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グレー王子は神獣の愛し子

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僕は耳がいい。


丁度、僕はミラー王子からなるべく離れたくて植え込みの側にいたから聞こえたんだ。



「君たちは僕が治してやるからこっそり帰るんだよ。ケイトリンは僕が紹介状を書いておいたから、そこで侍女の仕事を続けたらいい。大丈夫、どうせあいつらは碌に人の名前も顔も覚えていないんだから。」


利発そうな子どもの声。



そこには、植え込みに隠れて蹲った侍女(さっき大けがを負わされてクビにされていた)と顔を自傷させられていた騎士がいた。


黒髪の子ども―――グレー王子は、その体から白い虎を呼び出した。





白い虎、ってこの国の神獣だよね?

確か代々の国王と契約しているって言う…。

去年まで国王をしていた前の陛下の側にも、確かあの虎がいた。




「ビャッコ様、お願いします!」

『任せろ、愛し子よ!!』


白い光がぽわぽわと2人の周りで舞い、傷がみるみる癒えていく。



「ああ!ありがとうございます!」




「本当にね、カインはうっかりしないでよね。僕がいつもいっているでしょう、あいつは嫉妬深いんだから、メイクしなきゃダメだって。3日もすれば忘れるはずだから、それまで城に近づいたらダメだよ。」


「すみません、グレー王子。」


騎士さんは綺麗なお顔に戻った。





『誰か見ているぞ?』


ビャッコ様が僕の方を向いた。




グレー王子と目が合う。




黒い髪をぼさっと伸ばして、みすぼらしくしているグレー王子。


ああ、この人は馬鹿で不細工な王子じゃない。

生き残るためにそう偽っているのだ、と確信した。





それが、僕たちの出会い。
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