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19話
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リラックスしているのだろう。終わりの宣言があったにも関わらず伊織は会長の膝から起き上がる気配がない。
「タイムは4分ジャストです。はなき先生、測定器は?」
「バッチリよー。測定器の観測時間は98秒。ギリギリだけど、4割、96秒をこえたね。けど後半に快感が集中しているから、最後の耳かき、もっと時間をかければ伊織くんを負かすこともできたんじゃない?」
「たまたまです。約束ですから、伊織のことはお任せします。でもできれば、無理はさせないであげてください。」
伊織の頭を優しく膝から下ろし、ソファに寝かせる。伊織は抵抗する気配もない。本当に寝ているのだろうか。
会長は素直ではないが、伊織の耳かき愛を認めたから、勝ちを譲ったんだろう。部の存続という当面の問題は一旦解決したと言える。
「予算確保もしておきますから、伊織も耳かきを楽しめるようにお願いします
。」
そう言って会長は部室を出ていく。伊織はねむったままだ。
「じゃ、私も要件はすんだから帰るねー。友梨奈ちゃん、書類の確認はしっかりしなきゃダメよー。」
はなき先生も出ていってしまった。顧問とは。いや、友梨奈先輩はさすがに何か言わなきゃダメでは?
「ふー終わった終わった。じゃあ、市大会について考えないとね。」
そうだった。友梨奈先輩は前後の出来事の余韻とかは全く気にしないタイプだった。
「伊織は?起こす?部員になるなら一緒に聞いたほうが良くない?」
「疲れてるだろうし、まだいいんじゃないかな?」
宮古先輩の確認に応えながら、鞄から新しいお菓子を取り出した。
「市大会について考えるって言っても、耳かきって個人競技ですよね?当日まで自主練繰り返す以外になんかあるんですか?」
そう。耳かきは個人競技。2人で1人の耳かきをすることもなければ、1人で2人の耳かきをすることもない。
「そっか。耳かきの団体戦についてはまだ話てなかったよね。確かに試合そのものは個人戦だよ。1対1の個人戦。けど、個人がだした点数と時間を平均した数値でチームスコアが判定されるの。だから個人試合としてのスコアでなら勝っていても、チームスコアで負けるって場合があるわけ。」
成程。チームで負ける可能性があるのはわかった。しかし、根本的にやることは変わらないように思える。
「でもそれはやっぱり、全員が高得点とるために頑張る!ってことになりません?」
「ところがそうは行かないのが、チーム試合の厄介なところ。」
宮古先輩が口を挟む。
「個人のだした点数の平均が反映されるのは個人の『総合得点』からじゃないんだ。さっきの伊織の行動宣言や、超技術による耳穴の中央を常に陣取ったあのテクニック。色んな項目で点数がつくわけだけど、アレの1項目1項目の平均値がだされて、それの合計がチームスコアになる。だから、やるなら全員がある程度実力を揃えないといけない。減点出すと、評点に結構大きくひびくわけだ。超技術系のものは敢えて他のメンバーがやらないことで個人点をそのまま平均点に持ち込むのが一般的だな。」
チーム単位でだれがどんな評価を狙っていくのかまで戦略になるのか。そして基礎技術は全員が高得点を取っていったほうが良いと。
チョコを食べていた友梨奈先輩が宮古先輩の説明に我意を得たりと声を上げる。
「そういうこと!だから、伊織くんがどれくらいできるかは知る必要があるけど、私たち全員が徹底しなきゃいけないのは、伊織くんがすでに見せた基本技能は全部完璧にこなせるようになること!」
「まあ、行動宣言なんかは特にね。中途半端にやって減点されてましたが一番だるい。あらゆるタイミングでしっかり宣言する癖をつけないと。」
「そうですね。無意識に行動宣言1回だけしてて、やったけど減点はきつそうです。」
そうかんがえると結構シビアな部分もあるかもしれない。が、基礎の徹底と言う点ではやはり最初の結論とそうは変わらないだろう。
「でも、詰まるところみんなで頑張るって感じですよね。」
「何をどう頑張るか!が大事なんだよ!漫然と練習するのはあまり効果がないからね!柿人君は結構才能のある感覚派だから、意識して練習に取り組むのはなかなか、イメージしにくいかもだけど、つまづいた時にきっと役に立つから!」
なんか急にそれっぽいことを言い出したが、しかし言っていることは間違っていないように思える。
「じゃあま、話もまとまったことだし、帰るか。」
「賛成!私もうお腹ぺこぺこだよー!!」
「いまお菓子食ってたじゃん」
台無しだよ。2人は終わり終わりーと言わんばかりに部室から出ていく。
「ちょっと!?せめて伊織を起こして帰るでしょ!?待ってくださいよ!」
部室の鍵を自分が持っていないことも忘れて帰ろうとする先輩を引き止めるために、走り出した。
「タイムは4分ジャストです。はなき先生、測定器は?」
「バッチリよー。測定器の観測時間は98秒。ギリギリだけど、4割、96秒をこえたね。けど後半に快感が集中しているから、最後の耳かき、もっと時間をかければ伊織くんを負かすこともできたんじゃない?」
「たまたまです。約束ですから、伊織のことはお任せします。でもできれば、無理はさせないであげてください。」
伊織の頭を優しく膝から下ろし、ソファに寝かせる。伊織は抵抗する気配もない。本当に寝ているのだろうか。
会長は素直ではないが、伊織の耳かき愛を認めたから、勝ちを譲ったんだろう。部の存続という当面の問題は一旦解決したと言える。
「予算確保もしておきますから、伊織も耳かきを楽しめるようにお願いします
。」
そう言って会長は部室を出ていく。伊織はねむったままだ。
「じゃ、私も要件はすんだから帰るねー。友梨奈ちゃん、書類の確認はしっかりしなきゃダメよー。」
はなき先生も出ていってしまった。顧問とは。いや、友梨奈先輩はさすがに何か言わなきゃダメでは?
