69 / 87
オニキス3さい
しおりを挟む
「オニキス!オニキス!!」
城の中では、父親であるキールの声が響き渡る。
「キール、どうしたの?剣を教えていたのではなかったの?」
心配性な父親は、オニキスの姿が見えなくなると、ひどく狼狽した。
束縛する父親から自由になりたいのか、やんちゃなオニキスは親の目をかいくぐって逃げ出すようになっていた。
全ての精霊の加護と、太陽神の加護を持つオニキス。
規格外なのは分かるけれど、まだどんな力があるのかは分からない。
精霊は見えてはいるようだけど。
だけれど、こうして俺やキールを3歳にして煙に巻くことを考えると、なにか力を使っているような気がするのだ。
そして自由に行動するために、その力を俺たちに隠しているような、そんな気さえする。
「心配しなくても、いつも帰ってくるじゃない。大丈夫だよ。大丈夫…。」
「うう。あぁあああ…。」
俺は、うずくまるキールを抱きしめるのだ。
キールの妹姫が殺されたのは、キールが10歳の頃。
そしてその時、妹姫は3歳だった。
心配で心配でたまらなくなるキールの気持ちは凄くわかる。
トラウマなのだろうし、もしかしたらフラッシュバックしているのかもしれない。
キールによく似た顔のオニキスは、妹姫に似ているのかもしれない。
「大丈夫、俺がいるよ。息を吸って、吐いて。」
落ち着いたら一緒に探しに行こう。
「クロウ兄さん!あそびにきたよっ!」
転移魔法で神出鬼没。ケロッとした顔で魔物の国の城に遊びに来るカワイイ弟は、とんでもないやつだ。
「オニキス、おまえ。本当にアルフォンスたちに断ってきてるのか?」
「チャントイッテルヨ。」
絶対、嘘。
なんなら、自分の能力のことさえ親にも言ってないと思ってる。
「だってさあ、息が詰まっちゃうよ。ずーーーーっとユンスか、お父様が俺にべったりなんだよ?一人になる時間だって欲しいし。大体、王子だから剣を習わなきゃいけないなんて誰が決めたのさ!」
「俺も、アルフォンスたちに鍛えてもらったんだぞ。だからこうして、今、王様をやれてる。嫌いでも、できないよりできた方がいいぞ。王族は命を狙われることもあるらしいからな。」
「だいじょうぶだよぉ、魔法があるもーん。」
「魔法が効かない相手とかどうするんだよ。」
「ねね、それはそうとさあ。魔物の国もようやく人間の国と開国したじゃない?今度の帝国で開かれるパーティって、クロウも来るの?来てくれるんでしょ?」
「そうだなぁ、母さんも、仕事を手伝ってくれてる友達もやっとマナーを覚えたんだ。おいしいものがいっぱいあるから、連れてってあげたいな。なあ、アラクネ。お前も行くか?」
クロウの背後に控えている蜘蛛の魔物の青年が反応する。
蜘蛛の足が生えているだけで、執事服にモノクルをつけた、紳士然とした美形だ。
昔はちょっと気弱なところもあったらしいけど、青い髪を襟足のところで束ねて、今はクールでセクシーな感じ。
「いえ、誰かはこの城を守らないと。王城をもぬけの殻にしてどうするんですか。いくら治世が安定しているとはいえ…。」
蜘蛛の糸で罠をしかけて、侵入者を迎撃してるのらしい。
「俺が言いたいのはさあ、お姉さまが待ってるよ、ってこ・と!」
「あ。アリステラがっ!」
「文通は続いているんでしょ~?お姉さま、めっちゃくちゃ綺麗になったよぉ。もう19歳だもん、適齢期だし。このままどっかにお嫁に行っちゃうかも?」
だから、早く迎えに来たらいいよ。
お姉さまは養女だから、クロウお兄様のお嫁さんにお姉さまがなったら、本当の兄弟になれるじゃない。
「あーあー。俺も好きな人ほしいなぁ。」
「まだまだ早いと思う。そろそろ帰ったらどうだ?早く帰らないと、キールの心臓が止まるぞ。」
「はあい。」
しゅんっ。と、オニキスは突然消えて、家に戻った。
「ふう、やれやれ。」
「……アリステラ、さまですか。」
アラクネが呟く。
「ああ。」
知ってる。
