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侍女のカナタさん
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「リーゼロッテさま。そんな歩きながら召し上がらないでください!ぽろぽろ床に零れていますよ!」
最近入った侍女のカナタ。
まだすごく若いけれど、しっかり者のいい子だ。
水色の髪のショートカットに吊り目がちの瞳。
クールビューティっていうのかしら。
確かに、掃除をするのが大変よね。申し訳ないことをしたわ。
自分が歩いてきた証拠のクッキーのカスが点々と落ちている。
「ごめんなさい。」
まだ何枚かクッキーはある。
あの弟は絶対に私がつまむことを分かってて、大量に作ったのだ。
ハンカチを開いてクッキーをつまみ、ポケットにそっと入れた。
「それで?私を呼びに来たの?」
「ええ。ブリザード王国のスノー王子が到着されましたので、ぜひリーゼロッテ様をと。」
「えええ。めんどくさっ。」
「そんなことを仰らずに。なかなかきれいな方でしたよ。」
「私の好みはガッシリした体育会系で、強面なの!どーせ私より綺麗なんでしょ!やあよ!」
「そうおっしゃるとは思いましたけど、王命ですから。」
それで、会わされたのは。
「えっ。あんた……。」
「あなたが……。」
「リーゼロッテ?あなたたちもう会ってたの?」
王妃が首を傾げている。
「先ほど待機しているときにすれ違いまして。」
「嫌だわ、私あなたのこと女性だとばかり。失礼いたしました…。」
恥ずかしい。
そりゃあ、縁談なんてどうなったっていいって思ってたから、嫌われてやれとさえ思っていたけれど。
クッキーを歩きながら齧っている姿なんて恥ずかしすぎる。
「私、貴方のこと好きです。よろしければ、私の妻になることを前向きに考えてくださらないでしょうか。(おもしれー女。気に入った!)」
キラッキラ!いい人だけど~~~~。友達にはなれるとは思うけど~~。
「お断りしますっ!私、ヒグマみたいな人がタイプなんですっ!」
「ヒグマ………。」
「ムキムキで男らしくてっ、頼りがいがあって、できればダンディな男性が好みなの!」
「こら、リーゼロッテ!わがままを言うんじゃない。」
「そうよ、パパの言う通りよ?見た目で選んで失敗したのを忘れたの?いいから付き合ってごらんなさい!婚約者候補でいいから!」
「えぇええ……。」
ちらっとスノー王子を見てみる。
ニコニコほほ笑んでいて、私より美人なんだけど。
「そうだ。今日はロイも婚約者?を連れてきているんだろう。せっかくだから庭でダブルデートをしてきたらどうだい?お前もロイのことが心配だろう。」
「そうねえ、今はお部屋でお茶しているみたいだけど、あの子のことだから心配だわ。」
「しょうがないわ……。では、スノー王子。婚約者『候補』!『候補』ですからね?」
「はい。」
ニッコリほほ笑んでエスコートしてくれる。
うう……。
「…………はい。承知いたしました。必ず。」
城の廊下の片隅でひっそりと彼の方と連絡を取る。
「カナタ―!庭に出るの、ついて来て頂戴!」
「承知いたしました!」
慌てて通信を切って、リーゼロッテ様のところへ戻る。
西のカタルシス王子はリーゼロッテに離縁され、廃太子になってしまった。
今一度、王子の下へリーゼロッテを。
最近入った侍女のカナタ。
まだすごく若いけれど、しっかり者のいい子だ。
水色の髪のショートカットに吊り目がちの瞳。
クールビューティっていうのかしら。
確かに、掃除をするのが大変よね。申し訳ないことをしたわ。
自分が歩いてきた証拠のクッキーのカスが点々と落ちている。
「ごめんなさい。」
まだ何枚かクッキーはある。
あの弟は絶対に私がつまむことを分かってて、大量に作ったのだ。
ハンカチを開いてクッキーをつまみ、ポケットにそっと入れた。
「それで?私を呼びに来たの?」
「ええ。ブリザード王国のスノー王子が到着されましたので、ぜひリーゼロッテ様をと。」
「えええ。めんどくさっ。」
「そんなことを仰らずに。なかなかきれいな方でしたよ。」
「私の好みはガッシリした体育会系で、強面なの!どーせ私より綺麗なんでしょ!やあよ!」
「そうおっしゃるとは思いましたけど、王命ですから。」
それで、会わされたのは。
「えっ。あんた……。」
「あなたが……。」
「リーゼロッテ?あなたたちもう会ってたの?」
王妃が首を傾げている。
「先ほど待機しているときにすれ違いまして。」
「嫌だわ、私あなたのこと女性だとばかり。失礼いたしました…。」
恥ずかしい。
そりゃあ、縁談なんてどうなったっていいって思ってたから、嫌われてやれとさえ思っていたけれど。
クッキーを歩きながら齧っている姿なんて恥ずかしすぎる。
「私、貴方のこと好きです。よろしければ、私の妻になることを前向きに考えてくださらないでしょうか。(おもしれー女。気に入った!)」
キラッキラ!いい人だけど~~~~。友達にはなれるとは思うけど~~。
「お断りしますっ!私、ヒグマみたいな人がタイプなんですっ!」
「ヒグマ………。」
「ムキムキで男らしくてっ、頼りがいがあって、できればダンディな男性が好みなの!」
「こら、リーゼロッテ!わがままを言うんじゃない。」
「そうよ、パパの言う通りよ?見た目で選んで失敗したのを忘れたの?いいから付き合ってごらんなさい!婚約者候補でいいから!」
「えぇええ……。」
ちらっとスノー王子を見てみる。
ニコニコほほ笑んでいて、私より美人なんだけど。
「そうだ。今日はロイも婚約者?を連れてきているんだろう。せっかくだから庭でダブルデートをしてきたらどうだい?お前もロイのことが心配だろう。」
「そうねえ、今はお部屋でお茶しているみたいだけど、あの子のことだから心配だわ。」
「しょうがないわ……。では、スノー王子。婚約者『候補』!『候補』ですからね?」
「はい。」
ニッコリほほ笑んでエスコートしてくれる。
うう……。
「…………はい。承知いたしました。必ず。」
城の廊下の片隅でひっそりと彼の方と連絡を取る。
「カナタ―!庭に出るの、ついて来て頂戴!」
「承知いたしました!」
慌てて通信を切って、リーゼロッテ様のところへ戻る。
西のカタルシス王子はリーゼロッテに離縁され、廃太子になってしまった。
今一度、王子の下へリーゼロッテを。
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