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13話
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「なあ、耳かき部興味ない?」
「わりぃけど、もうASMR部だから俺・・・耳塚もあの先輩に無理に付き合うことはないと思うぜ?じゃあな。」
またダメだ。クラスメイトはこれでもう全員帰ってしまった。友梨奈先輩は既にいろんな意味で学内で有名なようで、耳かき部の勧誘は難航している。
たった1人でいいのだが、その1人を集めるのは現状の耳かき部にとっては暗闇の中ライトなしで耳かきをするに等しい。
『まあ、私に任せといて!!すぐにたくさん集めちゃうから!頼れる美人先輩がいる部活なんて魅力しかないよね!』
と、自信満々に友梨奈先輩は言っていたが、ぶっちゃけ何も期待できないだろう。というかあの人がしっかりしてる人なら今自分は、部員勧誘をしていない。
『私も一応知り合いに声かけては見るけど当てにしないでよ。多分今の耳かき部のいちばんのセールスポイントは男子がいることだから、あんたが一番頑張んないとだめだよ。後輩。』
宮古先輩もそんなふうに言っていた。実際あの人はなんか友達少なそう
だし、自分が頑張らないといけないんだろうけど。
「はぁ。僕だって別にそんなに友達いるわけじゃないんだけどなー。」
校門前についたところで、後ろから声がかかる。
「どうしたんだい?」
「え?」
ショートの黒髪、中性的な顔つきに嫌味のない笑顔。陳腐な言葉で表現するならイケメンという奴だ。嫌味がないのが逆に少しムカつくのは自分が卑屈だからだろうか。
「いや、困ってそうだったからさ。僕は伊織。呼び捨てでいいよ。君は?」
「耳塚柿人。」
「柿人くんね。で、どうしたのさ?」
初対面なのになんか近い。この男はパーソナルスペースの概念が薄いらしい。
「いやね。耳かき部やってるんだけど、いま部員足りなくて廃部の危機でさ。あと1人いれば、存続できるんだけども。中々部員になってくれる人いなくて。」
「へー。ここの耳かき部って男も入れるんだ。」
チャンスだ。興味を示しているなら、やれば部員になってくれるかもしれない。
「ああ、うん。どう?興味あるなら見学だけでもして行かない?」
「いいね。じゃあすぐ行こう。」
やる気だ。この男、初めて僕が耳かき部に関わった時よりも積極的だ。伊織をつれて、部室に急ぐ。
「耳かきをやる男性選手は増えてきたけどさ。なんで君は耳かきをはじめたの?」
部室への道すがら、伊織は3歳児がおもちゃなあに?と聞いてくるような調子で聞いてくる。
「友梨奈先輩・・・部長の勧誘が入学初日にあって。あんまり熱烈だったもんで勢いに押されて初めたら思ったより楽しかったんだ。」
「男相手でもしっかり誘うなんて結構先進的な先輩なんだね。部長さんは。」
「いや、なんも考えてないだけだと思う。」
あの人が先進的なんてなったら、辞書の『先進的』の意味に『アホであること』を書き加えなければならない。
「フフっ。理由はなんであれ、男も遠慮なく耳かきがたのしめるならそれはありがたいことだよ。」
「伊織も耳かきやってるの?」
「やりたかったんだけど、中学の耳かき部は男子はプレイヤーになれなくてさ。もっぱら応援か練習用の耳係だよ。退屈だったな。」
練習用の耳係なんてのもあるのか。まあ、確かに耳かきされるのは気持ちいいがされるだけなのは詰まらないかもしれない。
「まあ、うちの部はそう言うのないから、やる気があるなら期待してくれていいと思う。」
「それは、楽しみだな。」
そして、部室の前につき、ドアを開く。
「先輩達!見学の人がきましたよ!それも耳かき部経験者です!」
「でふぁした!!」
