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 今この子、「まだ生きてるの?」ってきいたよね??

(まさか私、死んじゃったの??)

 眼前の少女は様子を窺いながら、胡乱げな視線をこちらに向けている。
 瞳の色はくすんだ金色をしていて、身体の線は細く儚げである。しかし見た目に反して、再び繋いだ手は逃がさないとばかりにとても力強い。

 お化けと見間違えたけれど、これはまさか自分もお化けだったりするのだろうか……。

「……まぁ、ここにいるってことはもうしぬから、かんけいないわよね」

 可愛らしく小首を傾げながら一人で納得しないで。

「あの、色々訊きたいんだけどいいかな?」
「なぁに?」
「あ、まず自己紹介するね。私は陽乃ひのあかり。あなたは?」
「…………レティシア=フローレイズ」

 外人か。いや、見た目日本人じゃないから当たり前よね。言葉が通じてるのは謎だけど、ここは不思議空間だしね。

 とりあえずは会話はできそうなので安心する。
 死後の世界っぽいこの状況、まずは冷静に状況確認しよう。

「レティシアね! ねぇ、ここはどこなの?」

 勢いこんで話しかけたせいか、レティシアが驚いたように目を瞬かせた。

「しらないわ」
「どうして私達二人だけなのかな?」
「わからないわ」
「何処へ行こうとしてたの?」
「さぁ……どこへいこうとしていたのかしら?」

 隊長! 状況が全く分かりませんっ!

 まぁ死んだら何処に行くかなんて分からないよね……日本人的思考だと、三途の川を渡ってエンマ大王様に会うのかな~とか思っちゃうけど。
 あぁ、でもレティシアは外国人だから管轄が違うのかな~?

「アカリ?でいいのかしら。わたくし、さきほどあなたにきこうとしたことがあるのだけれど」
「何?」
「……あなた、わたくしがおそろしくないの?」
「いや、全然?」

 ぼんやりとした世界のせいかレティシアの髪や瞳の色はくすんで見えるけれど、幼いながらも整った容姿は天使の様に愛くるしい。
若干つり目気味かな?とは感じるが、そこもまた可愛いと思えた。こんな妹がいたら毎日構い倒したい。

 恐ろしいどころか可愛すぎると素直に褒めちぎったら「なにをいいだすの?!」とそっぽを向かれた。照れる姿にも頬が緩んでしまう。
 誰だ! 最初にお化けと勘違いした人は!

「あなた、みためだけではなくて、なかみもかわっているのね!」
「え~、普通だと思うけど」

 見た目も中身もね。

 頬を染めるレティシアに和んでいたら、いつの間にか遠くの方に異変が起きていた。
 白い世界が、端から徐々に色が変わってきている。

「あれ何かな?」
「あれは……」

 遠くから滲むように進んでくる黒色に目を見張る。
 眉間にしわを寄せながら、

「おむかえがきたんだわ」

 レティシアがぽつりと呟いた。
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