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お馬鹿なお妃さま
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「はぁ……。」
陛下は思いっきりため息をついた。
どうしてああなった。
いや、親の育て方が悪いからああなったんだ。
「仕方ないですね、お母様が甘やかしたせいですよ。本当に馬鹿な人なんですから。大国のお姫様が聞いて呆れます。お祖父さまお祖母さまが息災の頃はまだよかったですけどね。僕が6歳の頃に亡くなりましたからね。」
はい、と後ろに側近のアイリスを従えて大量の書類を私のところへドンと置く。
長男のアロンはこんなに立派な王子なのになぁ。
「だから言ったではないですか。大国の姫君だったとはいえ、言いにくい言いにくいではダメだと。先代が亡くなったのだから、貴方が妃を諫めるべきだったんですよ。」
アイリスやジャレッドの父である宰相が隣でとどめを刺した。
アロンやバジルの母であるダリアは、大国であるブロッサム帝国の王女で、かの国は今でも一番大切な同盟国であり、貿易相手でもある。
金髪碧眼の王女様は、私より一回り年下で、どう取り扱っていいか分からない幼な妻だった。
長男のアロンは私に似て、薄い茶色の髪に青と緑が混じったような瞳で、どちらかといえばややさっぱりした顔だったが、次男のバジルは全く向こうの王族の容姿をしていた。
丁度そのころ、ダリアに対して教育熱心だった私の両親が相次いで亡くなったこともあって、ダリアはバジルを猫っかわいがりするようになってしまったのだ…。
一方アロンは幼少のころから神童と言われ、非の打ち所がない立派な王子だったのだが、それは私の両親の教育のたまものが大きく、それも気に入らなかったのか、長男に対して妃は愛情を持てないようだった。
母の愛の代わりにと、私は私なりに長男に愛情をかけた。
しかし、それはそれで私が長男を贔屓していると責められる。
妃の中では、アロンは子どものくせに子どもらしくない、可愛げのない子どもだったのだ。
バジルが欲しいと言えば何でも買い与え、婚約者も我儘を言って手に入れさせた。
勉強が嫌だと言えば、時がきたら自然とできるようになるはずだから、無理する必要はないと。
「……本当にお前には苦労をかけてばかりですまない。私は不甲斐ない。王の資格などない。早くお前に譲りたいよ。」
「責任は取ってからにしてくださいね。お母さまとアレをなんとかするのはお父様の役目ですよ。それから、一度くらいは僕の我儘も聞いてもらいたいものです。」
「王太子位か?バジルが誰の眼で見てもダメってくらいやらかしてくれたから、堂々とお前に与えることができるぞ。」
心では決めていたが、妃がうるさいから王太子にしてやれていなかった。
「王太子位は当然だと思いますが…。我儘というのは婚約者のことですよ。」
アロンは、アイリスの腕を引いた。
「………おい?」
そして、自分の父親と宰相を交互に見る。
「兄弟で同じ家から婚約者をとるのはタブーですから、機がくるのを待っていました。ジャレッドは昔からバジルを嫌っていましたから。僕は、アイリスがよければアイリスと婚約したい。僕が王になったとき、正妃としてアイリスに隣にいてほしいのです。」
「……し、しかし殿下。アイリスはうちの後継者で…。」
「ジャレッド、がいるでしょう?彼も相当優秀。それに、すぐそばに、彼を心から愛する者がいるではないですか。丁度、釣り合う家系で三男の。」
アロンがにっこりとほほ笑む。
手を取られたアイリスはやられた、という顔をして頭を抱えた。
「お前、汚いぞ!陛下の前で外堀を埋めるなんて!」
「だってこうでもしないと、君は僕がどんなにアプローチしても気づいてくれないし。」
「公爵…?」
陛下が公爵の顔色を窺う。
「……………………アイリスの、気持ちに任せますよ。」
お父様、汚い!
アイリスの叫びがこだました。
陛下は思いっきりため息をついた。
どうしてああなった。
いや、親の育て方が悪いからああなったんだ。
「仕方ないですね、お母様が甘やかしたせいですよ。本当に馬鹿な人なんですから。大国のお姫様が聞いて呆れます。お祖父さまお祖母さまが息災の頃はまだよかったですけどね。僕が6歳の頃に亡くなりましたからね。」
はい、と後ろに側近のアイリスを従えて大量の書類を私のところへドンと置く。
長男のアロンはこんなに立派な王子なのになぁ。
「だから言ったではないですか。大国の姫君だったとはいえ、言いにくい言いにくいではダメだと。先代が亡くなったのだから、貴方が妃を諫めるべきだったんですよ。」
アイリスやジャレッドの父である宰相が隣でとどめを刺した。
アロンやバジルの母であるダリアは、大国であるブロッサム帝国の王女で、かの国は今でも一番大切な同盟国であり、貿易相手でもある。
金髪碧眼の王女様は、私より一回り年下で、どう取り扱っていいか分からない幼な妻だった。
長男のアロンは私に似て、薄い茶色の髪に青と緑が混じったような瞳で、どちらかといえばややさっぱりした顔だったが、次男のバジルは全く向こうの王族の容姿をしていた。
丁度そのころ、ダリアに対して教育熱心だった私の両親が相次いで亡くなったこともあって、ダリアはバジルを猫っかわいがりするようになってしまったのだ…。
一方アロンは幼少のころから神童と言われ、非の打ち所がない立派な王子だったのだが、それは私の両親の教育のたまものが大きく、それも気に入らなかったのか、長男に対して妃は愛情を持てないようだった。
母の愛の代わりにと、私は私なりに長男に愛情をかけた。
しかし、それはそれで私が長男を贔屓していると責められる。
妃の中では、アロンは子どものくせに子どもらしくない、可愛げのない子どもだったのだ。
バジルが欲しいと言えば何でも買い与え、婚約者も我儘を言って手に入れさせた。
勉強が嫌だと言えば、時がきたら自然とできるようになるはずだから、無理する必要はないと。
「……本当にお前には苦労をかけてばかりですまない。私は不甲斐ない。王の資格などない。早くお前に譲りたいよ。」
「責任は取ってからにしてくださいね。お母さまとアレをなんとかするのはお父様の役目ですよ。それから、一度くらいは僕の我儘も聞いてもらいたいものです。」
「王太子位か?バジルが誰の眼で見てもダメってくらいやらかしてくれたから、堂々とお前に与えることができるぞ。」
心では決めていたが、妃がうるさいから王太子にしてやれていなかった。
「王太子位は当然だと思いますが…。我儘というのは婚約者のことですよ。」
アロンは、アイリスの腕を引いた。
「………おい?」
そして、自分の父親と宰相を交互に見る。
「兄弟で同じ家から婚約者をとるのはタブーですから、機がくるのを待っていました。ジャレッドは昔からバジルを嫌っていましたから。僕は、アイリスがよければアイリスと婚約したい。僕が王になったとき、正妃としてアイリスに隣にいてほしいのです。」
「……し、しかし殿下。アイリスはうちの後継者で…。」
「ジャレッド、がいるでしょう?彼も相当優秀。それに、すぐそばに、彼を心から愛する者がいるではないですか。丁度、釣り合う家系で三男の。」
アロンがにっこりとほほ笑む。
手を取られたアイリスはやられた、という顔をして頭を抱えた。
「お前、汚いぞ!陛下の前で外堀を埋めるなんて!」
「だってこうでもしないと、君は僕がどんなにアプローチしても気づいてくれないし。」
「公爵…?」
陛下が公爵の顔色を窺う。
「……………………アイリスの、気持ちに任せますよ。」
お父様、汚い!
アイリスの叫びがこだました。
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