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ソルト覚醒する

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「団長、アニスさまっ!」


「…大丈夫だ、このくらい。」

「ソルトたちを守れたなら、嬉しい。」



「はっ、手負いでまだやる気か。」

リーダーらしき男が、さっと腕をあげた。



周囲を取り囲まれる。


血。


2人とも…。


こんなときにお兄様たちがここにいてくれてたら。


ううん。

僕だって、やればできる。僕が二人を守りたい。みんなを守りたい。

ミリーさん。

僕たちと一緒に丸くなりながら怯えているミリーさん。

震える手で、懸命に団長やアニス様を癒そうとしているけど、集中できなくて癒しの力が霧散している。




許せない。


どうしてこんなひどいことができるの。



「そる…と?」


僕の体からは、今、魔力があふれている。



「許せない。こんなことして、許せない!」



「……ははは。睨んでも怖くなんかな―――――」


ピキ…。


ピキッ。



「なっ!なんだッ!?」





黒づくめの人たちだけ、その足元から徐々に石化する。


「なんだ、」「こんな魔法聞いたことがッ!?」



全部は石化しない。

動きを止める、抵抗させず、生かして捕える。罪を償わせる。

そんな僕のイメージが、石化の魔法になった。


足は太ももまで。

腕は肘まで。


石化して、彼らはもう何もできなくなった。


「すごい、ソルトさん…。」

驚きつつも、敵が動けなくなったことで落ち着きを取り戻したミリーさんは、二人の治癒をしている。


「ミリーさん、自殺の薬を持っていたら嫌だから、解毒剤をしこたま飲ませてもらっていいですか?」


せっかく生かして捕えたのに、死なれたらいやだ。


「分かりました。」


今まで、こんなに近くに寄ったことはない。

治癒の終わった二人や文官の人たちと一緒に手分けして、恐る恐る、黒づくめの人間の傍に寄り、解毒剤を飲ませるため見上げた。




「…――――――――――えっ。」



「どうしたんですか?ミリーさん。」


「……どうして。サリー…。」

ミリーさんが黒づくめのフードを後ろに落とし、リーダー格の男の顔を露にした。


「知り合いだったんですか?」


「……一緒に、教会で育った孤児の…仲間です。」





灰色の髪を短く刈りこんだ、体格のいい男。

サリーと呼ばれた男は、思いっきり嗤った。


「ははは。本当に気づかねえんだからな。お前は俺たちが何も知らずにいると思い込んで!俺たちを人質にとられていると思って、汚ねえこともやって!いいことを教えてやろうか。俺たちは全員、ここにいる。お前が子どもの頃好きだったアリーは、あの奥にいる一番小さい奴だ。俺たちは孤児じゃない。元々、お前を騙すために教会で暮らしていただけの、あいつの部下の子どもだったんだよ!」


ミリーは震えて、涙を流した。


何のために。


何のために。



団長がミリーの肩に優しく手を置き、そして、証拠品の指紋照合を終えて駆けつけた騎士団員が、石化した者たちを運びだして。


そして、舞台は整った。
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