「ふー終わった終わった。じゃあ、市大会について考えないとね。」
そうだった。友梨奈先輩は前後の出来事の余韻とかは全く気にしないタイプだった。
「伊織は?起こす?部員になるなら一緒に聞いたほうが良くない?」
「疲れてるだろうし、まだいいんじゃないかな?」
宮古先輩の確認に応えながら、鞄から新しいお菓子を取り出した。
「市大会について考えるって言っても、耳かきって個人競技ですよね?当日まで自主練繰り返す以外になんかあるんですか?」
そう。耳かきは個人競技。2人で1人の耳かきをすることもなければ、1人で2人の耳かきをすることもない。
「そっか。耳かきの団体戦についてはまだ話てなかったよね。確かに試合そのものは個人戦だよ。1対1の個人戦。けど、個人がだした点数と時間を平均した数値でチームスコアが判定されるの。だから個人試合としてのスコアでなら勝っていても、チームスコアで負けるって場合があるわけ。」
成程。チームで負ける可能性があるのはわかった。しかし、根本的にやることは変わらないように思える。
「でもそれはやっぱり、全員が高得点とるために頑張る!ってことになりません?」
「ところがそうは行かないのが、チーム試合の厄介なところ。」
宮古先輩が口を挟む。
「個人のだした点数の平均が反映されるのは個人の『総合得点』からじゃないんだ。さっきの伊織の行動宣言や、超技術による耳穴の中央を常に陣取ったあのテクニック。色んな項目で点数がつくわけだけど、アレの1項目1項目の平均値がだされて、それの合計がチームスコアになる。だから、やるなら全員がある程度実力を揃えないといけない。減点出すと、評点に結構大きくひびくわけだ。超技術系のものは敢えて他のメンバーがやらないことで個人点をそのまま平均点に持ち込むのが一般的だな。」
チーム単位でだれがどんな評価を狙っていくのかまで戦略になるのか。そして基礎技術は全員が高得点を取っていったほうが良いと。
チョコを食べていた友梨奈先輩が宮古先輩の説明に我意を得たりと声を上げる。
「そういうこと!だから、伊織くんがどれくらいできるかは知る必要があるけど、私たち全員が徹底しなきゃいけないのは、伊織くんがすでに見せた基本技能は全部完璧にこなせるようになること!」
「まあ、行動宣言なんかは特にね。中途半端にやって減点されてましたが一番だるい。あらゆるタイミングでしっかり宣言する癖をつけないと。」
「そうですね。無意識に行動宣言1回だけしてて、やったけど減点はきつそうです。」
そうかんがえると結構シビアな部分もあるかもしれない。が、基礎の徹底と言う点ではやはり最初の結論とそうは変わらないだろう。
「でも、詰まるところみんなで頑張るって感じですよね。」
「何をどう頑張るか!が大事なんだよ!漫然と練習するのはあまり効果がないからね!柿人君は結構才能のある感覚派だから、意識して練習に取り組むのはなかなか、イメージしにくいかもだけど、つまづいた時にきっと役に立つから!」
なんか急にそれっぽいことを言い出したが、しかし言っていることは間違っていないように思える。
「じゃあま、話もまとまったことだし、帰るか。」
「賛成!私もうお腹ぺこぺこだよー!!」
「いまお菓子食ってたじゃん」
台無しだよ。2人は終わり終わりーと言わんばかりに部室から出ていく。
「ちょっと!?せめて伊織を起こして帰るでしょ!?待ってくださいよ!」
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