前の魔王を倒した時、一緒に転移させられてきていた時の魔法を使う娘。
あの頃は体も薄くて、子どものような体だったけど、今は、きっと美しく成長されているのだろう。
胸がきゅんとなる。
私がこの方とお会いする前から、魔王様の心には彼女がいる。
私がどんなにお慕いしても、この恋は実ることはない。
あなたが彼女に笑いかける姿を見たくない。
だから、私はいつも、留守番をする。
城の中では、父親であるキールの声が響き渡る。
「キール、どうしたの?剣を教えていたのではなかったの?」
心配性な父親は、オニキスの姿が見えなくなると、ひどく狼狽した。
束縛する父親から自由になりたいのか、やんちゃなオニキスは親の目をかいくぐって逃げ出すようになっていた。
全ての精霊の加護と、太陽神の加護を持つオニキス。
規格外なのは分かるけれど、まだどんな力があるのかは分からない。
精霊は見えてはいるようだけど。
だけれど、こうして俺やキールを3歳にして煙に巻くことを考えると、なにか力を使っているような気がするのだ。
そして自由に行動するために、その力を俺たちに隠しているような、そんな気さえする。
「心配しなくても、いつも帰ってくるじゃない。大丈夫だよ。大丈夫…。」
「うう。あぁあああ…。」
俺は、うずくまるキールを抱きしめるのだ。
キールの妹姫が殺されたのは、キールが10歳の頃。
そしてその時、妹姫は3歳だった。
心配で心配でたまらなくなるキールの気持ちは凄くわかる。
トラウマなのだろうし、もしかしたらフラッシュバックしているのかもしれない。
キールによく似た顔のオニキスは、妹姫に似ているのかもしれない。
「大丈夫、俺がいるよ。息を吸って、吐いて。」
落ち着いたら一緒に探しに行こう。
「クロウ兄さん!あそびにきたよっ!」
転移魔法で神出鬼没。ケロッとした顔で魔物の国の城に遊びに来るカワイイ弟は、とんでもないやつだ。
「オニキス、おまえ。本当にアルフォンスたちに断ってきてるのか?」
「チャントイッテルヨ。」
絶対、嘘。
なんなら、自分の能力のことさえ親にも言ってないと思ってる。
「だってさあ、息が詰まっちゃうよ。ずーーーーっとユンスか、お父様が俺にべったりなんだよ?一人になる時間だって欲しいし。大体、王子だから剣を習わなきゃいけないなんて誰が決めたのさ!」
「俺も、アルフォンスたちに鍛えてもらったんだぞ。だからこうして、今、王様をやれてる。嫌いでも、できないよりできた方がいいぞ。王族は命を狙われることもあるらしいからな。」
「だいじょうぶだよぉ、魔法があるもーん。」
「魔法が効かない相手とかどうするんだよ。」
「ねね、それはそうとさあ。魔物の国もようやく人間の国と開国したじゃない?今度の帝国で開かれるパーティって、クロウも来るの?来てくれるんでしょ?」
「そうだなぁ、母さんも、仕事を手伝ってくれてる友達もやっとマナーを覚えたんだ。おいしいものがいっぱいあるから、連れてってあげたいな。なあ、アラクネ。お前も行くか?」
クロウの背後に控えている蜘蛛の魔物の青年が反応する。
蜘蛛の足が生えているだけで、執事服にモノクルをつけた、紳士然とした美形だ。
昔はちょっと気弱なところもあったらしいけど、青い髪を襟足のところで束ねて、今はクールでセクシーな感じ。
「いえ、誰かはこの城を守らないと。王城をもぬけの殻にしてどうするんですか。いくら治世が安定しているとはいえ…。」
蜘蛛の糸で罠をしかけて、侵入者を迎撃してるのらしい。
「俺が言いたいのはさあ、お姉さまが待ってるよ、ってこ・と!」
「あ。アリステラがっ!」
「文通は続いているんでしょ~?お姉さま、めっちゃくちゃ綺麗になったよぉ。もう19歳だもん、適齢期だし。このままどっかにお嫁に行っちゃうかも?」
だから、早く迎えに来たらいいよ。
お姉さまは養女だから、クロウお兄様のお嫁さんにお姉さまがなったら、本当の兄弟になれるじゃない。
