上 下
25 / 42

24話

しおりを挟む
 振り下ろされた一撃はそのまま防がれる事も無くゴブリンジェネラルを切り裂いた。
 そして、その様子に動きを止めたゴブリンを幸太や俺も倒していく。

「これで終わったな」

「はい、良いのが出ると嬉しいんですが」

 全部の敵を倒し終えたのを確認した俺はそのまま現れた討伐報酬の入った宝箱を開ける。
 中身は色様々な宝石が五個。当たりかハズレかと言ったら当たりと思っても良さそうな内容だ。

「今回は宝石が五個だった」

「悪くは無いないと思うわよ?」

「そうですね。鑑定結果次第ですが、魔宝石だったら売るのを止めて自分たちで使っても良いんですから」

「じゃあ、鑑定次第では売らないってので良いか」

 頷く二人に宝石をアイテムボックスに入れる。

「でも、今日も本当にここまですんなりと来れましたね」

「まぁ、あの時が異常だったって事だな」

「そうね、じゃなきゃ鬼がボス部屋にいないわよ」

 幸太が嬉しそうにそんな事を言ったが儲けを気にするなら喜んじゃいけないところだ。
 ただ、今回はボス討伐報酬が宝石だった事を考えると今回はそこまで酷くは言えないけど。

「さて、これで三十一階に着く訳だけど、意外と早い時間でたどり着いたな」

「時間的にもちょうど良いからお昼にしましょう」

「じゃあ、食べ終わってから帰るって感じですか?」

 幸太の言葉に時計を確認しながらこの後の予定を考える。
 時間的には余裕が有るから軽く三十二階の入り口付近までなら少しだけ探索する事は出来るだろう。
 勿論、この三十一階に生えてる木の実とかも売れない事はないからそれも回収していけば最低限の利益は手に入るはずだし。

「そう言えば、進さんって時計を持ち込んでいるようですけど大丈夫なんですか?」

「あぁ、これは昔ながらの巻時計だから問題ないよ。流石に電波時計とかソーラー時計とかはダンジョンの影響を受けるだろうから持ち込む気は無いけど」

「もしかして、結構詳しいの?」

 驚いたような表情をする二人。
 まぁ、幸太の方はダンジョンの摩訶不思議さで時計に異常が発生する事を知ってればするような反応だけど、幸はまるでファッションに興味無い人間に驚いているような意外そうな顔だな。

「ちょっと知り合いに時計修理関係に関わってる人がいるからな」

「へぇー、珍しいわね。このご時世に」

 幸が言いたい事も分かる。
 正直、今時はスマホとか街角の電光掲示板とかに時計機能が付いてるから使わないって人も多いからな。
 ただ、ダンジョンは初期の段階からうまく電子機器が動かないと知られていたけど、電子部品の入ってない巻時計に関しては影響を受ける事無く使えるって事が分かってからは売り上げもかなり上がったらしい。
 そのお陰か知り合いの所に修理で持ち込まれる時計が増えて偶に愚痴聞きがてなに呼び出されて飲みに行く機会が増えたのには困ったけど。

「まぁ、本人はダンジョンのお陰で仕事が増えたって喜んでたよ」

「でしょうね。でも、巻時計ね……」

「面倒じゃないんですか?」

「面倒って……、慣れれば気になるほどでもないよ。それにダンジョンに深く潜れば潜るほど必要になってくるから俺たち以上に潜る探索者からすれば必需品だから嫌でも慣れる」

 まぁ、スマホや電波時計とかに慣れてれば不便に思うかもしれないけど、実際はそこまで不便でもないんだよな。
 結構、勘違いしてる人多いけど、電波時計は基本的には常に電波受信している訳じゃなくて決められたタイミングで電波を受信してズレを直してるだけで修正機能以外は普通の時計と変わらない物ばかりだから。
 他にもソーラー時計とかも勘違いしてる人が多いけど、元を辿ると売買のタイミングで説明不足っていうかミスリードが発生してるから問題なんだって長々と聞かされたんだった……。

「どうかしたの?」

「いや、ちょっとソイツに会った時のこと思い出してな」

 どうやら顔に出てたらしい。
 いや、でもアレは本当に大変だった……。そんな愚痴が続くかと思ってれば、巻時計に関しての愚痴も出るし。
 確かにダンジョンとかの激しい運動するのには巻時計が不向きってのは聞いてたから分かるけど、修理依頼者に対する苛つきを俺で発散するのも困るんだよ。

「はぁー、まず飯にしよう」

「なんか、すみません」

 どうやら俺の様子に自分の言葉が原因だって気が付いた幸太が謝ってくる。
 そんな幸太に気にしてない事をアピールしながら、気分を変えるために俺はいつものように食材や道具を出して料理を始めるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

ぼっちの日本迷宮生活

勤勉書造
ファンタジー
天変地異によりダンジョンが出現。家が倒壊して強制的脱ひっきーを果たした佐々木和真は、ぼっちという最悪のスキルを目覚めさせパーティが組めないことが判明。かくして、ぼっちの和真は一人きりのダンジョン冒険を始める冒険者となった。モンスターを討伐したり宝箱を探したり、親孝行も頑張ろう。しかし、ダンジョンの主であるダンジョンマスターが立ち塞がる。 ※小説家になろう様のサイトでも掲載中。読んでくれて有難うございました。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

最強魔法師の壁内生活

雅鳳飛恋
ファンタジー
 その日を境に、人類は滅亡の危機に瀕した。  数多の国がそれぞれの文化を持ち生活を送っていたが、魔興歴四七〇年に突如として世界中に魔物が大量に溢れ、人々は魔法や武器を用いて奮戦するも、対応しきれずに生活圏を追われることとなった。  そんな中、ある国が王都を囲っていた壁を利用し、避難して来た自国の民や他国の民と国籍や人種を問わず等しく受け入れ、共に力を合わせて壁内に立て籠ることで安定した生活圏を確保することに成功した。  魔法師と非魔法師が共存して少しずつ生活圏を広げ、円形に四重の壁を築き、壁内で安定した暮らしを送れるに至った魔興歴一二五五年現在、ウェスペルシュタイン国で生活する一人の少年が、国内に十二校設置されている魔法技能師――魔法師の正式名称――の養成を目的に設立された国立魔法教育高等学校の内の一校であるランチェスター学園に入学する。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...