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仮面の王
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ブルック将軍は、地図を見て、一人考えていた。
シン王はどこから攻めてくるつもりだろう。
不謹慎だが、楽しみだ。
この国は南を海に、西を森に、東を砂漠に、北を深い渓谷と険しい山に囲まれている。
城に近いのは北だが、獣人ならまだしも、あの渓谷を人が越えられるとは思えない。
南は目立つ。
砂漠も隠れる場所がない。
「西、かな…?」
「ブルック将軍!! 現れました。数は5千、西の森です!」
ふふ、やはり。
「準備しろ! 総出で迎え討つ!」
「奴らは鼻が利く。まずは鼻を潰せ!」
森の中ではエン将軍の指揮の下、様々な香料やスパイスが大量に撒き散らされていた。
嗅覚の優れた彼らには辛いはずだ。
そしてこれなら、森に潜むこちらを探すのも難しいはず。
「グッ! なんだ、これはっ!」
「鼻が!」
お出ましの敵兵が右往左往している間に、四方八方から銃撃する。
身体能力が勝る彼らと、真っ向勝負は愚策。遠距離から数を減らす。
「ブルック将軍!! 我らが押し込まれています!敵は遠方から攻撃を。四方八方、相手の位置が特定できません!」
「ほう、面白い。」
鼻は利かない。だが、俺は他の奴らのように、能力だよりではない。
だからこそ、この若さで将軍となった。
考えろ、奴らから俺たちは見えている。
そしてその指揮官は更に全てが見えているはずだ。
指揮官の位置は―――――。
そ こ か
赤毛の若い男。
一直線に突き進み、剣を振り下ろす。
「お前がシン王かァ!!」
ガシャン!
金属音が響き、剣で受けとめた。
なかなかやる。
「フフッ。」
「何がおかしい?!」
「俺は将軍だ。シン王ではないわ。王はここにはおられない。」
「なっ……。」
「グルル……」
王の玉座では、薄汚く肥え太った老いた狼が、威嚇の唸り声をあげた。
腕や足には銃弾の穴が空き、血塗れで動けない。
彼を守っていたはずの少数精鋭の近衛兵は、全て玉座の下や廊下に倒れて、事切れている。
「ば、馬鹿なっ! ……何処から!」
眼前の、仮面をつけた男を睨みつける。
「俺はシン。シン=ガイ王。お久しゅう。我が国、我が民を返してもらう。」
発砲とともに、シルバーウルフの王は死んだ。
彼の子孫、王族貴族に酷いことはしない。
倒したのは、必要最小限。
西の森に戦力を誘導し、北の渓谷伝いに精鋭で攻め入った。城中に香料入りの煙幕弾を投げ入れ、あとはご覧のとおり。
ブルック将軍。読み合いは俺の勝ちだ。
城に、申の旗がはためく。
シン王はどこから攻めてくるつもりだろう。
不謹慎だが、楽しみだ。
この国は南を海に、西を森に、東を砂漠に、北を深い渓谷と険しい山に囲まれている。
城に近いのは北だが、獣人ならまだしも、あの渓谷を人が越えられるとは思えない。
南は目立つ。
砂漠も隠れる場所がない。
「西、かな…?」
「ブルック将軍!! 現れました。数は5千、西の森です!」
ふふ、やはり。
「準備しろ! 総出で迎え討つ!」
「奴らは鼻が利く。まずは鼻を潰せ!」
森の中ではエン将軍の指揮の下、様々な香料やスパイスが大量に撒き散らされていた。
嗅覚の優れた彼らには辛いはずだ。
そしてこれなら、森に潜むこちらを探すのも難しいはず。
「グッ! なんだ、これはっ!」
「鼻が!」
お出ましの敵兵が右往左往している間に、四方八方から銃撃する。
身体能力が勝る彼らと、真っ向勝負は愚策。遠距離から数を減らす。
「ブルック将軍!! 我らが押し込まれています!敵は遠方から攻撃を。四方八方、相手の位置が特定できません!」
「ほう、面白い。」
鼻は利かない。だが、俺は他の奴らのように、能力だよりではない。
だからこそ、この若さで将軍となった。
考えろ、奴らから俺たちは見えている。
そしてその指揮官は更に全てが見えているはずだ。
指揮官の位置は―――――。
そ こ か
赤毛の若い男。
一直線に突き進み、剣を振り下ろす。
「お前がシン王かァ!!」
ガシャン!
金属音が響き、剣で受けとめた。
なかなかやる。
「フフッ。」
「何がおかしい?!」
「俺は将軍だ。シン王ではないわ。王はここにはおられない。」
「なっ……。」
「グルル……」
王の玉座では、薄汚く肥え太った老いた狼が、威嚇の唸り声をあげた。
腕や足には銃弾の穴が空き、血塗れで動けない。
彼を守っていたはずの少数精鋭の近衛兵は、全て玉座の下や廊下に倒れて、事切れている。
「ば、馬鹿なっ! ……何処から!」
眼前の、仮面をつけた男を睨みつける。
「俺はシン。シン=ガイ王。お久しゅう。我が国、我が民を返してもらう。」
発砲とともに、シルバーウルフの王は死んだ。
彼の子孫、王族貴族に酷いことはしない。
倒したのは、必要最小限。
西の森に戦力を誘導し、北の渓谷伝いに精鋭で攻め入った。城中に香料入りの煙幕弾を投げ入れ、あとはご覧のとおり。
ブルック将軍。読み合いは俺の勝ちだ。
城に、申の旗がはためく。
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