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ミリーのために

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「……ああ。どうすればいいんだ。」

ペッパー公爵家で、ブラックは頭を抱えていた。

誰が招集をかけたわけでもないのに、応接間で蹲るブラックを囲んで親兄弟が集まり、家族会議のようになっている。


「まさか、ソルトよりもあなたの方がそっちの方面で悩むことになるとはねぇ。」
お母様も首を傾げている。

「その子はいろいろあったかもしれないが、元々はちゃんとした大司教の家系の子だろう。血筋的には問題ないし、爵位が要るなら適当に(養子に入れて)協力してくれる家はいくらでも見繕えるんだし、犯罪歴は不問になってるんだし、いい子だし、うちとしては何にも問題ないのだがなぁ。」

「お父様、世間的にはまさかうちがそんなノリだとは誰も思いませんからね。あっ、私はお見合い派なので、お母さま釣書は全部私に回してくださいね!」



「ねえお兄様。ミリーさんの言ったことから、何が一番障害なのか考えてみようよ。ミリーさんはお兄様になんていって断っているの。」


「ミリーと結婚したら、俺が子どもを得られないからと。子どもなんていいと言ったのだが…。」



「ミリーさんは不妊症なの?」


「あっ……。あぁ、医者の不養生というやつかな…。」

ブラックは不妊理由を誤魔化した。

たとえ家族にでも、明かしていいことと悪いことがある。


「そっか…。」



2人のソルトは腕を組み、一人が指をさした。「ひらめいた!」


「お兄さま、神獣様に会いに行くといいよ。すごい神獣様だもの、不妊の特効薬のヒントくらいもらえるかも!」


ブラックの目がカッと見開いた。











自分の診療所を開けて、騎士団へ向かう。
診療所には、騎士団の詰所にいるから、何かあったらそっちへ向かうように張り紙をして出てきた。


ブラック様……。


きっと、俺があいつに騙されていなければ。

この体がきれいだったなら、彼の手をとっていた。とは思う。


そのくらい彼は魅力的だし、あれほど請われれば、誰だってときめく。


なんだか気まずくて、詰所の前を右往左往していたら、カモミール団長がドアを開けた。


「いらっしゃい。うちは訓練もあるし、けがは日常茶飯事だからたすかる。」


キョロキョロと、ブラック様の姿を探す。

ばったりあったら気まずい。



「ははあ。副団長かい。ブラックは今日は休みだよ。不妊で悩んでいる知り合いのために、特効薬はないか神獣さまに助言を得るために雪山を登っているところだ。」


ぴくっと、ミリーが固まった。



もしかして、俺のために。


俺が、不妊を理由にしたから?



――――それほどまで、俺を本気で愛してくれているの?

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