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侵略
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青い薔薇を髪に飾った自分の姿は、まるで乙女のようで。
王女として育ったままならこうだったのだろうかと思わせるものだった。
私はどうしたんだろう。
どうしてしまったんだろう。
カルスはきっと私に同情してるんだ。
あんな場面を見てしまったから、忠義のために私を娶ってくれようとしているに違いない。
きっと…。そうだ。
だって、あんなところを見て、カルスみたいな真面目ないい男が簡単に脚を開くような私を嫁にしようなんて本気で望むわけがない。
大体、貴族社会では生娘が好まれるのだ。
純潔でもない私など。
コンコン。
ノックの音が聞こえる。
「団長、入ります。」
「頭が冷えたようだな。入れ。」
慌てて、青い薔薇を机の上に置いた。
「…捨てなかったんですね。」
「花に罪はないからな。」
「団長はずっとおひとりのつもりなんですね。」
「私は国のために生きる。それでいい。」
「いつまで自分を犠牲にするつもりですか。陛下や殿下もそんなことを望んでいません。団長だって幸せに…!」
「今更生き方を変えるのは難しい。いい加減――――――!」
その時、ベルははっとした。
「団長?」
「カルス、15003200だ。先手を打たれた。先に行く、準備して来い。」
「団長!だんちょ!!!」
止めるのも聞かず、ベルは転移した。
おそらく、バルバールの侵攻軍が既に侵入していたのだ。
「全員、急げ。出立、場所は東北東の青の森!!!!」
カルスは叫んで、全軍を招集した。
「おいおい。……これはこれは。」
バルバールの指揮をとっているのはバルバールの王太子だ。
見事な毛皮のマントを身に着け、俺が大将だと名札をつけて歩いているようなものだ。愚かだな。
瞬間で転移したベルは、宙に出ると、まずは雷の範囲魔法で馬を潰し、兵士の何割かの腕を焼いた。
回復魔法師も同行しているようだが、すぐに回復はできないだろう。
「正義は我が国にあり!退かれよ!なおも攻め入るおつもりならば、私が斬る!」
「ひっ……!」
バルバールの兵士が怯える。
ベルは王太子を捕虜にするために彼の意識を刈り取ろうとした。
刹那。
《くくく……っ》
悪寒。
森の木からぶら下がる様に背後に下りたその者が、ベルを捕えた。
「イヤァ。私の身代わりご苦労、リュシー。」
「肝が冷えましたよ。」
毛皮を着ている男が、自分を捕えている男に恭しく返事をする。
まさか。
まさか。
「やあ、はじめまして。私はクレイ=ジー=バルバール。会いたかったよ、お姫様。」
にたりと笑うその笑顔は、あの大嫌いなロワによく似ていた。
王女として育ったままならこうだったのだろうかと思わせるものだった。
私はどうしたんだろう。
どうしてしまったんだろう。
カルスはきっと私に同情してるんだ。
あんな場面を見てしまったから、忠義のために私を娶ってくれようとしているに違いない。
きっと…。そうだ。
だって、あんなところを見て、カルスみたいな真面目ないい男が簡単に脚を開くような私を嫁にしようなんて本気で望むわけがない。
大体、貴族社会では生娘が好まれるのだ。
純潔でもない私など。
コンコン。
ノックの音が聞こえる。
「団長、入ります。」
「頭が冷えたようだな。入れ。」
慌てて、青い薔薇を机の上に置いた。
「…捨てなかったんですね。」
「花に罪はないからな。」
「団長はずっとおひとりのつもりなんですね。」
「私は国のために生きる。それでいい。」
「いつまで自分を犠牲にするつもりですか。陛下や殿下もそんなことを望んでいません。団長だって幸せに…!」
「今更生き方を変えるのは難しい。いい加減――――――!」
その時、ベルははっとした。
「団長?」
「カルス、15003200だ。先手を打たれた。先に行く、準備して来い。」
「団長!だんちょ!!!」
止めるのも聞かず、ベルは転移した。
おそらく、バルバールの侵攻軍が既に侵入していたのだ。
「全員、急げ。出立、場所は東北東の青の森!!!!」
カルスは叫んで、全軍を招集した。
「おいおい。……これはこれは。」
バルバールの指揮をとっているのはバルバールの王太子だ。
見事な毛皮のマントを身に着け、俺が大将だと名札をつけて歩いているようなものだ。愚かだな。
瞬間で転移したベルは、宙に出ると、まずは雷の範囲魔法で馬を潰し、兵士の何割かの腕を焼いた。
回復魔法師も同行しているようだが、すぐに回復はできないだろう。
「正義は我が国にあり!退かれよ!なおも攻め入るおつもりならば、私が斬る!」
「ひっ……!」
バルバールの兵士が怯える。
ベルは王太子を捕虜にするために彼の意識を刈り取ろうとした。
刹那。
《くくく……っ》
悪寒。
森の木からぶら下がる様に背後に下りたその者が、ベルを捕えた。
「イヤァ。私の身代わりご苦労、リュシー。」
「肝が冷えましたよ。」
毛皮を着ている男が、自分を捕えている男に恭しく返事をする。
まさか。
まさか。
「やあ、はじめまして。私はクレイ=ジー=バルバール。会いたかったよ、お姫様。」
にたりと笑うその笑顔は、あの大嫌いなロワによく似ていた。
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