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人魚姫への魔法

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「っど、どういうことだ!?」

リチャードは慌てる。

王と王妃も高台で、これはどうした事だろうか、と席を立ち上がった。

宰相の侯爵は顔を青褪めさせ、狼狽している。

トール王子はポケットにあと3本の試験管を持っていた。

物陰にいたマリーンの父親へ同じように振りかけると、そのまま王と王妃へも振りかけていった。


「私はいったい今まで……!マリーン。すまなかった! 愛しているよ!」

「お父様!!」

父子が抱擁する中、パーティーは騒然となっていた。

王たちも頭を抱えて、自分たちに何が起きていたのかと考える。

こんな場所で婚約破棄など、たとえ彼が王妃に相応しくないと思っていたとしても、許されないことだ。

なのに、さっきまで何とも思わずに静観していた。

頭に霧がかかっていたかのように。

考えれば、この10年、碌に頭が働いていなかった気がする。

宰相が言うまま、首を振ったりサインする日々だったような。

王妃は、まさか……と、宰相を見つめていた。



「リチャード、本当に忘れていたのか!?」

トールがマリーンの側に戻り、呆然とするリチャードに向き直った。

「そもそもマリーンとの婚約は、お前がどうしてもと請うたんだ。自分にはなにもないから、マリーンを譲って欲しいと俺に言って。お前には元々、そのビビアンという婚約者がいたのに。」

えっ……?!

驚くリチャードとは異なり、ビビアンの顔が歪む。

「なんで……。じゃあどうして誰も何も言ってくれなかったんだ!! マリーンも何故今まで一言も。」

「そういう風にお前以外の皆に魔法がかけられていた。俺は母親が魔女の家系だったから、掛からなかったんだ。」


「10年前に何があったのか、お話します。」

マリーンは重い口を開いた。
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