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悪役令息?上等ですが?
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「………っ、あぁ!酷い…っ」
階段の下で傷だらけのピンクブロンドの小柄な男子生徒が菫色の大きな瞳から大粒の涙を流す。
階段の上では、茶色の髪の男子生徒がその様子を見下ろしていた。
「エンジ=テンポラリー侯爵令息っ!そんなに…っ、そんなに僕が邪魔ですかッ!?」
「何のことですか?」
「まぁ……。エンジさまったら…。」
「あの方、背がスラリとしてしゃんとして、剣術も魔術も素晴らしい腕前だし、逞しいのにものすごく美人で華があって、お素敵なのよねぇ…。」
「でもほら、バイオレット=ピーチ男爵令息に意地悪をされてるって…。本当かしら…?」
「さぁ…。なんでもエンゼル王太子の婚約者の座を争っているらしいけど…???どうだろうね?」
「なんの騒動だ…!?」
黒髪黒目のスラリとした美丈夫が現れる。
後には、茶色の髪のトーン=レックス侯爵令息。
緩やかなウェーブがかかった髪の、華やかな美男子だ。
「エンゼル様ぁ!エンジさまが……っ、僕を階段から突き飛ばしたのッ…!男爵令息風情がエンゼル様をお慕いするなんてッて…!!」
「なんてことだ…。」
「うぅっ、このっ、悪役令息ぅ!学校にまで身分を持ち込んで、威張り散らして!上位貴族ならこんなことをしてもいいと思うの?!僕、大けがしたり死ぬかもしれなかったんだよっ!」
「はぁ…。」
エンジは指をパチンと鳴らす。
その瞬間、エンジの髪と目の色は黒に、エンゼル王太子と呼ばれていた者の髪の色がこげ茶に変わった。
困惑するバイオレットの目の前。優雅に階段を降りて近づく。
「ありがとう、バイオレット=ピーチ男爵令息。来年、私の可愛いアンジュが入学するからね。その前に綺麗にしておきたかったんだ。隣国から来た侯爵令息を装ってね…?上昇志向が強いのは結構だけど、自分を磨くなら兎も角、虚偽の事実を吹聴して他人を陥れてまで、男を手に入れようとするのはいかがなものかね?」
「う、うそ…っ。そんな…っ。」
「今までありがとうね。リネーム。」
「いえ。貴族様の学園も面白かったので問題ありません。学食も美味しかったですし!でも、こんなあからさまなハニートラップ、真に受ける人がいるんですかねぇ。」
リネームは元孤児院育ち。
お母様であるアレン陛下が作った民間の学校で学び、騎士となり、私の護衛騎士となった男だ。
「ところがいるんだよね。」
「前例がいたんだよね。僕たちはそこの猫なで声のぶりっ子のどこがいいのか分からないけど。でも、これを契機にまた学園も引き締まるでしょう。スパンが空くと忘れがちだからね。」
トーンはくすくす笑った。
「さて、私が王太子のエンゼル=リンク=ファーマである。悪役令息?上等ですが??」
「いやああああああ!」
くるりと華麗にエンゼルはターンして、ギャラリーに微笑む。
「今回は、噂に惑わされる者がいなくて何よりでした。母のときの教訓がご家庭で行き届いているのでしょう。今回の話をよーく伝えておいてください。」
どうやらアレンとカエサルの長男は、天使というより魔王のようです。
END
階段の下で傷だらけのピンクブロンドの小柄な男子生徒が菫色の大きな瞳から大粒の涙を流す。
階段の上では、茶色の髪の男子生徒がその様子を見下ろしていた。
「エンジ=テンポラリー侯爵令息っ!そんなに…っ、そんなに僕が邪魔ですかッ!?」
「何のことですか?」
「まぁ……。エンジさまったら…。」
「あの方、背がスラリとしてしゃんとして、剣術も魔術も素晴らしい腕前だし、逞しいのにものすごく美人で華があって、お素敵なのよねぇ…。」
「でもほら、バイオレット=ピーチ男爵令息に意地悪をされてるって…。本当かしら…?」
「さぁ…。なんでもエンゼル王太子の婚約者の座を争っているらしいけど…???どうだろうね?」
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後には、茶色の髪のトーン=レックス侯爵令息。
緩やかなウェーブがかかった髪の、華やかな美男子だ。
「エンゼル様ぁ!エンジさまが……っ、僕を階段から突き飛ばしたのッ…!男爵令息風情がエンゼル様をお慕いするなんてッて…!!」
「なんてことだ…。」
「うぅっ、このっ、悪役令息ぅ!学校にまで身分を持ち込んで、威張り散らして!上位貴族ならこんなことをしてもいいと思うの?!僕、大けがしたり死ぬかもしれなかったんだよっ!」
「はぁ…。」
エンジは指をパチンと鳴らす。
その瞬間、エンジの髪と目の色は黒に、エンゼル王太子と呼ばれていた者の髪の色がこげ茶に変わった。
困惑するバイオレットの目の前。優雅に階段を降りて近づく。
「ありがとう、バイオレット=ピーチ男爵令息。来年、私の可愛いアンジュが入学するからね。その前に綺麗にしておきたかったんだ。隣国から来た侯爵令息を装ってね…?上昇志向が強いのは結構だけど、自分を磨くなら兎も角、虚偽の事実を吹聴して他人を陥れてまで、男を手に入れようとするのはいかがなものかね?」
「う、うそ…っ。そんな…っ。」
「今までありがとうね。リネーム。」
「いえ。貴族様の学園も面白かったので問題ありません。学食も美味しかったですし!でも、こんなあからさまなハニートラップ、真に受ける人がいるんですかねぇ。」
リネームは元孤児院育ち。
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「ところがいるんだよね。」
「前例がいたんだよね。僕たちはそこの猫なで声のぶりっ子のどこがいいのか分からないけど。でも、これを契機にまた学園も引き締まるでしょう。スパンが空くと忘れがちだからね。」
トーンはくすくす笑った。
「さて、私が王太子のエンゼル=リンク=ファーマである。悪役令息?上等ですが??」
「いやああああああ!」
くるりと華麗にエンゼルはターンして、ギャラリーに微笑む。
「今回は、噂に惑わされる者がいなくて何よりでした。母のときの教訓がご家庭で行き届いているのでしょう。今回の話をよーく伝えておいてください。」
どうやらアレンとカエサルの長男は、天使というより魔王のようです。
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こんばんは。楽しくて一気読みさせていただきました。
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一部の『ざまぁ』された人達もいましたが💦
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83頁
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