真面目な近衛騎士は借金返済のために雄っぱぶ嬢になりました。

兄弟ではなく、愛する人

アバッキオたちが教えてくれて、すぐに駆けつけた。

領地の外れにあった再開発途中の貧民街の１角が、丸ごと隠蔽されていた。


胸騒ぎがして、扉を切り裂いた。



赤くなった頬。

素足に着乱れたシャツだけの姿。



痛々しい最愛の姿に、安堵し、怒りが沸く。

「スティーブ！」

俺が呼ぶと、泣きそうな顔で。
俺の胸に飛び込むようにした彼を、抱きしめて俺のコートで包んだ。

何をされた？

聞きたくない。

スティーブを傷つけたくない。

俺が守ってきた純血は奪われてしまったのだろうか。

こんなに暴力を受けて。

すぐに見つけられなくてごめん。

どんなに辛かっただろう。


どんな目にあっていたとしても、俺の気持ちは変わらない。
もう離さない。
あんなクズ親からも守ってやる！


「ヒッ！」

眼の前の魔術士系と思われる、貧弱な体の男を睨むと、短い悲鳴が
あがった。


「な、なんだ！」

「なんでッ、隠蔽魔法が解けているんだ！」


奥から更に５名。
１番奥は見覚えがある。

帝国の王太子だ。


「ジェームズ、奴ら、王族を狙ってる。国民を魅了で操って、この国を乗っ取るつもりだ。」

「ありがとう、スティーブ。」


スティーブをアバッキオに引き渡す。


「残念だったな。お前らに未来はない。」