25 / 113
この日のための準備2
しおりを挟む
「レナード!レナードだろうっ!?よかった、生きていたんだな!!!」
目から涙を流し鼻水を流すこの人は、愚かな男だが憎んではいない。
俺の手汗はアレックスも分かっただろう。ぎゅっと繋いでくれる。
「今までどうしていたのっ?もう、みんな心配したんだからねっ。」
この人はわざとらしい。
「今更現れたところで、お前は王族の教育を受けていないのだから、王太子は私だっ!しかも、お前、なんでアレックスをエスコートしてるんだ!なんてやつだ!アレックスが美しいからナードから奪ったのか!」
お前と一緒にするな。
スワン王子とリーフ王子が相槌を打つのを見て、俺は一歩後ろに下がり、胸を張った。
遠くでコンフォート公爵家とクリフォート伯爵家も見守ってくれている。
両家で事務官長の身柄は抑えたようだ。
震えに耐えて、声を張る。
「私は事故に見せかけて殺されるところを母の侍女だったクリフォート伯爵夫人に救われ、髪を染め、化粧をしてナード=クリフォートとして生きておりました。アレックスはナード=クリフォートの妻。私がナードなのですから、アレックスをエスコートして当然です。」
陛下は目を潤ませて、手を伸ばしてくる。
「そうか……。そうか。お前が『愛し子』と。これはなんということか。精霊様の思し召しだ。精霊王様は私たちを見守って慈しんでくださる。しかし、事故と見せかけて殺……とは。」
「その時は上手く証拠も隠滅したようです。あの頃はまだ事務官長ではなかったあなたは、列車の整備士に扮して潜り込んでいた。クリフォート夫人に隠されて列車の下に私はいました。あなたは、私たちを助けるのではなく、死んだかどうかを確かめるために夫人に声をかけている。ですが、今回は仕事を放って潜り込める立場ではなかった。その結果、私は事故を未然に防ぐことが出来た。」
「事務官長!!?………確かアイリの義理の…。それに、『今回』って!!?」
「陛下ぁ、アイリ知りませんっ。」
お義父様がこんな方だったなんてぇ、と王妃は嘘泣きを始めている。
全く白々しい。
「レイチェル叔母さんとレナードが邪魔だったんでしょう?二人がいなくなればあなたは王妃になれるし、息子は間違いなく王太子ですものね。」
「おばさんがぶりっ子なんて痛いですよ。」
他国の王族でしがらみのない間柄、むしろ国力はウインター王国が上とあって、二人の王子は王妃を煽る。
王妃はにぃっと笑った。
レナード頑張れ。
さっきからレナードが緊張しているのが分かる。
精霊さま。精霊の王様。レナードを守ってね。
目から涙を流し鼻水を流すこの人は、愚かな男だが憎んではいない。
俺の手汗はアレックスも分かっただろう。ぎゅっと繋いでくれる。
「今までどうしていたのっ?もう、みんな心配したんだからねっ。」
この人はわざとらしい。
「今更現れたところで、お前は王族の教育を受けていないのだから、王太子は私だっ!しかも、お前、なんでアレックスをエスコートしてるんだ!なんてやつだ!アレックスが美しいからナードから奪ったのか!」
お前と一緒にするな。
スワン王子とリーフ王子が相槌を打つのを見て、俺は一歩後ろに下がり、胸を張った。
遠くでコンフォート公爵家とクリフォート伯爵家も見守ってくれている。
両家で事務官長の身柄は抑えたようだ。
震えに耐えて、声を張る。
「私は事故に見せかけて殺されるところを母の侍女だったクリフォート伯爵夫人に救われ、髪を染め、化粧をしてナード=クリフォートとして生きておりました。アレックスはナード=クリフォートの妻。私がナードなのですから、アレックスをエスコートして当然です。」
陛下は目を潤ませて、手を伸ばしてくる。
「そうか……。そうか。お前が『愛し子』と。これはなんということか。精霊様の思し召しだ。精霊王様は私たちを見守って慈しんでくださる。しかし、事故と見せかけて殺……とは。」
「その時は上手く証拠も隠滅したようです。あの頃はまだ事務官長ではなかったあなたは、列車の整備士に扮して潜り込んでいた。クリフォート夫人に隠されて列車の下に私はいました。あなたは、私たちを助けるのではなく、死んだかどうかを確かめるために夫人に声をかけている。ですが、今回は仕事を放って潜り込める立場ではなかった。その結果、私は事故を未然に防ぐことが出来た。」
「事務官長!!?………確かアイリの義理の…。それに、『今回』って!!?」
「陛下ぁ、アイリ知りませんっ。」
お義父様がこんな方だったなんてぇ、と王妃は嘘泣きを始めている。
全く白々しい。
「レイチェル叔母さんとレナードが邪魔だったんでしょう?二人がいなくなればあなたは王妃になれるし、息子は間違いなく王太子ですものね。」
「おばさんがぶりっ子なんて痛いですよ。」
他国の王族でしがらみのない間柄、むしろ国力はウインター王国が上とあって、二人の王子は王妃を煽る。
王妃はにぃっと笑った。
レナード頑張れ。
さっきからレナードが緊張しているのが分かる。
精霊さま。精霊の王様。レナードを守ってね。
65
お気に入りに追加
2,659
あなたにおすすめの小説
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
天野兄弟のドキハラ!な日常生活
狼蝶
BL
学校一の美男子かつ皆が憧れる生徒会長(天野裕)――の弟はまさかのビン底眼鏡に髪ぼっさぼさの超ダサい男(研)。しかし実は二人は恋人関係であり、さらに家の中だけでは研は超々イケメン男!!?
そのイケメンさから皆に引かれ、それを嫌われていると感じて心を閉ざし容姿を隠すようになった研と、それを逆手に『イケメンの研』を独り占めする裕。研にとって裕は唯一心を許し甘えられる存在であり、反対に裕にとって研は誰にも取られたくないくらい心が狭くなる存在である。
実家から離れた高校に通うため一人暮らしを始めた裕を研が追っかけ、現在同居中の仲良し兄弟。だが『エッチは成人してから』という裕の厳しい信念によって、研は裕とキスまでしかできていなかった。エッチはなしなものの、映画鑑賞に料理作りなど二人でのんびりとラブラブな生活を送っていたが、そこに夏の嵐が・・・。
夏休みの始まりとともに、天野家に彼らの従兄弟(鈴音)がやって来たのだ。憧れの裕が通う高校に合格するつもりであるため、視察といって休暇中泊まることに・・・。裕の話も聞かずに買い出しに出かけていった鈴音は偶々素顔の研とぶつかり、大嫌いな"研”とは知らずに好きになってしまって――。天野兄弟の夏休み。一体この夏、どうなっちゃうの――!?
*視点切り替え:裕→☾、研→☆、鈴音→☀
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
ハッピーエンド保証!
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。
※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。
自衛お願いします。
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる