EAR OF YOUTU

チャッピー

文字の大きさ
上 下
29 / 38

29話

しおりを挟む

 河谷学園高等学校。耳かき界隈では市内でも有数の学校で明日見流学園の耳かき部が衰退する以前は2代巨頭として最強の座を奪いあい、今では市内の耳かき部では最強、県大会レベルまで視野を広げてもベスト5常連というまさしく現状の市内王者だ。
 規模もまさに王者といった所で、大所帯であるため常に交流試合を受け付けているし、オフシーズンでは1軍だろうと個人戦なら受けてくれるケースもあるのだという。
「たしかにこりゃ凄いですね。」
 部室の設備もすごい。見回しただけでも試合につかうソファをはじめとした設備、棚にしまわれた耳かき道具。いずれも明らかに高級な品だ。
「試合に使う機器が全部ってわけじゃないよー。でもウチももう少し広いへやがほしくなるよねー。」
 友梨奈先輩は何度か来たことがあるようで、勝手知ったるといったリラックスっぷりだ。もっとも、この人はいつもリラックスしてはいるが。
「4人で使うには十分だと思うけどね・・・」
「でもここも広さに対しては練習してる人は少ないんですね。」 
 宮古先輩と伊織はそれに続く。
「大会近いし、多分1軍は合宿。2軍も個人試合とかで外に行く人が多いんですよー♡」
 後ろから高い声が聞こえる。振り返ると河谷学園の制服の女子が立っていた。
「由芽ちゃん!」
「ゆりちゃん!みゃーちゃんひさしぶりー!練習試合だよね!楽しみにしてたよー!」
「みゃーちゃん言うなって。ほら、後輩たち。挨拶。」
 宮古先輩に促され、頭を下げる。
「明日見流学園1年、耳塚柿人です。よろしくお願いします。」
「同じく、鶴城伊織です。」
「ふーん。私は小紋由芽。男子かぁ。そんなに入部希望者がいなかったの?ゆりちゃん?」
 露骨にテンションがさがった反応。なるほど。これが男に厳しいタイプの耳かきプレイヤーか。
「ん?今年の希望者はこの二人だけだったよ!」
「人手不足だと大変だね、ゆりちゃんも。」
 若干小ばかにしたような声音。目を横に向けると伊織は拳を少し握りしめて折り、宮古先輩は若干渋い顔をしている。
「そうでもないよ!この2人、とっても優秀なんだから!学校での自主練も毎日楽しいくらいだよ!でも、自主練だけじゃなくて、他の人との試合形式もやってみたいなって!」
 しかし友梨奈先輩はまったく気にした様子もなく、いや、気づいてないだけだなコレ。
「いいね!じゃあ、私達も期待に応えないとね♡」
 そう言うと由芽は練習中の部員に目を向ける。
「全員注目!これから明日見流学園耳かき部との練習試合を行います!枠は後3人!参加希望ある人はダッシュ!」
 そんな雑な決め方ある?そう思ったのも束の間、二人一組で耳かきをしていた部員やj1人でセルフ耳かきをしていた部員がはじかれたように走り出す。
「んな馬鹿な。」
「相変わらず河谷学園は血気盛んだね!」
「友梨奈、その反応はおかしいと思うよ私。」
「でも、対戦にここまで熱意があると戦いがいはありそうですね!」
 友梨奈先輩と伊織はわくわくすっぞ!と言わんばかりの反応だが、宮古先輩の反応をみるにやはりこの迫力は異常らしい。
 由芽の目の前には、背が高く妙に大人びた感じのする女子、由芽よりも更に小柄な、嫌下手をすれば大きな小学生と言った方が近いような女子、そして、その中間のような平均的な背丈の、しかしメガネが目立つ女子が並んでいた。
「薫ちゃんと、透ちゃんと、灯ちゃんね。うんいいね。じゃあ今日は私とこの三人で練習試合にしまーす♡見学はフリーだから、手が空いてる子は見に来てね!」
 一歩遅れて、並べなかった部員たちもその言葉を聴いて、練習を続けるか見学にいくか話合うペアが出てくるなど、はたから見ると奇妙な光景だった。
「じゃ、試合用のソファまで行こっか!明日見流学園の男子の力、みせてもらうね♡」
 自信と余裕に満ち溢れテイルが故の小ばかにしたような言い方。だが、これでいい。勝つのは自分達だ。余裕であるというその態度をすぐに崩してやるぞと、自分の中に闘志が燃え上がるのを自覚した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

雌犬、女子高生になる

フルーツパフェ
大衆娯楽
最近は犬が人間になるアニメが流行りの様子。 流行に乗って元は犬だった女子高生美少女達の日常を描く

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...