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6話
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何とか午前中で報告書を書き上げた俺はそのまま部長へと提出した。
時間もちょうど良かったのでそのまま昼休憩へと入った俺は昼飯を食べながら部長の言った付き合ってほしいところというのがどこなのかを勝手に考えていた。
「おっ、いたいた。羽生、相席良いか?」
「ん、んぐ、飛騨先輩? 良いですよ、というかその前に座ってるじゃないですか」
いつものように答えるよりも早く目の前に座る飛騨先輩。
あー、今日のとんかつ定食も美味しいな……。
「おい、無視するな、羽生」
「何ですか、飛騨先輩。俺は美味しいとんかつを味わうのに忙しいんです」
「そうかそうか、なら一個貰うな」
「あっ、勝手に持ってかないで下さい!!」
飛騨先輩からとんかつを守りながら食事を続ける。……どうせ声を掛けてきたのは報告書関係かテスト品関係なんだろうし。
「拗ねんなって。でだ、報告書は見せてもらったんだが、お湯を沸かすだけではダンジョンでは使いにくいか?」
「そうですね。正直、あの量をあの早さでって考えると良い物だとは思うんですが、お湯を使う物を持ち込まないといけないというのはやっぱり使いにくく感じますね」
「そうか、わかった」
やっぱり飛騨先輩としても報告書を読んだだけでは納得出来なかったんだな。まぁ、書く内容を考えていた段階でこうなりそうな気はしていたから良いけど、実際に話したら意外とすんなりと納得してくれるとは……。
「それで次に持ってくのを絞り込めたか?」
「少しだけですね。この後、出掛けるまでの間にもうちょっと目を通しておきたい所です」
そう言って俺は最後の一口を味わう。
飛騨先輩もかなりのハイペースで食べていたようで既に残り少し。これは結構長い事絡まれそうだよ……。
「因みに次は飛騨先輩の物を持っていく予定はないので」
「ふーん……、ってなんでだよ!?」
「いや、流石に他にも開発者がいて作品も有るならそっちも確かめていかないと……」
なんとか土田先輩に頼まれた事を話さないように取り繕いながら話すが、何かボロが出そうな気がすると思って席を立つ。
何やら後ろから慌ただしく動いているような音が聞こえるけど無視だ無視。
そして、俺は急いで自分の席へと戻った。
席に戻った俺は部長がまだ昼休憩から戻って無い事を確認すると午前中に水野先輩たちから貰ったテスト品候補の書類へと目を通し始めた。
かなりの量有るからこれは良いかなと思った物を枚数構わずどんどんと選んでく。ただ、それだけではまだまだ量が有る。
もう一度、目を通していくと何枚かは似たような物だった為に取り除いてと何かしらの条件を付けて枚数を減らそうとしているとちょうど部長が戻ってきた。
「あぁ、待たせたかな? 羽生君」
「いえ、大丈夫です」
「じゃあ、行こうか」
そう言って荷物を手に歩き出した部長の後に続く為に簡単に書類をまとめて席を離れた。
部長と一緒に訪れた先は日野江総合病院だった。
確か、この病院ってダンジョンから一番近いとこでダンジョンからの急患も優先的に受け入れるとこだったはず。そんな事を考えながらするすると中へ入っていく部長の後に続く。
俺も気を付けないとここでお世話になる事もあり得るからな……。
「こっちだ、羽生君」
声の方に視線を向けると既に部長はエレベーターに乗っていて、一緒にいたはずの俺が少し離れた場所にいる事に気が付いて声を掛けてくれたようだった。どうやら興味本位で周りを見ていたら部長から少し逸れてしまっていたようで急いでエレベーターに乗る。
「部長、どうしてここに?」
「あぁ、ちょっと上からの指示も有って会わないといけない人たちがいるんだ」
会わないといけない人たち?
でも、病院でエレベーターに乗るって事は病室いる、要するに入院してる患者って事だろ?
