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海里

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湊 海里は、代々の皇帝のお目付け役の家の息子だった。

幼い頃から詩や論語を諳んじ、珠算や囲碁将棋にも長けており、神童と呼ばれた。


皇帝の息子たちに仕えるようになったのも、自然の成り行きだった。


湊家の次男で、母親似の美貌。
立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花とはよく言うもので、琴などの楽器も嗜み、花を生けたり茶を点てることもできる。
貞淑で真面目な性格は皇帝に好まれ、もし大人になり当人たちが良ければ、息子たちのどちらかの妃になっても………と望まれた。


幼いときから清聖に張り合っていた黒闇だが、幼い頃はまだ年子の兄にくっついて、多少わがままを言うくらいの可愛げのある子どもだった。

海里を自分だけのものにしたくて、わがままを言ったが、ごねる程海里の気持ちは清聖に傾く。

教養があり、話が合う清聖とばかり海里はいるようになり、年頃になる頃には、清聖の腹心となっていた。



海里は、清聖をお慕いしていた。

だが、清聖は海里を親友としか見ておらず、ならば家臣として生涯仕える気でいた。

そばで役に立てるだけで、幸せだった。




しかし。





皇帝が倒れ、国が黒闇たちに乗っ取られる。

正妃が殺害されて気づいた海里は、自分から黒闇の手に堕ち、情報を得ながら清聖を逃した。



生きてさえいれば、いつかあの方なら国を取り戻せるはず。

自分は黒闇のそばで、国民があまり困らないよう施政を誘導していこう。

そう考えていたのに、黒闇は海里が政治に関わることを許さなかった。


性のはけ口として使われる日々。

親兄弟は地下牢に閉じ込められた。


黒闇は他の者とも遊んだが、中へ出すのは海里だけだった。



誰も知らなかった体は、淫乱な穴になった。


そして、今。


黒闇の子が腹にいる。




子には罪はない。


堕胎を是としない価値観が海里にはあった。



しかし、あの黒闇の子を抱えた自分が国に戻れば、禍の元になる。


そうでなくとも、自分は清聖の隣に立てる体ではない。




女神のようなミリー様も似たような過去があり、素晴らしい伴侶に支えられて今があるという。


この国にいれば、自分もそうなれるだろうか。

子と二人、幸せに。

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