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「んじゃ、準備はいいな。さ、来いよ。」
宮古先輩に促され、マスク・ザ・バニーにされた耳とは反対を上にして、頭を膝に乗せる。すると、今までの耳かきの時と見えるものが違う。顔を膝に預けると目の前には布地が広がる・・・布地?
「お前、マスク・ザ・バニーの時も思ったけど、勝つためなら何でもするのな
。」
「・・・わざとじゃないんです。宮古先輩。まじです。信じてください。なんなら姿勢変えたいです。」
「膝に頭を乗せたら向き替えは禁止だ。後輩。ルールブックはちゃんと読め。」
お腹だ。宮古先輩のお腹が目の前にある。私服に隠れているが目の前に異性の体があるというのはリラックスにはほど遠い。成程。これが勝つためなら何でもすると言うことか。
いや、これ、そう言うことじゃなくない?
「まあ、ボディサイドだろうと、私の高得点は変わらない。とくと味わえ。ステンレス耳かきの感触を!!」
「おお!みゃーちゃんが燃えている!!」
宮古先輩、そんなキャラだっけ?そんなことを思考を遮るように耳が少し強めの力で引っ張られる。
「こっちの耳はまだお披露目してなかったから、結構溜まってるんじゃないか?ほれほれ」
耳の穴が観察される。恥ずかしいは恥ずかしいが、耳の穴を見られることは
慣れてきた。この程度では何も動じることはない。ないが、
「こっちもでかいのが溜まってるぞ後輩。すぐに全部取ってやるからな?気持ちよさに悶えるなよ?」
喋るたびに若干動く目の前の服のせいで非常に不味い。やっぱりスポーツとはいえ、これは・・・
「いや、でもこれリラックスは無理ですよ先輩。」
「うわぁ!?急に喋るな!!息がお腹に当たるだろ!!」
「いだっ!!」
「柿人君、まさか妨害まで使いこなすなんて!すごいよ!自分の耳が怪我するリスクまで取って相手の技術点を下げに行くなんて!!」
ない。全然してない。普通に痛かった。え、なに?これは技術扱いなの?
「いや、全然考えてなかったです。普通に痛いですけど。」
「舐めるなよ。速さですぐに巻き返してやる!」
宮古先輩の耳かきは、かなりの薄さで、猫の体のようにしなやかに垢と壁の間に差し込まれる。心地良いひんやりとした感触が、目の前の光景から意識を遠ざける。竹耳かきならここから、穴を広げる必要がある。耳垢が固まっていると、硬さに負けて上手く掻き出せないことがある。だからこそ、本来は少しずつ動かすことで、隙間を広げる作業を必要とする。だが。
「こ、これは!?」
「ステンレス耳かきの1番の強みがでる耳垢ね。これは確かに公式戦なら
減点分もひっくり返すことができる速さになるかも。」
「でるか!?みゃーちゃん必殺の『城崩し!!』」
なにそれ。怖いんだけど。
「みゃーちゃん言うな!!」
友梨奈先輩に突っ込みながらもステンレス耳かきが力強く、ともすれば強引な動きで耳垢を引っ張る。
「ステンレスは、素材が硬い分しならない、融通が利きにくい素材。けれど、その硬さのお陰で、硬くなった耳垢を取る時にしなって取りにくくなることがない!そして、宮古ちゃんはその融通の効かなさを薄いモデルにすることで補っている!」
宇佐美さんの解説はまるでプロのように詳細だ。なるほど、だからこんな動きができる。しかしこれは力加減を一歩間違えれば、相手の壁に痛みを与えかねない危険なやり方なはずだ。なら、また、声をかければ減点させることができる・・・!
「気づいたな。後輩。でもそれをする前に大物は終わる!」
宣言と共に耳垢が壁から離れていく。体の一部だったものが剥がれて、体の異物となった感覚。耳垢の熱と、それを冷ますようなステンレスの冷感の心地よさで、妨害をする気を削がれてしまった。
「んぁ」
垢が耳から取り出され、ティッシュの上へ。そして、大物の周りにある細かく瘡蓋のように張り付いたものも触れるか触れないかの位置から鮮やかに取り除いていく。
「はい終わり。友梨奈。タイムは?」
「3分50秒!すごいよみゃーちゃん!妨害がなければ3分30切れたんじゃない!?」
「まあ、こんなもんでしょ。後輩も頑張ったって。私の実力も見せれたし。満足かな。」
実際満足なんだろう。宮古先輩は友梨奈先輩の褒め言葉で少し顔が赤い。これ、友梨奈先輩は気づかないんだろうか。
なんにせよ、宮古先輩を上げておくべきだろう。僕以外女子2人の部活、それも運動系(?)だ。関係性が崩れれば、僕はサッカー部という名の帰宅部員となっていた時以上に苦しい思いをするのは必至。
「いや、実際すごかったです。宮古先輩。最後の方はお腹の方に顔向いてるの忘れそうなくらいでした。」
「さっさと忘れろ!」
クッションが顔面に叩きつけられる。スポーツと、恥じらいの境界線はまだ分かりそうにない。
「友梨奈ちゃんとは違うタイプの生粋の耳かき人間ねぇ。」
「えぇ!?私はもっとデリカシーありますよ!!柿人君よりは気遣いできます!」
宮古先輩はこんな失礼な人のどこを気に入ったのだろうか。さっぱりわからなかった。
宮古先輩に促され、マスク・ザ・バニーにされた耳とは反対を上にして、頭を膝に乗せる。すると、今までの耳かきの時と見えるものが違う。顔を膝に預けると目の前には布地が広がる・・・布地?