「んぐっ。やったー!」
ポテチ食ってる・・・コーラ飲んでる・・・
「あんたら勧誘は!?僕は1人連れてきたのにおやつ食ってたの!?」
「だってー。よく考えたら私去年にもう同学年の子は全員声かけたし・・・」
「まあまあ、怒るな後輩。お前を信じて私達は歓迎のために英気を養っていたんだ。」
こ、こいつら・・・
「こ、個性的な先輩だね・・・」
「いや、こういうのは素直にバカって言っていいと思うんだ。」
「んで、見学?入部希望じゃなくて?」
「先輩達があまりにも個性的な先輩なんで、ちゃんと関われるか試した方がいいでしょ。いきなり入部してやっぱキツいってなるよりも。」
「キツいってなに!?こんなに頼りになる部長を捕まえて!」
「友梨奈と私をひとまとめにするの酷くね?」
ブーイングが酷いが未来の部のため、そして部活の新しい仲間(予定)のため、ここで引いてはいけない。
「彼、プレイヤー志望だから、まずは先輩どっちでもいいから、さっさと準備して受けやってください。」
「スルー!?この部長を!?頼りになる美少女の私を!?柿人くんいつからそんな不良になっちゃったの!?」
天丼のような反応だが、この人は素だ。相手にしてたら話が進まない。友梨奈先輩の口に手元のクッションを当てる。
「モガッ!!」
ボケ倒しの部長がこの調子であれば、友梨奈先輩よりは常識のある宮古先輩は対応してくれるはず。
「あー。わかった。じゃあ私がやるわ。えーっと名前は?」
「伊織です。呼び捨てでいいですよ。」
「んじゃ伊織。プレイヤーのルールは?」
「一通りは把握してますが、実際にやるのは初めてですから。」
「OK。じゃあ自由にやってみていいぞ。」
なんかスムーズ。というかイケメン君なのに、反応が全くないのすごいな。この人たちマジで耳かき以外興味ないのか・・・
「はい!よろしくお願いします!」
伊織も女子相手にそういうのないらしい。耳かきの世界の羞恥心についてはまだまだ理解が及びそうにない。
「わりぃけど、もうASMR部だから俺・・・耳塚もあの先輩に無理に付き合うことはないと思うぜ?じゃあな。」
またダメだ。クラスメイトはこれでもう全員帰ってしまった。友梨奈先輩は既にいろんな意味で学内で有名なようで、耳かき部の勧誘は難航している。
たった1人でいいのだが、その1人を集めるのは現状の耳かき部にとっては暗闇の中ライトなしで耳かきをするに等しい。
『まあ、私に任せといて!!すぐにたくさん集めちゃうから!頼れる美人先輩がいる部活なんて魅力しかないよね!』
と、自信満々に友梨奈先輩は言っていたが、ぶっちゃけ何も期待できないだろう。というかあの人がしっかりしてる人なら今自分は、部員勧誘をしていない。
『私も一応知り合いに声かけては見るけど当てにしないでよ。多分今の耳かき部のいちばんのセールスポイントは男子がいることだから、あんたが一番頑張んないとだめだよ。後輩。』
宮古先輩もそんなふうに言っていた。実際あの人はなんか友達少なそう
だし、自分が頑張らないといけないんだろうけど。
「はぁ。僕だって別にそんなに友達いるわけじゃないんだけどなー。」
校門前についたところで、後ろから声がかかる。
「どうしたんだい?」
「え?」
ショートの黒髪、中性的な顔つきに嫌味のない笑顔。陳腐な言葉で表現するならイケメンという奴だ。嫌味がないのが逆に少しムカつくのは自分が卑屈だからだろうか。
「いや、困ってそうだったからさ。僕は伊織。呼び捨てでいいよ。君は?」
「耳塚柿人。」
「柿人くんね。で、どうしたのさ?」
初対面なのになんか近い。この男はパーソナルスペースの概念が薄いらしい。
「いやね。耳かき部やってるんだけど、いま部員足りなくて廃部の危機でさ。あと1人いれば、存続できるんだけども。中々部員になってくれる人いなくて。」