「あーあー。俺も好きな人ほしいなぁ。」
「まだまだ早いと思う。そろそろ帰ったらどうだ?早く帰らないと、キールの心臓が止まるぞ。」
「はあい。」
しゅんっ。と、オニキスは突然消えて、家に戻った。
「ふう、やれやれ。」
「……アリステラ、さまですか。」
アラクネが呟く。
「ああ。」
知ってる。
前の魔王を倒した時、一緒に転移させられてきていた時の魔法を使う娘。
あの頃は体も薄くて、子どものような体だったけど、今は、きっと美しく成長されているのだろう。
胸がきゅんとなる。
私がこの方とお会いする前から、魔王様の心には彼女がいる。
私がどんなにお慕いしても、この恋は実ることはない。
あなたが彼女に笑いかける姿を見たくない。
だから、私はいつも、留守番をする。
2
お気に入りに追加
1,586
あなたにおすすめの小説
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました
くるむ
BL
芹沢真紀(せりざわまさき)は、大の読書好き(ただし読むのはBLのみ)。
特にお気に入りなのは、『男なのに彼氏が出来ました』だ。
毎日毎日それを舐めるように読み、そして必ず寝る前には自分もその小説の中に入り込み妄想を繰り広げるのが日課だった。
そんなある日、朝目覚めたら世界は一変していて……。
無自覚な腐男子が、小説内一番のイケてる男子に溺愛されるお話し♡
転生するにしても、これは無いだろ! ~死ぬ間際に読んでいた小説の悪役に転生しましたが、自分を殺すはずの最強主人公が逃がしてくれません~
槿 資紀
BL
駅のホームでネット小説を読んでいたところ、不慮の事故で電車に撥ねられ、死んでしまった平凡な男子高校生。しかし、二度と目覚めるはずのなかった彼は、死ぬ直前まで読んでいた小説に登場する悪役として再び目覚める。このままでは、自分のことを憎む最強主人公に殺されてしまうため、何とか逃げ出そうとするのだが、当の最強主人公の態度は、小説とはどこか違って――――。
最強スパダリ主人公×薄幸悪役転生者
R‐18展開は今のところ予定しておりません。ご了承ください。
虐げられた王の生まれ変わりと白銀の騎士
ありま氷炎
BL
十四年前、国王アルローはその死に際に、「私を探せ」と言い残す。
国一丸となり、王の生まれ変わりを探すが見つからず、月日は過ぎていく。
王アルローの子の治世は穏やかで、人々はアルローの生まれ変わりを探す事を諦めようとしていた。
そんな中、アルローの生まれ変わりが異世界にいることがわかる。多くの者たちが止める中、騎士団長のタリダスが異世界の扉を潜る。
そこで彼は、アルローの生まれ変わりの少年を見つける。両親に疎まれ、性的虐待すら受けている少年を助け、強引に連れ戻すタリダス。
彼は王の生まれ変わりである少年ユウタに忠誠を誓う。しかし王宮では「王」の帰還に好意的なものは少なかった。
心の傷を癒しながら、ユウタは自身の前世に向き合う。
アルローが残した「私を探せ」の意味はなんだったか。
王宮の陰謀、そして襲い掛かる別の危機。
少年は戸惑いながらも自分の道を見つけていく。
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
召喚聖女が十歳だったので、古株の男聖女はまだ陛下の閨に呼ばれるようです
月歌(ツキウタ)
BL
十代半ばで異世界に聖女召喚されたセツ(♂)。聖女として陛下の閨の相手を務めながら、信頼を得て親友の立場を得たセツ。三十代になり寝所に呼ばれることも減ったセツは、自由気ままに異世界ライフを堪能していた。
なのだけれど、陛下は新たに聖女召喚を行ったらしい。もしかして、俺って陛下に捨てられるのかな?
★表紙絵はAIピカソで作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる