を縮める。
全て認めさせた。
現時点での目的は果たせたと思う…。
翌日、リシャールが執務室に現れた。
昨日の今日。誰が彼に声を掛けたんだろうと訝しんでいると、リシャール自らが答えを出した。
「父上が昨日離宮へ来て、今日からここで君の仕事を手伝う様に言われたんだ」
そこまでは良かった。だが、何故かその後、エドモンドも執務室に現れた。
「母上に今日からお前の仕事を手伝えと言われたんだ…」そう言って…。
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