「へー。ここの耳かき部って男も入れるんだ。」
チャンスだ。興味を示しているなら、やれば部員になってくれるかもしれない。
「ああ、うん。どう?興味あるなら見学だけでもして行かない?」
「いいね。じゃあすぐ行こう。」
やる気だ。この男、初めて僕が耳かき部に関わった時よりも積極的だ。伊織をつれて、部室に急ぐ。
「耳かきをやる男性選手は増えてきたけどさ。なんで君は耳かきをはじめたの?」
部室への道すがら、伊織は3歳児がおもちゃなあに?と聞いてくるような調子で聞いてくる。
「友梨奈先輩・・・部長の勧誘が入学初日にあって。あんまり熱烈だったもんで勢いに押されて初めたら思ったより楽しかったんだ。」
「男相手でもしっかり誘うなんて結構先進的な先輩なんだね。部長さんは。」
「いや、なんも考えてないだけだと思う。」
あの人が先進的なんてなったら、辞書の『先進的』の意味に『アホであること』を書き加えなければならない。
「フフっ。理由はなんであれ、男も遠慮なく耳かきがたのしめるならそれはありがたいことだよ。」
「伊織も耳かきやってるの?」
「やりたかったんだけど、中学の耳かき部は男子はプレイヤーになれなくてさ。もっぱら応援か練習用の耳係だよ。退屈だったな。」
練習用の耳係なんてのもあるのか。まあ、確かに耳かきされるのは気持ちいいがされるだけなのは詰まらないかもしれない。
「まあ、うちの部はそう言うのないから、やる気があるなら期待してくれていいと思う。」
「それは、楽しみだな。」
そして、部室の前につき、ドアを開く。
「先輩達!見学の人がきましたよ!それも耳かき部経験者です!」
「でふぁした!!」
「んぐっ。やったー!」
ポテチ食ってる・・・コーラ飲んでる・・・
「あんたら勧誘は!?僕は1人連れてきたのにおやつ食ってたの!?」
「だってー。よく考えたら私去年にもう同学年の子は全員声かけたし・・・」
「まあまあ、怒るな後輩。お前を信じて私達は歓迎のために英気を養っていたんだ。」
こ、こいつら・・・
「こ、個性的な先輩だね・・・」
「いや、こういうのは素直にバカって言っていいと思うんだ。」
「んで、見学?入部希望じゃなくて?」
「先輩達があまりにも個性的な先輩なんで、ちゃんと関われるか試した方がいいでしょ。いきなり入部してやっぱキツいってなるよりも。」
「キツいってなに!?こんなに頼りになる部長を捕まえて!」
「友梨奈と私をひとまとめにするの酷くね?」
ブーイングが酷いが未来の部のため、そして部活の新しい仲間(予定)のため、ここで引いてはいけない。
「彼、プレイヤー志望だから、まずは先輩どっちでもいいから、さっさと準備して受けやってください。」
「スルー!?この部長を!?頼りになる美少女の私を!?柿人くんいつからそんな不良になっちゃったの!?」
天丼のような反応だが、この人は素だ。相手にしてたら話が進まない。友梨奈先輩の口に手元のクッションを当てる。
「モガッ!!」
ボケ倒しの部長がこの調子であれば、友梨奈先輩よりは常識のある宮古先輩は対応してくれるはず。
「あー。わかった。じゃあ私がやるわ。えーっと名前は?」
「伊織です。呼び捨てでいいですよ。」
「んじゃ伊織。プレイヤーのルールは?」
「一通りは把握してますが、実際にやるのは初めてですから。」
「OK。じゃあ自由にやってみていいぞ。」
なんかスムーズ。というかイケメン君なのに、反応が全くないのすごいな。この人たちマジで耳かき以外興味ないのか・・・
「はい!よろしくお願いします!」
伊織も女子相手にそういうのないらしい。耳かきの世界の羞恥心についてはまだまだ理解が及びそうにない。
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