俺を連れてそんな人たちに会わないといけない用ってなんだろうと思って部長に聞いてみる。
「その、どんな要件で訪問するんですか?」
ちょうどその瞬間に目的の階に着いたようで部長は俺の質問を濁すように歩き始めてしまい、俺は慌ててその後を追いかける。
どうやら目的の病室は比較的側に有ったようで直ぐに部長は立ち止まり、俺が傍まで来るのを確認してからドアに向き直った。
「失礼します」
ドアをノックして中に入った部長に続いて俺も部屋の中にはいる。
どうやらこの病室は個室だったようでベッドが一つしかなく、そのベッドに一人とその側に椅子に腰かけた人がいた。
どちらも部長の声に振り向いていた為に女性という事が分かったが、ベッドに横たわっている人は勿論、椅子に座っていた女性までもが所々に包帯を巻いているのが痛ましく見えた。
椅子に座っていた女性は俺と部長の姿を見ると立ち上がり、壁に立てかけてあった折り畳み椅子を準備し始める。
「あっ、我々でやりますのでお構いなく」
部長もその姿に焦りながら女性から椅子を奪い取ると俺に一脚渡し、自分の分を邪魔にならない程度に話しやすい位置に広げた。そして、俺も同じように部長の横に椅子を置くと二人して座る。
部長は立っていた女性が椅子に座りなおしたのを見ると俺の方を見て二人を紹介してくれた。
「こちらは西郷幸さんと桐野霧江さん。我が社と契約している探索者パーティーの方だ」
「初めまして、西郷幸です。よろしくお願いします」
「初めまして、こんな姿で申し訳ないですが桐野霧江です」
「あっ、はい。私、羽生進と申します、よろしくお願いします」
俺は慌てながらも名刺を西郷さんとベッドで横になっている桐野さんに差し出す。
名刺を受け取った二人は名刺と俺の顔を交互に見た後に顔を合わせて少し笑う。
「お二人には前回お話しさせていただきましたが、この度、我が社の社員の中から探索者活動をさせる者を選んだという事ですが、この羽生がその社員になります」
部長の言葉に二人の様子を見ながら頭を下げる。
二人からすると今までの仕事を取られると思う可能性が有るから頭を上げるのは怖かったが部長の話も進まないのも問題だと思ってそのまま頭を上げた。
視界に入ってきた二人の様子を見ると特に不満そうな様子も見えないし大丈夫そうだなと勝手に思っていると部長から初めて聞く話が聞こえてきた。
「それで前回の続きですが、お二人―――桐野さんは退院後にですが、我が社の社員として雇用される事が決まりました。また、西郷さんは探索者部門の一員として羽生と一緒にダンジョンに潜って頂き、桐野さんは第二開発部に所属という形で羽生からの要望が有った時に限りダンジョンに潜って頂きます」
「えっ、ちょっ、ちょっと待ってください、部長。私は初耳なんですが?」
「あぁ、そうだった。忘れていたよ、羽生君」
驚きのあまり、部長にそんな事を言うと言ってなかったっけと言わんばかりのとぼけ顔をされる。
二人の様子を気にしながらも部長に聞いてみるとどうやら俺の事も含めて第二開発部の下に付く形で探索者部門の立ち上げが決まったらしく、探索者の雇用の第一歩として契約していた西郷さんたちのパーティーに声を掛けたらしい。
西郷さんたちもパーティーとしては負傷者が多く、機能停止しているとも言える状態だった為、今後の事も考えると我が社に所属する形を選んだそうだ。
それで今回俺が連れてこられたのは今後一緒にダンジョンを潜るメンバーの顔合わせの為だったらしい。
「それならここに来る前に教えてくれても良かったじゃないですか……」
「ごめんごめん、本当に忘れてたよ」
あははと誤魔化すように笑う部長の姿と俺の様子に二人は面白かったのか笑い始めた。
「ふふふ、羽生さんも大変ですね」
「あはは、そうね」
「それで今後なんですが「あっ、待って。羽生さんには悪いんだけど、ライセンスカード見せて貰っても良いかしら?」……」
二人の様子が落ち着いたところで改めて話始めようとした部長の声を遮るように西郷さんが俺の方を見ながら話しかけてくる。
どうやら俺の力量などを確認したいようだ。
チラっと部長の方へ視線を送ると頷いたので俺はライセンスカードを西郷さんに見せる為に取り出した。
「えぇ、大丈夫ですよ。《アンロック》、どうぞ」
通常、ライセンスカードはその持ち主以外には名前と顔写真、協会で格付けしているランク、探索者IDぐらいしか表示されていない。
しかし、持ち主がライセンスカードのロックを外す事でそれ以外の人にも詳しい情報―――レベル、ステータス、血液型が表示されるようになっている。これは管理者から与えられた魔道具から作られているから可能な事で他にもレベルやステータスの変動にも自動で対応している。
