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第5話

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「父上には別かれろって言われたんだけどね? そんな事、出来ないよ。だって僕はルルナレッタを愛しているからね。だから母上と一緒にお願いしたんだ。その時、母上は言ってたよ? お前の父親は野心家だ。だからお前と僕の子が出来たら、その子を王にするために父上も僕も母上も、皆んな排除されるって…」

 ぐうの音も出なかった。確かに父はそうするだろう。父はそう言う人だ。と言うか、最初から父の狙いはそこだった。

「そしたらさ。お前が嫁いで来た後でなら良いって…そう言われた」 

 彼は笑顔でそう報告した。

「…だからって…。側妃は正妃が3年間子を授かる事が出来なかった時に迎えられるのが般例です!」

「でも例外はあるでしょう? だってリシャールの母親は、父上と母上が結婚して1年もたたない内に父上に嫁いで来ただろ?」

「…確かにそうですが、それは特別な理由があったから…」

 リシャール様が側妃のお腹に宿ったからだ。すると、したり顔でエドモンドが言う。

「僕にだって特別な理由はあるよ?」

「まさか! ルルナレッタ様に既にお子が…?」

 私の言葉にエドモンドは慌てて首を振る。

「まさか…。そんな事をしたらお前の父親が黙っていないだろ?」

 は? いやいや。今でも充分黙っってはいないと思いますが…。

 エドモンドが嬉しそうに鼻を伸ばしながら続ける。

「ルルがさ。そんなに待てないって言うんだ。ルルはさ、可愛いよね? 僕とそんなに離れたら死んじゃうって甘えるんだ」

「はい?」

 思わず変な声が出た。私は何を聞かされているんだろう? ここは一応、初夜の床だよ? そんな場所で新妻を前に他の女の事を惚気る旦那様ってどうなの? てか、特別な理由ってそれかよ!? 然もいきなりのルル呼び始まったよ!

「そんなに愛しておられるなら何故、そのとご結婚ならさなかったのです!? 彼女は伯爵家のご令嬢です。立派に貴方の正妃として立てる立場におられると思いますが…」

 折角だから、私もそのルル呼びに乗っかってみた。

「…だって…お前と結婚しないと王太子にはなれないって父上が言うんだもん。それにルルもさ。王太子の僕の方が好きなんだって」

 何がだもんだよ。てか、貴方一体幾つです? 父上が…母上が…ルルが…って貴方に意思はないの? 然もルル様。彼女だって明らかに国母の座狙ってますよね?

「分かりました。もう戻って良いですよ!」

 呆れた私は冷たく言い放った。

「え? もういいって何が?」

 彼は私の放つ怒気を受けオロオロし出した。

「だから、私と同衾する気はないんでしょう? だったら別々に眠った方が良く眠れるでしょう?」

「それもそうだね」

 エドモンドはいきなり笑顔を見せて頷くと、夫婦の寝室からそそくさと立ち去った。

 さて、これからどうしよう…。1人残された寝室で私は呆然とする。

 いきなり前途多難だ。頭を悩ませて眠った私の前に、翌朝大量の書類の山が積み上がった。

 それを見て私は思った。ごめんなさい、お母様。私、此処で幸せになれそうにないですと…。









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