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マロンとイリス編

出来損ないの王子

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「イリス!待て!」

兄王子であるマロンは、イリスを追いかける。

「王子教育なんて、俺には難しいから嫌だよ!」

「イリス!」


期待されなくなった双子の弟。

母親似の美貌は色褪せ、太り気味の割に身軽に逃げる。

今日も逃げられ、マロンはため息をついた。



「お前が出来損ないだなんて、僕は思っていないよ………、イリス。」


マロンには分かっていた。

むしろ自分よりも、イリスの方が優秀だ。

自分に王位を渡したいが為、争いを起こさないように、わざとそう振る舞っている。


弟が悪し様に言われるのは嫌だ。

悪いことをしているわけではなし、父はどんな子でも愛してくれる。

けれど………。







「ふう、兄上はうるさいからなあ。」

やっと巻いて、イリスは城の屋根にいた。


「おい。」


低い声。


振り返れば、ホワイトブロンドのマルクがいた。

幼なじみで、かつての兄貴分。

辺境伯の長男で、次期辺境伯爵。



「マルク。放っておいてくれない、………かなあ!」

オーキッド叔母さまのところのセーラ仕込みの転移魔法を発動し、逃げようとして足首を捕まえられた。



「くっ!」


「お前さ、そんなに兄貴を立てないなら、こんなことするより、俺のとこへ来いよ。」

お前の気持ちも、立場も。
俺が救い出してやるよ。


イリス、俺の嫁にこい。
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