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戦乱の始まり
災厄の序章
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魔界、中央の王宮。
白い大理石の柱に金の装飾で施された宮。
王の間は人払いされ、
今代の王と王妃、そしてその宰相のユプシロン公爵とその妻で王妃の双子の妹のカシオペア。
先の英雄の一人であり、次代を育成する学園長と軍部の最高責任者を兼任するメフィスト。
そこにいるのは、このメンバーだけだった。
王と王妃は従妹同士で、ルウとリュウの母であるカシオペアも、初代国王と王妃の血を継ぐ。
そして、度々王家からの降嫁を受けたユプシロン公爵も王家の血を継いでいた。
魔界が統一されて300年。
長いようで短い。
300年前のことは、歴史書に記載されていないことも、当事者の身内にはよく語り継がれていた。
「それで、メフィストよ。遺跡に関する報告を聞かせてくれ。」
ブラウンヘアの威厳のある美丈夫ーーー国王が報告を求めた。
「将軍たちにより、すべての遺跡を確認し、魔道具にて再度封印を施しました。しかしながら、赤の遺跡を除く遺跡は、すでに封印が完全に解除され、悪しきものは、すでに解き放たれた後だったとのことです。」
「…なんと!」
「それで、悪しきものはどこへ行ったのですか?」
「近くに転移の魔法陣の痕跡を発見しています。どこへ行ったのか追跡には時間がかかりそうです。
ですが…」
「華の遺跡にて、少々取り残された者がいたと報告があり、現在、ベータとシイナが交戦中です。青の遺跡のところについては、アルファとリュウから何も残っていないことを聞いています。」
「…悪しきもの。悪しき、といってよいのか」
国王が目をふせ、ため息をついた。
「と、いいますと?」
「魔界が統一される前、我らの祖たる聖魔の国は、その国王の力で富み栄えていたが、隣国の闇の国は、いつも天災に見舞われ、光がさすこともなく、不浄の地で…。度々飢饉に見舞われ、生きるために聖魔の国を欲しては常に攻撃をしかけていた。」
「しかし、聖魔の姫君たちの力で国の周りは完ぺきな結界が敷かれており、攻めることはかなわなかったのです。ですが、あるとき、攻撃をし続けた結果、わずかな綻びから、結界は崩壊した。」
王妃・カサンドラが続ける。
ブルネットの豊かな黒髪の、凛とした瞳。
「聖魔には戦う力はない。結界崩壊した結果、すぐに国は攻め落とされた。最後の手段として、最後に残っていた姫君が犠牲になった。」
歴史にも載らない史実。メフィストは息をのんだ。
リュウの両親は知っていたのだろう。目を伏せている。
「4つの封印の要を結ぶ、最後の拠点に。彼女は人柱として、生きたまま石化され、設置されたのです。」
闇の国はその国ごと、異次元に封じられました。
しかし、その残党や、闇の国を支援していたほかの国は反発し、魔界統一の際も、そのあとも、長く戦乱が続いてきました。
メフィスト。あなたたちの働きのおかげで。
王妃が力なく、笑う。
「ですが、向こうからしたら、ただ生きたかっただけだった。そういう時代だったとはいえ、本当に悪として切り捨ててよかったのか。今更、そう彼らにしてみたら今更ですが…。」
「そして、それが今解き放たれた。」
ユプシロン公爵が一歩前へ出る。
「メフィスト様なら、お分かりですね」
「彼らは恨んでいる。今までにない戦いが始まる…。」
「そうです。それに、ルウが見たといっていた石像がなくなっていた件。あの石像は生きたまま石化された聖魔の姫。300年前の聖女。記録によると、彼女も恨んでいた。呪詛を吐き、初代国王の堕天にも影響を与えている。」
王妃の言葉に国王が続ける。
「同じ封印の聖女が揃ったことで、石化が解けた可能性も否定できない。彼女も復活したとしたら、そして、闇の国と手を結んでどこかに潜んでいるとしたら…。」
