95 / 133
悪が栄えたためし無し3
しおりを挟む
「お兄さま…!」
ポアプルは、がくがくと震える兄に駆け寄って抱きしめた。
長男が領地経営で引きこもっているために、王都で仕事をしている下の兄が、伯爵代理で参加していたのだ。
恋人も婚約者も作らず、学問に身を捧げている清らかな兄が、もう少しでこんな男に穢されるところだったなんて。
三兄弟の中では、各段に小柄で可愛らしい見た目の自分がいたせいで、周りからも特に言われてこなかっただろうが、下の兄もどちらかといえば、男に絡まれるタイプだった。
自分がいたから、ポアプルに皆目が向き、そんなふうに扱われる機会がなかっただけ。
だから、初めてのことで兄は余計にショックだろうと思った。
「うぐぐ……。」
黒闇は下唇をかみしめた。
「アニス殿下!」
ブラックがミリーを伴って現れる。
「ヒッ…!スパイス王国の獅子!」
やばいやばいやばい。
黒闇は体中から汗を流した。
「その男は、トウホウの皇帝ではありません。先帝の崩御を機に、おじと国の乗っ取りを企てたのです。俺たちが旅行で偶然、本来の皇帝が襲われるところに立ち会い、その縁で国を取り返すのを手伝ってまいりました。こちらがその書状。」
会場がざわつく。
離れたところでミリーが海里と接触、保護している。
やはり、体が辛かったらしい。
ミリーが回復魔法で楽にしてやったようだ。
「んっ、な、そんなっ!」
「あなたを唆したおじ、そして共犯の母親は処刑されました。国にいた貴方の仲間もすべて。こちらに連れてきたあなたの部下は、今、俺の部下たちが拘束しています。あなたをこの場で処刑してもいいと、清聖皇帝から許可をいただいておりますよ。」
「そんな………。そんなぁぁああ………。」
黒闇はへたり込み、拘束されて会場を後にした。
処刑して、サメの餌にしたらいいんじゃないかと思うので、後でクミン様や陛下たちに進言しよう。
クローヴ様が泣いた時点で、あいつ、クローヴ様にもよからぬことを考えてたはずだし。
ブラックはちょっとすっきりした。
「ありがとうございます、助けていただいてありがとうございます!アニス殿下、この御恩は忘れません!なにか、僕ができることがあれば、お役に立たせてください!」
スパークリングは律儀な性格らしい。
「そんな、感謝されることでは……。」
「いいじゃないか、今、補佐官は臨時だろう?あまり他国の方にお願いするべきことではないし。どうだろう、彼にアニスの補佐官になってもらうのは。」
ホワイトは、閃いた。
「あ、それはいいかもしれません!兄はものすごく有能なんですよ!」
「でも、学者さんでお仕事忙しいのでは…。」
「大丈夫です!僕は速読と速記が特技だし、左手と右手を同時に使えるので、事務仕事なら人より早くできます!」
アニスは有能な部下を獲得した。
ポアプルは、がくがくと震える兄に駆け寄って抱きしめた。
長男が領地経営で引きこもっているために、王都で仕事をしている下の兄が、伯爵代理で参加していたのだ。
恋人も婚約者も作らず、学問に身を捧げている清らかな兄が、もう少しでこんな男に穢されるところだったなんて。
三兄弟の中では、各段に小柄で可愛らしい見た目の自分がいたせいで、周りからも特に言われてこなかっただろうが、下の兄もどちらかといえば、男に絡まれるタイプだった。
自分がいたから、ポアプルに皆目が向き、そんなふうに扱われる機会がなかっただけ。
だから、初めてのことで兄は余計にショックだろうと思った。
「うぐぐ……。」
黒闇は下唇をかみしめた。
「アニス殿下!」
ブラックがミリーを伴って現れる。
「ヒッ…!スパイス王国の獅子!」
やばいやばいやばい。
黒闇は体中から汗を流した。
「その男は、トウホウの皇帝ではありません。先帝の崩御を機に、おじと国の乗っ取りを企てたのです。俺たちが旅行で偶然、本来の皇帝が襲われるところに立ち会い、その縁で国を取り返すのを手伝ってまいりました。こちらがその書状。」
会場がざわつく。
離れたところでミリーが海里と接触、保護している。
やはり、体が辛かったらしい。
ミリーが回復魔法で楽にしてやったようだ。
「んっ、な、そんなっ!」
「あなたを唆したおじ、そして共犯の母親は処刑されました。国にいた貴方の仲間もすべて。こちらに連れてきたあなたの部下は、今、俺の部下たちが拘束しています。あなたをこの場で処刑してもいいと、清聖皇帝から許可をいただいておりますよ。」
「そんな………。そんなぁぁああ………。」
黒闇はへたり込み、拘束されて会場を後にした。
処刑して、サメの餌にしたらいいんじゃないかと思うので、後でクミン様や陛下たちに進言しよう。
クローヴ様が泣いた時点で、あいつ、クローヴ様にもよからぬことを考えてたはずだし。
ブラックはちょっとすっきりした。
「ありがとうございます、助けていただいてありがとうございます!アニス殿下、この御恩は忘れません!なにか、僕ができることがあれば、お役に立たせてください!」
スパークリングは律儀な性格らしい。
「そんな、感謝されることでは……。」
「いいじゃないか、今、補佐官は臨時だろう?あまり他国の方にお願いするべきことではないし。どうだろう、彼にアニスの補佐官になってもらうのは。」
ホワイトは、閃いた。
「あ、それはいいかもしれません!兄はものすごく有能なんですよ!」
「でも、学者さんでお仕事忙しいのでは…。」
「大丈夫です!僕は速読と速記が特技だし、左手と右手を同時に使えるので、事務仕事なら人より早くできます!」
アニスは有能な部下を獲得した。
27
お気に入りに追加
1,438
あなたにおすすめの小説
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人リトと、攻略対象の凛々しい少年ジゼの、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です(笑)
本編完結しました!
『伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします』のノィユとヴィル
『悪役令息の従者に転職しました』の透夜とロロァとよい子の隠密団の皆が遊びに来る、舞踏会編はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
舞踏会編からお読みいただけるよう、本編のあらすじをご用意しました!
おまけのお話の下、舞踏会編のうえに、登場人物一覧と一緒にあります。
ジゼの父ゲォルグ×家令長セバのお話を連載中です。もしよかったらどうぞです!
第12回BL大賞10位で奨励賞をいただきました。選んでくださった編集部の方、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです。
心から、ありがとうございます!
何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない
てんつぶ
BL
連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。
その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。
弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。
むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。
だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。
人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――
【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど?
お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる