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路上生活者のクロト
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「ここに災害等により元々の暮らしが出来なくなった者たちが暮らしている。」
申し訳程度の小屋、生気ない人たち…。
「炊き出しや医師の手配などはやっているのだが、いかんせん被害を受けた者たちが多すぎてな…。」
そっか…。
大切なものをなくして。
大切な人を失って。
ユメ、キボウ……。
前世。
ニュースで見た風景が心に重なる。
自分の身に降りかかっていない者が、当事者ではない者が、どんな言葉をかけられるだろう?
たいへんだったね がんばって 生きていたらいいことがあるよ 命が助かっただけでもよかったじゃない
そんな言葉は他人事だから言えるんだ。
俺には言えない。言葉が考えられない。
失った人やモノは返ってこない。
「聖女さまだ!」
「聖女さま、ごはんちょうだい!」
子どもたちが顔を出す。
真っ黒に汚れて、異臭がする子どもたち。
俺がぎゅっと彼らを抱きしめると、カカオも子どもたちを抱きしめた。
この子たちにお風呂をあげたい。
食べるものを。
「全く不思議なことだ。これが聖女の力か…。」
一角にオンセンが吹き出し、山から鳥が飛んできて、ごちそうが手に入った。
カスゲイ様が侍従に命令し、炊き出しと風呂の用意をする。
「衣食住を先ず整えることです。おなかが満たされたら元気になれるから。」
「ねえ……。聖女様。聖女様って、怪我も治せる?」
小さな子どもがやってきた。
「やったことはないけど、やってみる?」
「ぼくじゃないの。クロト治してほしいんだ!」
クロトは17歳の男の子。
都会で働き、職人としてやっと独り立ちできるときに、大けがをして……。
その夢が断たれてしまった人だった。
申し訳程度の小屋、生気ない人たち…。
「炊き出しや医師の手配などはやっているのだが、いかんせん被害を受けた者たちが多すぎてな…。」
そっか…。
大切なものをなくして。
大切な人を失って。
ユメ、キボウ……。
前世。
ニュースで見た風景が心に重なる。
自分の身に降りかかっていない者が、当事者ではない者が、どんな言葉をかけられるだろう?
たいへんだったね がんばって 生きていたらいいことがあるよ 命が助かっただけでもよかったじゃない
そんな言葉は他人事だから言えるんだ。
俺には言えない。言葉が考えられない。
失った人やモノは返ってこない。
「聖女さまだ!」
「聖女さま、ごはんちょうだい!」
子どもたちが顔を出す。
真っ黒に汚れて、異臭がする子どもたち。
俺がぎゅっと彼らを抱きしめると、カカオも子どもたちを抱きしめた。
この子たちにお風呂をあげたい。
食べるものを。
「全く不思議なことだ。これが聖女の力か…。」
一角にオンセンが吹き出し、山から鳥が飛んできて、ごちそうが手に入った。
カスゲイ様が侍従に命令し、炊き出しと風呂の用意をする。
「衣食住を先ず整えることです。おなかが満たされたら元気になれるから。」
「ねえ……。聖女様。聖女様って、怪我も治せる?」
小さな子どもがやってきた。
「やったことはないけど、やってみる?」
「ぼくじゃないの。クロト治してほしいんだ!」
クロトは17歳の男の子。
都会で働き、職人としてやっと独り立ちできるときに、大けがをして……。
その夢が断たれてしまった人だった。
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