「お前、マスク・ザ・バニーの時も思ったけど、勝つためなら何でもするのな
。」
「・・・わざとじゃないんです。宮古先輩。まじです。信じてください。なんなら姿勢変えたいです。」
「膝に頭を乗せたら向き替えは禁止だ。後輩。ルールブックはちゃんと読め。」
お腹だ。宮古先輩のお腹が目の前にある。私服に隠れているが目の前に異性の体があるというのはリラックスにはほど遠い。成程。これが勝つためなら何でもすると言うことか。
いや、これ、そう言うことじゃなくない?
「まあ、ボディサイドだろうと、私の高得点は変わらない。とくと味わえ。ステンレス耳かきの感触を!!」
「おお!みゃーちゃんが燃えている!!」
宮古先輩、そんなキャラだっけ?そんなことを思考を遮るように耳が少し強めの力で引っ張られる。
「こっちの耳はまだお披露目してなかったから、結構溜まってるんじゃないか?ほれほれ」
耳の穴が観察される。恥ずかしいは恥ずかしいが、耳の穴を見られることは
慣れてきた。この程度では何も動じることはない。ないが、
「こっちもでかいのが溜まってるぞ後輩。すぐに全部取ってやるからな?気持ちよさに悶えるなよ?」
喋るたびに若干動く目の前の服のせいで非常に不味い。やっぱりスポーツとはいえ、これは・・・
「いや、でもこれリラックスは無理ですよ先輩。」
「うわぁ!?急に喋るな!!息がお腹に当たるだろ!!」
「いだっ!!」
「柿人君、まさか妨害まで使いこなすなんて!すごいよ!自分の耳が怪我するリスクまで取って相手の技術点を下げに行くなんて!!」
ない。全然してない。普通に痛かった。え、なに?これは技術扱いなの?
「いや、全然考えてなかったです。普通に痛いですけど。」
「舐めるなよ。速さですぐに巻き返してやる!」
宮古先輩の耳かきは、かなりの薄さで、猫の体のようにしなやかに垢と壁の間に差し込まれる。心地良いひんやりとした感触が、目の前の光景から意識を遠ざける。竹耳かきならここから、穴を広げる必要がある。耳垢が固まっていると、硬さに負けて上手く掻き出せないことがある。だからこそ、本来は少しずつ動かすことで、隙間を広げる作業を必要とする。だが。
「こ、これは!?」
「ステンレス耳かきの1番の強みがでる耳垢ね。これは確かに公式戦なら
減点分もひっくり返すことができる速さになるかも。」
「でるか!?みゃーちゃん必殺の『城崩し!!』」
なにそれ。怖いんだけど。
「みゃーちゃん言うな!!」
友梨奈先輩に突っ込みながらもステンレス耳かきが力強く、ともすれば強引な動きで耳垢を引っ張る。
「ステンレスは、素材が硬い分しならない、融通が利きにくい素材。けれど、その硬さのお陰で、硬くなった耳垢を取る時にしなって取りにくくなることがない!そして、宮古ちゃんはその融通の効かなさを薄いモデルにすることで補っている!」
宇佐美さんの解説はまるでプロのように詳細だ。なるほど、だからこんな動きができる。しかしこれは力加減を一歩間違えれば、相手の壁に痛みを与えかねない危険なやり方なはずだ。なら、また、声をかければ減点させることができる・・・!
「気づいたな。後輩。でもそれをする前に大物は終わる!」
宣言と共に耳垢が壁から離れていく。体の一部だったものが剥がれて、体の異物となった感覚。耳垢の熱と、それを冷ますようなステンレスの冷感の心地よさで、妨害をする気を削がれてしまった。
「んぁ」
垢が耳から取り出され、ティッシュの上へ。そして、大物の周りにある細かく瘡蓋のように張り付いたものも触れるか触れないかの位置から鮮やかに取り除いていく。
「はい終わり。友梨奈。タイムは?」
「3分50秒!すごいよみゃーちゃん!妨害がなければ3分30切れたんじゃない!?」
「まあ、こんなもんでしょ。後輩も頑張ったって。私の実力も見せれたし。満足かな。」
実際満足なんだろう。宮古先輩は友梨奈先輩の褒め言葉で少し顔が赤い。これ、友梨奈先輩は気づかないんだろうか。
なんにせよ、宮古先輩を上げておくべきだろう。僕以外女子2人の部活、それも運動系(?)だ。関係性が崩れれば、僕はサッカー部という名の帰宅部員となっていた時以上に苦しい思いをするのは必至。
「いや、実際すごかったです。宮古先輩。最後の方はお腹の方に顔向いてるの忘れそうなくらいでした。」
「さっさと忘れろ!」
クッションが顔面に叩きつけられる。スポーツと、恥じらいの境界線はまだ分かりそうにない。
「友梨奈ちゃんとは違うタイプの生粋の耳かき人間ねぇ。」
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