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覚醒の気配

兄の話

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ルウが学園長に呼び出される数日前の話。

「また、〆てきたのかい。」

「しつこいんですよ。魔力の大半を封印している今の俺なら、どうにかなると思っているんですかね。あの程度、魔力なんか使わなくても相手になるわけないでしょ。将軍職まで務めたのに馬鹿にしてますね」

リュウは秘書をする前は、軍部に所属していた。
属性は氷。すでに耐えた種族である氷魔と呼ばれる古代種の先祖返りだった。
氷魔は莫大な魔力と引き換えに体が耐えられず、寿命が短い。
その特性から、種をつなぐために、容姿は極めて美しく、相手の性別や性嗜好に応じて体を後天的に造り変える能力がある。
そして、相手が夫なら、どんな体でも子どもを孕むことが可能である。
さらに、必ず子を残して先に逝くため、性行為を通じて相手の魔力を底上げするオプションつき。
だから、この種族は奴隷狩りに会って絶滅したのだ。

リュウの場合は、奴隷狩りから逃れた氷魔の王女が魔界を統一した初代王の王妃だったため、王族の祖先をもつことから先祖返りしてしまった。

リュウのことを好きで手に入れたくて仕方がない軍部の元部下たちは、なにかにつけて学園にあらわれては、力ずくでものにしようとして、返り討ちに会っていた。

「俺は性自認は男だし、女性が好きだと公言してるんですけどね」

「君もいつまで生きられるかわからないんだし、母上からもしょっちゅう釣書が来てたんじゃないの?フリーなのももしかして、ってなるんじゃない」

「すぐに遺してしまうのに、そんな無責任なことできませんよ。遊び人のあなたとは違うんです。大体、こんな種は絶えたほうがいい。もともと絶滅してたんだし。」

美貌に影が落ちる。

メフィストは思い出していた。


数年前のちょうど戦争が終わる直前、彼は意識を喪失した。

魔力が体に合わず、死ぬ一歩手前だった。

彼の親友の懇願と対応が早く、魔力大半を封じることで一命をとりとめ、彼は軍部をやめることになった。

本当は、落ち着いて暮らしたほうがいいが、社会に出ておきたい彼の意を汲んで、秘書官に異動させることになったのだ。

「そういえば…

彼の妹のことで考えてたことがある。
人間界への移住。それに、理由をつけて彼も同行させようと思った。

わずかな余生を妹とともに。

それに、人間界にいれば、少しは長く生きられるかもしれない。

「妹の留学に、君も同行してもらえないかと思っているんだけど。」

一石二鳥の提案だった。
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