一刻も早く場所を特定し、どうにかしなくては…。
にぎったこぶしが冷えていた。
白い大理石の柱に金の装飾で施された宮。
王の間は人払いされ、
今代の王と王妃、そしてその宰相のユプシロン公爵とその妻で王妃の双子の妹のカシオペア。
先の英雄の一人であり、次代を育成する学園長と軍部の最高責任者を兼任するメフィスト。
そこにいるのは、このメンバーだけだった。
王と王妃は従妹同士で、ルウとリュウの母であるカシオペアも、初代国王と王妃の血を継ぐ。
そして、度々王家からの降嫁を受けたユプシロン公爵も王家の血を継いでいた。
魔界が統一されて300年。
長いようで短い。
300年前のことは、歴史書に記載されていないことも、当事者の身内にはよく語り継がれていた。
「それで、メフィストよ。遺跡に関する報告を聞かせてくれ。」
ブラウンヘアの威厳のある美丈夫ーーー国王が報告を求めた。
「将軍たちにより、すべての遺跡を確認し、魔道具にて再度封印を施しました。しかしながら、赤の遺跡を除く遺跡は、すでに封印が完全に解除され、悪しきものは、すでに解き放たれた後だったとのことです。」
「…なんと!」
「それで、悪しきものはどこへ行ったのですか?」
「近くに転移の魔法陣の痕跡を発見しています。どこへ行ったのか追跡には時間がかかりそうです。
ですが…」
「華の遺跡にて、少々取り残された者がいたと報告があり、現在、ベータとシイナが交戦中です。青の遺跡のところについては、アルファとリュウから何も残っていないことを聞いています。」
「…悪しきもの。悪しき、といってよいのか」
国王が目をふせ、ため息をついた。
「と、いいますと?」
「魔界が統一される前、我らの祖たる聖魔の国は、その国王の力で富み栄えていたが、隣国の闇の国は、いつも天災に見舞われ、光がさすこともなく、不浄の地で…。度々飢饉に見舞われ、生きるために聖魔の国を欲しては常に攻撃をしかけていた。」
「しかし、聖魔の姫君たちの力で国の周りは完ぺきな結界が敷かれており、攻めることはかなわなかったのです。ですが、あるとき、攻撃をし続けた結果、わずかな綻びから、結界は崩壊した。」
王妃・カサンドラが続ける。
ブルネットの豊かな黒髪の、凛とした瞳。
「聖魔には戦う力はない。結界崩壊した結果、すぐに国は攻め落とされた。最後の手段として、最後に残っていた姫君が犠牲になった。」
歴史にも載らない史実。メフィストは息をのんだ。
リュウの両親は知っていたのだろう。目を伏せている。
「4つの封印の要を結ぶ、最後の拠点に。彼女は人柱として、生きたまま石化され、設置されたのです。」
闇の国はその国ごと、異次元に封じられました。
しかし、その残党や、闇の国を支援していたほかの国は反発し、魔界統一の際も、そのあとも、長く戦乱が続いてきました。
メフィスト。あなたたちの働きのおかげで。
王妃が力なく、笑う。
「ですが、向こうからしたら、ただ生きたかっただけだった。そういう時代だったとはいえ、本当に悪として切り捨ててよかったのか。今更、そう彼らにしてみたら今更ですが…。」
「そして、それが今解き放たれた。」
ユプシロン公爵が一歩前へ出る。
「メフィスト様なら、お分かりですね」
「彼らは恨んでいる。今までにない戦いが始まる…。」
「そうです。それに、ルウが見たといっていた石像がなくなっていた件。あの石像は生きたまま石化された聖魔の姫。300年前の聖女。記録によると、彼女も恨んでいた。呪詛を吐き、初代国王の堕天にも影響を与えている。」
王妃の言葉に国王が続ける。
「同じ封印の聖女が揃ったことで、石化が解けた可能性も否定できない。彼女も復活したとしたら、そして、闇の国と手を結んでどこかに潜んでいるとしたら…。」
一刻も早く場所を特定し、どうにかしなくては…。
にぎったこぶしが冷えていた。
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