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これが私たちの復讐

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「陛下、妃殿下。息子へのこれまでの扱い。王太子の振る舞い。もう私は我慢ができません。うちは、幸い隣国との境にあります。実は以前からお誘いはあり……。わが領は隣国へ移ります。」

マリーンの父親は、恭しく、だが厳しい言葉を述べた。


「父上。俺は母方の籍に移ります。」

そこへトールも続く。


公爵の妻は隣国の公爵の令嬢だった。
また、トールの亡くなった母親も、庶子とはいえ隣国の王女だったのだ。


「なっ………!お前たち!?」



慌てふためく陛下を遮り、ファンファーレが響く。

突然現れたのは白髪の紳士。
マントを翻し、供と現れたのは、魔法使いの王国と云われるマジックランドの国王陛下だった。

「カヌレよ。こんな恐ろしい人間がいるところには、誰だってもういられないだろう。彼らは私が保護する。新しい国境には早速バリアをはらせてもらうよ。」


「マジックよ!! 宰相は処刑する!処刑するから!!」

「ヒイイ! 私はリチャード様のためにい!!」

「お父様あ!お父様が処刑されたら、僕はどうなるの!! リチャード様はああだし、あいつの魔法が解けたから、そのうち僕の声だって!!」

切り傷を負った鼻の頭の皮膚を押さえながら、ビビアンは叫んだ。
鼻の傷は、一生残るかもしれない。
それに、声の美しさが失われれば、彼はもう歌手としては難しいだろう。


「呆れたわ。息子も共犯なんて。ビビアンの声の美しさも、マリーンを代償に得ていたのですね。」

「くそう! トール。トールうう!!」
リチャードはずっとトールを睨んで、犬のように唸っている。


「……全く地獄絵図のようだ。この国の行く先は暗いな。さて、マリーン。全ては君の手紙のおかげだよ。よく今まで頑張ったね。」

マジック陛下は、マリーンを労り、優しい笑みを浮かべる。
大好きなトールに似た笑顔。


「ありがとうございます。トールも頑張ってくれている。だから、僕も自分が出来ることを、と思ったのです。
そちらなら、恐ろしい魔法も効かないだろうと。うちの領地の併合と、貴国での父の爵位をありがとうございました。」


「お安い御用だ。次期国王の妃の実家は大事にしないとな。」

「次期国王!?」

リチャードとカヌレ陛下がはもる。


「ああ、うちには王子が一人いることはいるが、どうしても騎士団長に嫁ぎたいらしい。どうしたものか考えていたら、かわいい妹が遺した息子がこちらへ来たいというじゃないか。」


「そうです。俺はマジックランドの王太子になります。向こうの王子も喜んで下さっています。だから、よかったな、リチャード。お前の王太子は揺るがない。どんなにポンコツでも。ビビアンの顔に傷をつけた責任をとって、妃にするといい。悪い魔女の素養がある王妃に自分勝手ですぐキレる王の国など相手にしたくないから、国交は絶たせてもらうが。」


「トール……お前。私たちを捨てるのか……?」

「かわいいリチャードは残りますよ、陛下。それでは皆様、ごきげんよう?」


うっとりするほど素敵なトール。
社交も青春も何もかも打ち捨てて、僕に捧げてくれた人。

阿鼻叫喚の中、僕はトールにエスコートされて、マジック陛下と父に伴われて城を出た。



この結末が、僕の復讐。

婚約破棄して下さって、ありがとうございます。
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