ID:00100235
名前:羽生進
血液型:B
レベル:42
力:D
敏捷:E
魔技:D
幸運:E
スキル
なし
特記事項
・異空間収納袋持ち
俺のライセンスカードを受け取った西郷さんはその内容を確認しながら自分のライセンスカード取り出してロックを解除して俺に渡してくれる。
ID:00009891
名前:西郷幸
血液型:A
レベル:73
力:C
敏捷:B
魔技:C
幸運:D
スキル
・肉体強化
・超高度聴覚
・光魔法
特記事項
なし
流石、パーティーを組んで深くまで潜ってるだけ有ってレベルが高いな。
たぶん、このライセンスカードを見る限りだと桐野さんの方も同じぐらいレベルが高いだろうし、一緒にパーティーを組むのをこっちからお願いしたいくらいだ。
「聞いてた以上に羽生さんも経験が有るんですね。これなら私も一緒にパーティーを組まさせていただきたいと思います」
「そうだね。私も見た限りじゃ心配するような事が無さそうだね。と言うか、異空間収納袋持ちなんて羨ましい……」
身体を起こして覗き込むように俺のライセンスカードを見た桐野さんの言葉に西郷さんも同じ風に思ったのか頷いている。そして、互いにライセンスカードを返すと部長を見た。
「じゃあ、お二人とも今回の契約は同意していただけるという事でよろしいでしょうか?」
「「はい、お願いします」」
では……っと部長は鞄から恐らく契約書も入っている二人分のファイルを取り出すと二人に渡した。
「では、また後日取りに伺いますので必要事項の記入等をよろしくお願いします」
「分かりました。それで一緒にダンジョンに行くのは来週からで問題無いでしょうか?」
西郷さんはそう言って俺の方を見てくる。
まぁ、西郷さんの怪我がどれほどの物かを知らない俺からするとその言葉を信じるしかない。
「えぇ、出来れば来週の月曜に会社の方へ来てもらって方針とか決めたい所ですがそれで大丈夫ですか?」
「はい。では、それでお願いします」
部長も渡す物を渡せた事も有ってそろそろ戻る事を二人に話したので俺もそのまま部長と同じように会社に戻る事にした。
--------------------------------------------------------------------------------------
ステータス
ID:00100235
名前:羽生進
血液型:B
レベル:42
力:D
敏捷:E
魔技:D
幸運:E
スキル
なし
特記事項
・異空間収納袋持ち
ID:00009891
名前:西郷幸
血液型:A
レベル:73
力:C
敏捷:B
魔技:C
幸運:D
スキル
・肉体強化
・超高度聴覚
・光魔法
特記事項
なし
時間もちょうど良かったのでそのまま昼休憩へと入った俺は昼飯を食べながら部長の言った付き合ってほしいところというのがどこなのかを勝手に考えていた。
「おっ、いたいた。羽生、相席良いか?」
「ん、んぐ、飛騨先輩? 良いですよ、というかその前に座ってるじゃないですか」
いつものように答えるよりも早く目の前に座る飛騨先輩。
あー、今日のとんかつ定食も美味しいな……。
「おい、無視するな、羽生」
「何ですか、飛騨先輩。俺は美味しいとんかつを味わうのに忙しいんです」
「そうかそうか、なら一個貰うな」
「あっ、勝手に持ってかないで下さい!!」
飛騨先輩からとんかつを守りながら食事を続ける。……どうせ声を掛けてきたのは報告書関係かテスト品関係なんだろうし。
「拗ねんなって。でだ、報告書は見せてもらったんだが、お湯を沸かすだけではダンジョンでは使いにくいか?」
「そうですね。正直、あの量をあの早さでって考えると良い物だとは思うんですが、お湯を使う物を持ち込まないといけないというのはやっぱり使いにくく感じますね」
「そうか、わかった」
やっぱり飛騨先輩としても報告書を読んだだけでは納得出来なかったんだな。まぁ、書く内容を考えていた段階でこうなりそうな気はしていたから良いけど、実際に話したら意外とすんなりと納得してくれるとは……。
「それで次に持ってくのを絞り込めたか?」
「少しだけですね。この後、出掛けるまでの間にもうちょっと目を通しておきたい所です」
そう言って俺は最後の一口を味わう。
飛騨先輩もかなりのハイペースで食べていたようで既に残り少し。これは結構長い事絡まれそうだよ……。
「因みに次は飛騨先輩の物を持っていく予定はないので」
「ふーん……、ってなんでだよ!?」
「いや、流石に他にも開発者がいて作品も有るならそっちも確かめていかないと……」
