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38話

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 追加されたその日はどんな物かとエレベーターの有る場所に押し掛ける探索者が数多く、協会も各ダンジョンにスタッフを配置したりといつもよりも大賑わいだった。
 当初、心配されていた無謀な階層への移動は不可能だった事は協会にとっても探索者にとっても救いだっただろう。
 結局、パーティー毎での利用では無く、利用者個人で移動する階を決める仕組みで尚且つ決められた階層に自分が到達していなければ移動できないと分かると純粋な利用者以外は立ち寄らなくなった。
 ただ、それとは別の問題も出てきた事で協会はエレベーターと合わせて慌ただしく動くはめになったらしい。

「まぁ、予想出来ていたけど、やっぱり最初は混雑してたな」

「そうですね。今はだいぶ落ち着いたらしいですし、そこまで利用するのに時間が掛かる事も無さそうですね」

「本当に良かったわ」

 確かに最初は混みあったエレベーター付近だったが、情報と協会員のお陰か今ではそんなに人で溢れているという事は無かった。
 ありがたい事に協会は実際に使用した探索者たちからの聞き込みした内容も公開してくれているから恐る恐る使う事にはならない。

「それで俺たちはいつ五十階越えするんですか?」

「それなんだがな……」

 興味津々といった感じで聞いてくる幸太は早くエレベーターを使ってみたいっていう感じなんだろう。
 だけど、残念な事に少ししたら新卒社員が入ってくる事も有って現状ではあまり無理をしないようにと指示が有った。驚いた事に探索部門にも新入社員が入る予定になっているらしい。

「えっ、本当ですか?」

「あぁ、とりあえずは新入社員が有る程度使えるようになるまでは少しずつ潜る深さを変える事になると思う」

「それで何人ぐらいとかは聞いているのかしら?」

「全体で六人とかいう話で探索部門は一人だった筈だ」

 初めて探索者部門も採用するとはいったものの、結局は例年通りの人数でその中に探索者として活動した事が有る人はいたが、探索者部門を希望した人は一人しかいなかったらしい。
 分からなくは無い。正直、探索者としてだったら企業に所属しないって事も選べるし、ウチよりも前から探索者を使ってる所――園田さんの所とかを選ぶだろう。

「まぁ、探索者部門に一人入っただけでも救いなんじゃないか?」

「それは、そうだけど……」

 全く一人も入らないって事にならなかっただけ良かったと思うべきかな。
 まぁ、多すぎても困るところだったし、一人ってのは個人的に良い人数だと思う。

「それに手探りに近い状態で探索者部門が始動して人数も俺たちのみなんだから多い人数が来ても無理だって」

「そうですよ、幸さん。少しずつ増やしていかないと命を掛けてダンジョンに潜ってるんですから」

 珍しく幸太がそんな事を幸に言うと幸も聞き入れる。

「で、二人に聞きたいのはこの一人を連れて潜るのは日野江にするか他にするかって事だな」

「他の所に行くのは手だと思うわよ。日野江だと人が多過ぎるから」

「俺はどっちでも良いと思いますけど、モンスターと戦ったりするのを見るなら他のダンジョンの方が良いかもしれないですね」

 二人の意見は共に他のダンジョンの方が良いというものだった。
 そんな二人の意見にダンジョンリストを取り出して新人が入ったら行くダンジョンを決めようと二人に提案する。

「じゃあ、二人に調べてもらったリストから良さそうなダンジョンを決めよう」

「私としては金谷かなやとか大賀志おおかしが良いと思うんだけど」

「えっ、幸さんはその二つですか。俺としては鴨居かもい清八城しんやじょうが良いと思ったんですけど」

 幸の言った二つは日野江からも近いダンジョン。そして、幸太が言った二つは少し離れたところに有るダンジョンだった。
 利用者を見れば幸の言った金谷と大賀志は日野江ほど多くないものの、利便性も有って比較的探索になれた探索者が潜るところとしてちょうど良いダンジョンとして人気のダンジョンで、幸太の方はどっちも利用者は少なめで慣れれば稼げなくはない程度の所と言えるダンジョンと言えるだろう。

「金谷に大賀志、鴨居と清八城か……」

「私は幸太の言った二つでも良いと思うわ」

「なら、この四つの中から決めるとしよう」

 そうして話し合った結果、この四つを順番に回った後は日野江に潜るという事が決まった。
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