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病院を建てます
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半年後くらいには、お金がなくても診察を受けられる病院を作る予定だから、今日は、町の診療所の先生に話を聞きに来たんだ。
カモミール団長が運転する馬車で、診療所に向かっている。
アニス様も一緒。
「ふんふんふーん。」
「ご機嫌だね、ソルト。」
「うん、最近、ぐっすり眠れるの。悪い夢を見ていたのか、ずっと魘されてたみたいで。」
「そっか…。それはよかった。」
あれから、毎夜のように、分身のソルトとデートを重ねている。
もし、本体のソルトが目撃したら浮気をされたと思われないか心配なのだが、私を選んでくれている方のソルトは、私に甘えてきてすごくかわいいので、どうしてもいうことをきいてしまう。
もしかしたら、本体に戻った時、分身との出来事は、夢の中のこととして処理されているのかもしれない。
不思議なことに、分身のソルトは、私とデートするためにオシャレをして現れる。
本体はこんなに無頓着なのに。
私のために、おしゃれをしてくれる気持ちが、ソルトの中に少しでもあるのだと思うと嬉しくなる。
しかし、きっと。
それは団長の方に現れているソルトも同じなのだろう。
「ミリー診療所についたぞ。」
団長の声がして、馬車が止まった。
市井に出るので、目立ってはいけない。
私も久しぶりに、ぐるぐる眼鏡のアニーさん。
団長も、普通に町の御者の格好をしてカモフラージュしている。
「ありがとうございます。」
「やあやあ、よくおいでくださいました。」
中から、さえない風貌の地味な男が現れた。
黒い髪、小柄な体。しかし、疲労を感じさせる隈のある目の、その瞳の色は、ハッとするほどきれいな金色だった。
カモミール団長が運転する馬車で、診療所に向かっている。
アニス様も一緒。
「ふんふんふーん。」
「ご機嫌だね、ソルト。」
「うん、最近、ぐっすり眠れるの。悪い夢を見ていたのか、ずっと魘されてたみたいで。」
「そっか…。それはよかった。」
あれから、毎夜のように、分身のソルトとデートを重ねている。
もし、本体のソルトが目撃したら浮気をされたと思われないか心配なのだが、私を選んでくれている方のソルトは、私に甘えてきてすごくかわいいので、どうしてもいうことをきいてしまう。
もしかしたら、本体に戻った時、分身との出来事は、夢の中のこととして処理されているのかもしれない。
不思議なことに、分身のソルトは、私とデートするためにオシャレをして現れる。
本体はこんなに無頓着なのに。
私のために、おしゃれをしてくれる気持ちが、ソルトの中に少しでもあるのだと思うと嬉しくなる。
しかし、きっと。
それは団長の方に現れているソルトも同じなのだろう。
「ミリー診療所についたぞ。」
団長の声がして、馬車が止まった。
市井に出るので、目立ってはいけない。
私も久しぶりに、ぐるぐる眼鏡のアニーさん。
団長も、普通に町の御者の格好をしてカモフラージュしている。
「ありがとうございます。」
「やあやあ、よくおいでくださいました。」
中から、さえない風貌の地味な男が現れた。
黒い髪、小柄な体。しかし、疲労を感じさせる隈のある目の、その瞳の色は、ハッとするほどきれいな金色だった。
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