なんとか土田先輩に頼まれた事を話さないように取り繕いながら話すが、何かボロが出そうな気がすると思って席を立つ。
何やら後ろから慌ただしく動いているような音が聞こえるけど無視だ無視。
そして、俺は急いで自分の席へと戻った。
席に戻った俺は部長がまだ昼休憩から戻って無い事を確認すると午前中に水野先輩たちから貰ったテスト品候補の書類へと目を通し始めた。
かなりの量有るからこれは良いかなと思った物を枚数構わずどんどんと選んでく。ただ、それだけではまだまだ量が有る。
もう一度、目を通していくと何枚かは似たような物だった為に取り除いてと何かしらの条件を付けて枚数を減らそうとしているとちょうど部長が戻ってきた。
「あぁ、待たせたかな? 羽生君」
「いえ、大丈夫です」
「じゃあ、行こうか」
そう言って荷物を手に歩き出した部長の後に続く為に簡単に書類をまとめて席を離れた。
部長と一緒に訪れた先は日野江総合病院だった。
確か、この病院ってダンジョンから一番近いとこでダンジョンからの急患も優先的に受け入れるとこだったはず。そんな事を考えながらするすると中へ入っていく部長の後に続く。
俺も気を付けないとここでお世話になる事もあり得るからな……。
「こっちだ、羽生君」
声の方に視線を向けると既に部長はエレベーターに乗っていて、一緒にいたはずの俺が少し離れた場所にいる事に気が付いて声を掛けてくれたようだった。どうやら興味本位で周りを見ていたら部長から少し逸れてしまっていたようで急いでエレベーターに乗る。
「部長、どうしてここに?」
「あぁ、ちょっと上からの指示も有って会わないといけない人たちがいるんだ」
会わないといけない人たち?
でも、病院でエレベーターに乗るって事は病室いる、要するに入院してる患者って事だろ?
俺を連れてそんな人たちに会わないといけない用ってなんだろうと思って部長に聞いてみる。
「その、どんな要件で訪問するんですか?」
ちょうどその瞬間に目的の階に着いたようで部長は俺の質問を濁すように歩き始めてしまい、俺は慌ててその後を追いかける。
どうやら目的の病室は比較的側に有ったようで直ぐに部長は立ち止まり、俺が傍まで来るのを確認してからドアに向き直った。
「失礼します」
ドアをノックして中に入った部長に続いて俺も部屋の中にはいる。
どうやらこの病室は個室だったようでベッドが一つしかなく、そのベッドに一人とその側に椅子に腰かけた人がいた。
どちらも部長の声に振り向いていた為に女性という事が分かったが、ベッドに横たわっている人は勿論、椅子に座っていた女性までもが所々に包帯を巻いているのが痛ましく見えた。
椅子に座っていた女性は俺と部長の姿を見ると立ち上がり、壁に立てかけてあった折り畳み椅子を準備し始める。
「あっ、我々でやりますのでお構いなく」
部長もその姿に焦りながら女性から椅子を奪い取ると俺に一脚渡し、自分の分を邪魔にならない程度に話しやすい位置に広げた。そして、俺も同じように部長の横に椅子を置くと二人して座る。
部長は立っていた女性が椅子に座りなおしたのを見ると俺の方を見て二人を紹介してくれた。
「こちらは西郷幸さんと桐野霧江さん。我が社と契約している探索者パーティーの方だ」
「初めまして、西郷幸です。よろしくお願いします」
「初めまして、こんな姿で申し訳ないですが桐野霧江です」
「あっ、はい。私、羽生進と申します、よろしくお願いします」
俺は慌てながらも名刺を西郷さんとベッドで横になっている桐野さんに差し出す。
名刺を受け取った二人は名刺と俺の顔を交互に見た後に顔を合わせて少し笑う。
「お二人には前回お話しさせていただきましたが、この度、我が社の社員の中から探索者活動をさせる者を選んだという事ですが、この羽生がその社員になります」
部長の言葉に二人の様子を見ながら頭を下げる。
二人からすると今までの仕事を取られると思う可能性が有るから頭を上げるのは怖かったが部長の話も進まないのも問題だと思ってそのまま頭を上げた。
視界に入ってきた二人の様子を見ると特に不満そうな様子も見えないし大丈夫そうだなと勝手に思っていると部長から初めて聞く話が聞こえてきた。
「それで前回の続きですが、お二人―――桐野さんは退院後にですが、我が社の社員として雇用される事が決まりました。また、西郷さんは探索者部門の一員として羽生と一緒にダンジョンに潜って頂き、桐野さんは第二開発部に所属という形で羽生からの要望が有った時に限りダンジョンに潜って頂きます」
「えっ、ちょっ、ちょっと待ってください、部長。私は初耳なんですが?」
「あぁ、そうだった。忘れていたよ、羽生君」
