25 / 48
ユリウス元王子と孤児のハル
やせっぽちのハル
しおりを挟む
「ありがとうございます。またお越し下さい。」
王都の片隅には、庶民から貴族まで幅広い客層で賑わう商会がある。
互いに衝突が起きないよう、主に貴族側のために、訪問販売も行う配慮もされていて、ますます賑わうリリー商会には目利きでセンスの良い主がおり、しかも最近は店に出るようになった。
金髪碧眼で背の高い、華やかで物腰が洗練された若い男はあっという間に人気になった。
元王子様に似ているが、分かっていても言わないのが、この国のルールだ。
「はあ、順風満帆。アレックスたちの婚礼衣装もうちで用意させてくれないもんかなあ。」
アレックスの魅力は充分私が知っているんだから。
誰よりも輝かせてあげられる。
「店長、お先に失礼します。」
ドアが開くと、雨がざあざあ打ち込んでくる。
「今夜は酷い雨だから、気をつけてね。また明日。」
店員を送り出し、戸締まりを始めた。
ガタっ。
店の脇から何か音がする。
何だろう。
戸締まりをしてレインコートを羽織り、ランプを手に音の方を見れば、何か布切れの山が壁にもたれている。
「だれだ?」
「!ごめんなさいっ!」
山は驚いて走り去ろうとする。
まだ子ども?
靴が濡れるのを厭わずに、思わず濡れた腕を捕まえれば、折れそうに細い。
浮浪児だろう。
「待ちなさい。怒っているわけじゃない。そんなところにいないで、中に入って。」
「で、でも。僕はこんなに汚いし。」
「こんなに体を冷やして。なら、なおのことお風呂に入らないとね?」
遠慮がちに招いた子どもは、店内に入ればキョロキョロするでもなく大人しく、お風呂に連れて行ってやる。
着ていた服はもう着られないから処分して、商品の服を着せることにした。
痩せた体は骨が出て痛々しい。
綺麗に汚れを落とせば、ミルクティー色の綺麗な髪、オレンジ色の瞳の、肉がつけば可愛らしいだろう男の子になった。
「君は元は裕福な平民か貴族の子どもじゃない?なんでこんなことに。」
汚れてボロボロの服は、元は質の良いものだった。隠すように服の内側にあったエメラルドのブローチを、彼に渡す。
男の子は泣き出した。
「ぼくは、ハル。ベリー男爵の長男でした。」
彼の体には欠陥があり、子をなせないことが分かり、廃嫡されたのだという。
「ハル。ここで働かないかい?」
私はなるべく優しく微笑んだ。
王都の片隅には、庶民から貴族まで幅広い客層で賑わう商会がある。
互いに衝突が起きないよう、主に貴族側のために、訪問販売も行う配慮もされていて、ますます賑わうリリー商会には目利きでセンスの良い主がおり、しかも最近は店に出るようになった。
金髪碧眼で背の高い、華やかで物腰が洗練された若い男はあっという間に人気になった。
元王子様に似ているが、分かっていても言わないのが、この国のルールだ。
「はあ、順風満帆。アレックスたちの婚礼衣装もうちで用意させてくれないもんかなあ。」
アレックスの魅力は充分私が知っているんだから。
誰よりも輝かせてあげられる。
「店長、お先に失礼します。」
ドアが開くと、雨がざあざあ打ち込んでくる。
「今夜は酷い雨だから、気をつけてね。また明日。」
店員を送り出し、戸締まりを始めた。
ガタっ。
店の脇から何か音がする。
何だろう。
戸締まりをしてレインコートを羽織り、ランプを手に音の方を見れば、何か布切れの山が壁にもたれている。
「だれだ?」
「!ごめんなさいっ!」
山は驚いて走り去ろうとする。
まだ子ども?
靴が濡れるのを厭わずに、思わず濡れた腕を捕まえれば、折れそうに細い。
浮浪児だろう。
「待ちなさい。怒っているわけじゃない。そんなところにいないで、中に入って。」
「で、でも。僕はこんなに汚いし。」
「こんなに体を冷やして。なら、なおのことお風呂に入らないとね?」
遠慮がちに招いた子どもは、店内に入ればキョロキョロするでもなく大人しく、お風呂に連れて行ってやる。
着ていた服はもう着られないから処分して、商品の服を着せることにした。
痩せた体は骨が出て痛々しい。
綺麗に汚れを落とせば、ミルクティー色の綺麗な髪、オレンジ色の瞳の、肉がつけば可愛らしいだろう男の子になった。
「君は元は裕福な平民か貴族の子どもじゃない?なんでこんなことに。」
汚れてボロボロの服は、元は質の良いものだった。隠すように服の内側にあったエメラルドのブローチを、彼に渡す。
男の子は泣き出した。
「ぼくは、ハル。ベリー男爵の長男でした。」
彼の体には欠陥があり、子をなせないことが分かり、廃嫡されたのだという。
「ハル。ここで働かないかい?」
私はなるべく優しく微笑んだ。
0
お気に入りに追加
307
あなたにおすすめの小説
虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメンアルファ辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される
秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)
BL
【概要】
哀れな魔力なし転生少年が可愛くて手中に収めたい、魔法階級社会の頂点に君臨する霊体最強魔法使い(ズレてるが良識持ち) VS 加虐本能を持つ魔法使いに飼われるのが怖いので、さっさと自立したい人間不信魔力なし転生少年
\ファイ!/
■作品傾向:両片思い&ハピエン確約のすれ違い(たまにイチャイチャ)
■性癖:異世界ファンタジー×身分差×魔法契約
力の差に怯えながらも、不器用ながらも優しい攻めに受けが絆されていく異世界BLです。
【詳しいあらすじ】
魔法至上主義の世界で、魔法が使えない転生少年オルディールに価値はない。
優秀な魔法使いである弟に売られかけたオルディールは逃げ出すも、そこは魔法の為に人の姿を捨てた者が徘徊する王国だった。
オルディールは偶然出会った最強魔法使いスヴィーレネスに救われるが、今度は彼に攫われた上に監禁されてしまう。
しかし彼は諦めておらず、スヴィーレネスの元で魔法を覚えて逃走することを決意していた。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
召喚聖女が十歳だったので、古株の男聖女はまだ陛下の閨に呼ばれるようです
月歌(ツキウタ)
BL
十代半ばで異世界に聖女召喚されたセツ(♂)。聖女として陛下の閨の相手を務めながら、信頼を得て親友の立場を得たセツ。三十代になり寝所に呼ばれることも減ったセツは、自由気ままに異世界ライフを堪能していた。
なのだけれど、陛下は新たに聖女召喚を行ったらしい。もしかして、俺って陛下に捨てられるのかな?
★表紙絵はAIピカソで作成しました。
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました
くるむ
BL
芹沢真紀(せりざわまさき)は、大の読書好き(ただし読むのはBLのみ)。
特にお気に入りなのは、『男なのに彼氏が出来ました』だ。
毎日毎日それを舐めるように読み、そして必ず寝る前には自分もその小説の中に入り込み妄想を繰り広げるのが日課だった。
そんなある日、朝目覚めたら世界は一変していて……。
無自覚な腐男子が、小説内一番のイケてる男子に溺愛されるお話し♡
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる