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満員の電車
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ガタンコトン。
この時間の電車は、逃げ場がない。
座席に座れれば痴漢に遭うことはないんだろうけど、家の近くの駅は始発でもないしすぐ手前に団地やマンションの立ち並ぶエリアがあるから絶対に座れない。
仕方なくドア付近で立っていたら、案の定誰かがお尻に触れてきた。
ちょっと触れるくらいなら、カバンや体が偶然当たることもあるから…。
そう思っていたら、撫でまわしてくる。
これ、本当に痴漢だわ。
背筋がぞわぞわしてきた。
氷魔という種族は、短命ゆえに種を繋ぐため、愛を請いやすいよう誰もが魅了されるような極めて美しい容姿をしている。
そして、確実に種を残せるように、『性別』が自由に変化し、どの形態でも子がなせるようになっている。
男の体でも、男にとっては雌だろう。
―――――――――とはいえ、ここで泣き寝入りするような俺ではない。
リュウ時代は、従軍し、将軍職まで行ったのだ。
相手の手首をつまみ上げようとした瞬間、情けない悲鳴が聞こえてきた。
「ふぎゃぴぃぃっ!」
「ああ、すみません。足を踏んでしまいました。」
聞き覚えのある声。
振り返ると、右眼に眼帯をつけた赤い髪の顔の右側に深い傷のある男が痴漢の腕をひねりあげている。
「アル…………!」
駅で降りて、なんか気まずい。
「アルファさん、偉い人じゃないの?なんで電車なんか。」
「君が心配だからに決まってる。今までとは違うんだから。なんならこれからうちの車で送迎させるけど。」
「やめてよ、高級車目立つじゃん。」
「私立だから、そういう子もいるだろう?」
「そりゃいるけど……。今までそういうキャラじゃなかったのに目立つ。」
「…………学校、たのしそうだもんな。」
「うん。前世は楽しめなかったから。友だちもたくさんいるし。」
「分かった。でも、俺は独占欲が強いんだ。分かっていると思うが君が欲しい。ライバルがいるようなら、蹴散らすからね?」
アルファさんとは学校の手前の目立たないところで別れた。
学校に行った俺は、珍獣のように他の生徒に囲まれるのだった。
この時間の電車は、逃げ場がない。
座席に座れれば痴漢に遭うことはないんだろうけど、家の近くの駅は始発でもないしすぐ手前に団地やマンションの立ち並ぶエリアがあるから絶対に座れない。
仕方なくドア付近で立っていたら、案の定誰かがお尻に触れてきた。
ちょっと触れるくらいなら、カバンや体が偶然当たることもあるから…。
そう思っていたら、撫でまわしてくる。
これ、本当に痴漢だわ。
背筋がぞわぞわしてきた。
氷魔という種族は、短命ゆえに種を繋ぐため、愛を請いやすいよう誰もが魅了されるような極めて美しい容姿をしている。
そして、確実に種を残せるように、『性別』が自由に変化し、どの形態でも子がなせるようになっている。
男の体でも、男にとっては雌だろう。
―――――――――とはいえ、ここで泣き寝入りするような俺ではない。
リュウ時代は、従軍し、将軍職まで行ったのだ。
相手の手首をつまみ上げようとした瞬間、情けない悲鳴が聞こえてきた。
「ふぎゃぴぃぃっ!」
「ああ、すみません。足を踏んでしまいました。」
聞き覚えのある声。
振り返ると、右眼に眼帯をつけた赤い髪の顔の右側に深い傷のある男が痴漢の腕をひねりあげている。
「アル…………!」
駅で降りて、なんか気まずい。
「アルファさん、偉い人じゃないの?なんで電車なんか。」
「君が心配だからに決まってる。今までとは違うんだから。なんならこれからうちの車で送迎させるけど。」
「やめてよ、高級車目立つじゃん。」
「私立だから、そういう子もいるだろう?」
「そりゃいるけど……。今までそういうキャラじゃなかったのに目立つ。」
「…………学校、たのしそうだもんな。」
「うん。前世は楽しめなかったから。友だちもたくさんいるし。」
「分かった。でも、俺は独占欲が強いんだ。分かっていると思うが君が欲しい。ライバルがいるようなら、蹴散らすからね?」
アルファさんとは学校の手前の目立たないところで別れた。
学校に行った俺は、珍獣のように他の生徒に囲まれるのだった。
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