驚きのあまり、部長にそんな事を言うと言ってなかったっけと言わんばかりのとぼけ顔をされる。
二人の様子を気にしながらも部長に聞いてみるとどうやら俺の事も含めて第二開発部の下に付く形で探索者部門の立ち上げが決まったらしく、探索者の雇用の第一歩として契約していた西郷さんたちのパーティーに声を掛けたらしい。
西郷さんたちもパーティーとしては負傷者が多く、機能停止しているとも言える状態だった為、今後の事も考えると我が社に所属する形を選んだそうだ。
それで今回俺が連れてこられたのは今後一緒にダンジョンを潜るメンバーの顔合わせの為だったらしい。
「それならここに来る前に教えてくれても良かったじゃないですか……」
「ごめんごめん、本当に忘れてたよ」
あははと誤魔化すように笑う部長の姿と俺の様子に二人は面白かったのか笑い始めた。
「ふふふ、羽生さんも大変ですね」
「あはは、そうね」
「それで今後なんですが「あっ、待って。羽生さんには悪いんだけど、ライセンスカード見せて貰っても良いかしら?」……」
二人の様子が落ち着いたところで改めて話始めようとした部長の声を遮るように西郷さんが俺の方を見ながら話しかけてくる。
どうやら俺の力量などを確認したいようだ。
チラっと部長の方へ視線を送ると頷いたので俺はライセンスカードを西郷さんに見せる為に取り出した。
「えぇ、大丈夫ですよ。《アンロック》、どうぞ」
通常、ライセンスカードはその持ち主以外には名前と顔写真、協会で格付けしているランク、探索者IDぐらいしか表示されていない。
しかし、持ち主がライセンスカードのロックを外す事でそれ以外の人にも詳しい情報―――レベル、ステータス、血液型が表示されるようになっている。これは管理者から与えられた魔道具から作られているから可能な事で他にもレベルやステータスの変動にも自動で対応している。
ID:00100235
名前:羽生進
血液型:B
レベル:42
力:D
敏捷:E
魔技:D
幸運:E
スキル
なし
特記事項
・異空間収納袋持ち
俺のライセンスカードを受け取った西郷さんはその内容を確認しながら自分のライセンスカード取り出してロックを解除して俺に渡してくれる。
ID:00009891
名前:西郷幸
血液型:A
レベル:73
力:C
敏捷:B
魔技:C
幸運:D
スキル
・肉体強化
・超高度聴覚
・光魔法
特記事項
なし
流石、パーティーを組んで深くまで潜ってるだけ有ってレベルが高いな。
たぶん、このライセンスカードを見る限りだと桐野さんの方も同じぐらいレベルが高いだろうし、一緒にパーティーを組むのをこっちからお願いしたいくらいだ。
「聞いてた以上に羽生さんも経験が有るんですね。これなら私も一緒にパーティーを組まさせていただきたいと思います」
「そうだね。私も見た限りじゃ心配するような事が無さそうだね。と言うか、異空間収納袋持ちなんて羨ましい……」
身体を起こして覗き込むように俺のライセンスカードを見た桐野さんの言葉に西郷さんも同じ風に思ったのか頷いている。そして、互いにライセンスカードを返すと部長を見た。
「じゃあ、お二人とも今回の契約は同意していただけるという事でよろしいでしょうか?」
「「はい、お願いします」」
では……っと部長は鞄から恐らく契約書も入っている二人分のファイルを取り出すと二人に渡した。
「では、また後日取りに伺いますので必要事項の記入等をよろしくお願いします」
「分かりました。それで一緒にダンジョンに行くのは来週からで問題無いでしょうか?」
西郷さんはそう言って俺の方を見てくる。
まぁ、西郷さんの怪我がどれほどの物かを知らない俺からするとその言葉を信じるしかない。
「えぇ、出来れば来週の月曜に会社の方へ来てもらって方針とか決めたい所ですがそれで大丈夫ですか?」
「はい。では、それでお願いします」
部長も渡す物を渡せた事も有ってそろそろ戻る事を二人に話したので俺もそのまま部長と同じように会社に戻る事にした。
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ステータス
ID:00100235
名前:羽生進
血液型:B
レベル:42
力:D
敏捷:E
魔技:D
幸運:E
スキル
なし
特記事項
・異空間収納袋持ち
ID:00009891
名前:西郷幸
血液型:A
レベル:73
力:C
敏捷:B
魔技:C
幸運:D
スキル
・肉体強化
・超高度聴覚
・光魔法
特記事項
なし
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