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独立宣言 前編

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「う……。あ、あぁぁっ。」


陛下は頭を抱えた。

あれは。

あの白い虎は。


いつもいつも父の側にいた虎だ!



「へっ…陛下!」

妻が私に縋る。



王子時代、私はいつもいつも父に叱られていた。

ヤル気になればできる。

今は本気じゃないだけ。

たったひとりの王子。父には子がいない。だから、よほどの失態がない限り、それほど努力しなくても次の王になれるという考えがあった。

父も元気で、まあ、いざとなってから学べばいい。そう思っていた。



父が決めた婚約者が気に入らなくて、自分で婚約者を見つけた。

前もって父と交渉し、彼女自身も公爵令嬢ではあったので、なんとかなった。

きちんとした手続きをおこない、間違っても公衆の面前で父の許可なく婚約破棄をしなかったからそうならなかったが、やり方を間違えれば唯一の王子だろうが、王族から追い出されていただろう。



勉強は得意じゃないが、素直で明るい妻に癒されて甘やかされて、私は幸せになった、はずだった。



父は亡き母の分も厳しくあたった。

将来の国王になるのだから、王妃になるのだから、と厳しく教育された。


だけど、新婚だったんだ。


初めての子が出来て一番幸せな時だった。


子どもはカワイイ。


妻によく似たかわいいミラー。天使じゃないだろうか。



煩いな。

その時が来たらちゃんとやるよ。


ヤル気が出ないだけで、私の出来はそれほど悪くないはずだ!




二番目の子は、父にそっくりで。

忌々しかった。


顔を見たくなくて遠ざけていたら、父に叱られた。


父はその子をつれて、自分の側で育て始めた。



かわいいミラーが5歳になった時、父が急死した。


元気だと思って、まだ何も習っていなかった。



神獣も継承していない。


だが、私が即位した。




習ってなかった、だから細かいことが分からなかった。

でも、宰相がいた。

出来る人がいるなら任せればいい。

王は最終決定をすればいいんじゃないか。



だから、だから……。






目の前の黒髪黒目の男。


父に似た男。


父にそっくりの怜悧な美しい顔。

のびた背筋。

王の中の王。




その背後には守る様に大きな白い虎。



「あああああああ……。」




あれは私を父とは思っていない。




「陛下。私はあなたにその玉座を降りよとは言わない。だが、私の国民は返してもらおう。」


――――――私は、祖父から譲り受けた南の城を拠点として、独立することを宣言する!――――――――




あれが言った言葉の意味が分からない。



拍手喝采が響き、アレの周りに諸国の王族が挨拶に来る。

大臣たちも、有力貴族も高位貴族も…。みんな…。




そうか。

各国の王族たちは、このためにこのパーティに参列したのだ。
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