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閑話2
魔界会議と女領主②
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「そんな恰好をして、たいへんですなぁ。」
「お嬢さんは、よく勉強していくといい。」
ああ、そうですか。
中央の、城の会議室。円卓の一角に私は座っていた。
王様と、宰相様はまだ来ていない。
今日は、書記を務めるという、法務大臣のロウ=スプリング=ドリアード氏もまだだ。
ロウ氏は確か、シイナさんのお父様だったか。
見ると、シイナさんが壁の方で今日の護衛役なのか控えている。
お父様が来るから呼ばれたのか…。
考えていると、初老の他の領主たちが、雑談を盛んにし始めた。
「しかし、殿下は我々を招集して何を話しあおうというのか。」
「今日のランチは何が出ますかねぇ。楽しみですなぁ」
「夜は久々に…」
仕事に集中しろ、お前ら。
「アンジェラ殿、女領主なんて大変でしょう。」
「…若輩者ですが、なんとかやってますよ。ありがとうございます」
内心イライラするが、外面で返す。
「いい婿を紹介しましょうか?」
「いえ、自分で見つけますので。」
「お美しい姫君がそのような格好をして気張らなければならないとは、いたわしい。」
うっさい。
「失礼ですが、装いのことをあれこれいうのはいかがなものかと思いますよ。」
え?
壁の方にいたシイナさんが突然、話に入ってきた。
「いいじゃないですか。女性がズボンをはいても、男性がかわいらしいものを好きでも。彼女は領地でよくやっていますよ、着任してわずかな期間で多くのことを着手しています。すぐに成果を出すでしょう。女性であろうが、関係ないと思います。」
領地経営の腕はあなたたちより上では?
という含み。
「口が過ぎるぞ、シイナ。」
王様、宰相様とともにロウさまが入ってきた。
シイナは一瞥すると、頭を下げて、壁に下がった。
シイナさんは厳しい家庭に育てられて、いつもビシッとしている。
あんな風に言ってくれる人とは思わなかった。
そして、会議が始まった。
会議の内容は…
封印されていたものが、解き放たれたこと。
人間界にそれらは潜伏していて、戦いに備えなければならないこと。
各領地にも協力をお願いしたいこと。
だった。
「そんなこと、中央の不始末でしょう!」
「私たちには関係ない、軍部で何とかしてくれ!」
平和ボケした老害どもめ。
私は、円卓をばんっ!と叩いた。
「我がフレイム家は、嫡男が将軍として戦っておりますが、必要あれば後方支援することを厭いません!このような事態は、領民の生命・身体・財産が脅かされる!向こうにいかなる事情があろうとも、武力で攻め入ってくるのであれば、中央だけでなく、各領地も一丸となって迎え撃つべきでは?」
きっとにらむと、ひっと怯えたような顔。
「もちろん、話し合いで済むのであればそれに越したことはない。万全の対策をとりつつ、解決の糸口も模索しましょう。領民が最優先!守るために全力を尽くす、それが、我々の責務!王だけで政治ができるものではないと心得よ!」
「さすが、フレイム領の新しい領主。アルファ殿が強硬に押したわけがわかる。」
殿下はにっこり微笑んで。
これからの方針が打ち出された。
一角で、領主たちの一人が私をにらんでいた。
私を女と侮っていた人だった。
◆◆◆
ふう…。
疲れたー。
会議が終わり、軽装(ただし男物)に着替えて町へ出る。
ストレス発散にはおいしいスイーツ。
せっかく中央に来たのだから、ここにしかないおいしいものを食べて帰りたい。
「さっきはかっこよかったね!」
すると、きゃぴっとした高い声で後ろから呼び止められた。
シイ…ナさん?
いつも私が見る姿とは違う、ニコニコ、ふわふわっとした印象。
「あ?これ?初めてアンジェラさんには見せるもんね、びっくりするよね。僕はこれが素なんだ!
うちは父親があれで、母は検事で、両親とも厳格で厳しくてさ。」
聞けば、いつも必要以上に男らしくしろって言われてうんざりしているらしい。
公式の場では、だから頑張って気張ってるとか。
「だから、あれも、他人事じゃないっていうか。我慢できなくなっちゃって。ごめんね?」
ウインクして舌を出す顔がかわいらしい。
「いいんですよ、ありがたったです。そうだ、今から甘いものを食べに行くんですよ。一緒にいかがですか?御馳走しますよ。」
私に誘われたといえば、可愛いスイーツを食べているところを万が一見られても、大丈夫でしょう?
といえば、やったー!と笑っていた。
路地に入るところで。
さっと、暴漢に絡まれる。
「!」
「女のくせに生意気なんだよ!自分がか弱い女だってわからせてやる!!」
暴漢の後ろで、さっき睨んでいた人が隠れている。
「仕方なー
私が手に火力をためようとした瞬間。
「うっせーな!!女とか男とかうるさいんだよ!!!!お前なんかより彼女の方が立派だよ!ぼけがぁあ!!!」
「ひっ!? シイナ=スプリング=ドリアード!???」
やばい、まずい、という顔をした刹那。
シイナの背後から蔦が召喚され、ばしばしっと暴漢をやっつけて、あほ領主ごと縛り上げてしまった。
かわいいのに、かっこいい。
ふふふ。
「もう大丈夫、こいつらは父さんに突き出ーーーーーー
ドン!
私とシイナさんの身長差はほとんどない。
いや、若干私の方が高いかも?
