【完結】王子様たちに狙われています。本気出せばいつでも美しくなれるらしいですが、どうでもいいじゃないですか。

あの素敵な人は誰？

「これはこれは、ヨーグル伯爵。最近は新しい乳製品の開発に余念がないようですな。」

国の発展に貢献した貴族が一堂に集められ、王宮で祝宴が開かれた。

スパイス王国の北側に位置する牧草地で、牛乳や乳製品を販売している私の領地は広い。

バターやチーズ、クリームなど、食に欠かせないものだから、我が領地は潤っている。




ふふ。




隣には美しい妻。

美しい娘と安心して任せられる後継の息子。

私はとっても幸せだ。


同級生のボウ＝ナスは、小さい頃はかわいかったものの、事故の後、かわいそうにと思ってたらぶくぶくと太って見られなくなって。
聞けば、子を成せない体になったらしい。

あんなに醜く太っても、子を成せない男でも、あいつはなぜか同級生に慕われた。

領地もみるみる発展させて、その手腕に私たちの親世代は彼に注目したものだ。

私はいつもあいつと比べられて叱咤されたし、たとえ子ができなくてもあれだけの手腕と気立ての良さなら欲しがる家門もあったが、結局、親の残した領地を守りたいといって、あいつはずっと一人だった。


今やあいつはただの文官室の課長！

しかもこの年でも未婚でただの太ったおっさん！


はっはっはっ。


勝った！私はあいつに勝ったんだ！






会場が開き、見目麗しい男たちが入ってきて注目される。

ニンジン色の髪の美青年にエスコートされる緑色の髪の美人。

そして、その後ろからついてくるのは。



幼い時の姿をそのまま大人にしたような、……あれ？あれ、誰だ？？




紫色の髪で、緑色にも青色にも見える綺麗な青い瞳。

黒のスーツを着た小柄な男は、年齢がよく分からない。

ある程度年を重ねたような風格はあるし、しかしながら、どこか初々しい。



「ナス課長、キュウリさん！」



アニス殿下のそばにいたソルト妃が二人に駆け寄る。


それで、会場のみなは二人の正体に初めて気づいて、口を大きく開けたまま閉じられなくなるのだった。