「アン…ジェラさん?」
路地の壁に壁ドンをして。
「シイナ=スプリング=ドリアード。あなたこそ私の運命の人。闇の国の件が片付いたらでいい。私の伴侶になっていただけませんか?」
右手をとって、甲に口づけを落とし。プロポーズをした。
「お嬢さんは、よく勉強していくといい。」
ああ、そうですか。
中央の、城の会議室。円卓の一角に私は座っていた。
王様と、宰相様はまだ来ていない。
今日は、書記を務めるという、法務大臣のロウ=スプリング=ドリアード氏もまだだ。
ロウ氏は確か、シイナさんのお父様だったか。
見ると、シイナさんが壁の方で今日の護衛役なのか控えている。
お父様が来るから呼ばれたのか…。
考えていると、初老の他の領主たちが、雑談を盛んにし始めた。
「しかし、殿下は我々を招集して何を話しあおうというのか。」
「今日のランチは何が出ますかねぇ。楽しみですなぁ」
「夜は久々に…」
仕事に集中しろ、お前ら。
「アンジェラ殿、女領主なんて大変でしょう。」
「…若輩者ですが、なんとかやってますよ。ありがとうございます」
内心イライラするが、外面で返す。
「いい婿を紹介しましょうか?」
「いえ、自分で見つけますので。」
「お美しい姫君がそのような格好をして気張らなければならないとは、いたわしい。」
うっさい。
「失礼ですが、装いのことをあれこれいうのはいかがなものかと思いますよ。」
え?
壁の方にいたシイナさんが突然、話に入ってきた。
「いいじゃないですか。女性がズボンをはいても、男性がかわいらしいものを好きでも。彼女は領地でよくやっていますよ、着任してわずかな期間で多くのことを着手しています。すぐに成果を出すでしょう。女性であろうが、関係ないと思います。」
領地経営の腕はあなたたちより上では?
という含み。
「口が過ぎるぞ、シイナ。」
王様、宰相様とともにロウさまが入ってきた。
シイナは一瞥すると、頭を下げて、壁に下がった。
シイナさんは厳しい家庭に育てられて、いつもビシッとしている。
あんな風に言ってくれる人とは思わなかった。
そして、会議が始まった。
会議の内容は…
封印されていたものが、解き放たれたこと。
人間界にそれらは潜伏していて、戦いに備えなければならないこと。
各領地にも協力をお願いしたいこと。
だった。
「そんなこと、中央の不始末でしょう!」
「私たちには関係ない、軍部で何とかしてくれ!」
平和ボケした老害どもめ。
私は、円卓をばんっ!と叩いた。
「我がフレイム家は、嫡男が将軍として戦っておりますが、必要あれば後方支援することを厭いません!このような事態は、領民の生命・身体・財産が脅かされる!向こうにいかなる事情があろうとも、武力で攻め入ってくるのであれば、中央だけでなく、各領地も一丸となって迎え撃つべきでは?」
きっとにらむと、ひっと怯えたような顔。
「もちろん、話し合いで済むのであればそれに越したことはない。万全の対策をとりつつ、解決の糸口も模索しましょう。領民が最優先!守るために全力を尽くす、それが、我々の責務!王だけで政治ができるものではないと心得よ!」
「さすが、フレイム領の新しい領主。アルファ殿が強硬に押したわけがわかる。」
殿下はにっこり微笑んで。
これからの方針が打ち出された。
一角で、領主たちの一人が私をにらんでいた。
私を女と侮っていた人だった。
◆◆◆
ふう…。
疲れたー。
会議が終わり、軽装(ただし男物)に着替えて町へ出る。
ストレス発散にはおいしいスイーツ。
せっかく中央に来たのだから、ここにしかないおいしいものを食べて帰りたい。
「さっきはかっこよかったね!」
すると、きゃぴっとした高い声で後ろから呼び止められた。
シイ…ナさん?
いつも私が見る姿とは違う、ニコニコ、ふわふわっとした印象。
「あ?これ?初めてアンジェラさんには見せるもんね、びっくりするよね。僕はこれが素なんだ!
うちは父親があれで、母は検事で、両親とも厳格で厳しくてさ。」
聞けば、いつも必要以上に男らしくしろって言われてうんざりしているらしい。
公式の場では、だから頑張って気張ってるとか。
「だから、あれも、他人事じゃないっていうか。我慢できなくなっちゃって。ごめんね?」
ウインクして舌を出す顔がかわいらしい。
「いいんですよ、ありがたったです。そうだ、今から甘いものを食べに行くんですよ。一緒にいかがですか?御馳走しますよ。」
私に誘われたといえば、可愛いスイーツを食べているところを万が一見られても、大丈夫でしょう?
といえば、やったー!と笑っていた。
路地に入るところで。
さっと、暴漢に絡まれる。
「!」
「女のくせに生意気なんだよ!自分がか弱い女だってわからせてやる!!」
暴漢の後ろで、さっき睨んでいた人が隠れている。
「仕方なー
私が手に火力をためようとした瞬間。
「うっせーな!!女とか男とかうるさいんだよ!!!!お前なんかより彼女の方が立派だよ!ぼけがぁあ!!!」
「ひっ!? シイナ=スプリング=ドリアード!???」
やばい、まずい、という顔をした刹那。
シイナの背後から蔦が召喚され、ばしばしっと暴漢をやっつけて、あほ領主ごと縛り上げてしまった。
かわいいのに、かっこいい。
ふふふ。
「もう大丈夫、こいつらは父さんに突き出ーーーーーー
ドン!
私とシイナさんの身長差はほとんどない。
いや、若干私の方が高いかも?
「アン…ジェラさん?」
路地の壁に壁ドンをして。
「シイナ=スプリング=ドリアード。あなたこそ私の運命の人。闇の国の件が片付いたらでいい。私の伴侶になっていただけませんか?」
右手をとって、甲に口づけを落とし。プロポーズをした。
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