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芽吹き
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無詠唱はイメージ。
大気を集めて圧力で自分とキースの前に防御壁を作る。と、同時に真空派でドラゴンを刻む。
『グワァアアァァァアアアアア!!!』
ドラゴンが口から紫の毒を吐くので、落ちる前に解毒した。
毒は浄化できたものの、ドラゴンから落ちる唾液が、ぽたぽたと枯れた大地に落ちて消化の煙を上げる。
「う…。あううううううっ。」
「キール!?」
突然、キールが唸り声をあげる。
キールの体はがくんと力が抜け、体に枯れた神樹の枝がのびて絡みつき、キールの命を取り込もうとしているかのように見えた。
「だめ・・・・・・・!!!キール、だめっ!あきらめないで!自分で自分をあきらめないで!」
ユンスが言っていた。キールは、見た目も性格もお母さまにそっくりなんだって。
自分で最善と思ったら、自分自身さえ切り捨ててしまう。
キールに今何が起きているかは分からないけど、人をすぐにあきらめてしまうキールは、きっと、自分の命もすぐにあきらめてしまう。
「一緒に愛を育てるんでしょ!!」
カースドラゴンの猛攻を防ぎながら、キールに語り掛ける。
本当はこの骨の化け物は炎で焼いてしまった方がいいんだけど、ここは森だから。
それに、森が少しでも燃えてしまったら、再生しようとしている神樹に影響があったら困る。
「帰ってきて、キール。赤ちゃんを一緒に育てよう。」
そのとき、背後から淡い光を感じた。
「お…。おお……。」
精霊王は、涙を流した。
全く違う個体だから性格も嗜好も違うけど、あの生命の樹の精霊王の過ちやスプリーム王子を想う愛は、彼にも引き継がれている。
愛する彼に相応しくない、そう思う気持ち。
だから、あの樹がもし再生できれば。
追放が解ければーーーーーーー。
目の前で淡く青く光るキールという彼の子孫と、枯れた神樹。
枯れた幹に若葉が芽吹き、緑が広がる様に上へ伸びて葉を繁らせる。
そして、樹から周りへ広がるように、枯れた大地が緑に覆われていく。
緑からは、花が咲き、辺りが清浄になっていく。
『ギャアアアア!!!!!』
葉から落ちた光に、カースドラゴンが苦しみ、溶けていく。
「アルフォンス。俺はやったぞ。少しは、お前に相応しい男になれただろうか。この子に誇れる父親になれただろうか。」
「キールっ!!」
立ち上がろうとして、倒れ込むキールを支える。
「ありがとう。キール。」
ただ、ぎゅうっと抱きしめる。
「よくやり遂げたな。おめでとう。先祖の追放はこれで解けた。」
精霊王はずっと泣いている。
「これで、結婚を認めていただけるのですね。」
「もちろんだとも。そして、その樹は今を持って君の樹になった。君は人間であり、帝国の王であると同時に、生命の樹の精霊である。」
「俺が精霊ですか。」
「精霊といっても、君の場合特に今までと変わらないよ。」
精霊王は笑うと、手を叩いた。
あたりから多くの精霊が現れる。
おめでとう。
おめでとう。
お母様は、精霊王の隣で号泣していた。
さあ、結婚式!
ユンスが心配しているから、早く帰ろう。
大気を集めて圧力で自分とキースの前に防御壁を作る。と、同時に真空派でドラゴンを刻む。
『グワァアアァァァアアアアア!!!』
ドラゴンが口から紫の毒を吐くので、落ちる前に解毒した。
毒は浄化できたものの、ドラゴンから落ちる唾液が、ぽたぽたと枯れた大地に落ちて消化の煙を上げる。
「う…。あううううううっ。」
「キール!?」
突然、キールが唸り声をあげる。
キールの体はがくんと力が抜け、体に枯れた神樹の枝がのびて絡みつき、キールの命を取り込もうとしているかのように見えた。
「だめ・・・・・・・!!!キール、だめっ!あきらめないで!自分で自分をあきらめないで!」
ユンスが言っていた。キールは、見た目も性格もお母さまにそっくりなんだって。
自分で最善と思ったら、自分自身さえ切り捨ててしまう。
キールに今何が起きているかは分からないけど、人をすぐにあきらめてしまうキールは、きっと、自分の命もすぐにあきらめてしまう。
「一緒に愛を育てるんでしょ!!」
カースドラゴンの猛攻を防ぎながら、キールに語り掛ける。
本当はこの骨の化け物は炎で焼いてしまった方がいいんだけど、ここは森だから。
それに、森が少しでも燃えてしまったら、再生しようとしている神樹に影響があったら困る。
「帰ってきて、キール。赤ちゃんを一緒に育てよう。」
そのとき、背後から淡い光を感じた。
「お…。おお……。」
精霊王は、涙を流した。
全く違う個体だから性格も嗜好も違うけど、あの生命の樹の精霊王の過ちやスプリーム王子を想う愛は、彼にも引き継がれている。
愛する彼に相応しくない、そう思う気持ち。
だから、あの樹がもし再生できれば。
追放が解ければーーーーーーー。
目の前で淡く青く光るキールという彼の子孫と、枯れた神樹。
枯れた幹に若葉が芽吹き、緑が広がる様に上へ伸びて葉を繁らせる。
そして、樹から周りへ広がるように、枯れた大地が緑に覆われていく。
緑からは、花が咲き、辺りが清浄になっていく。
『ギャアアアア!!!!!』
葉から落ちた光に、カースドラゴンが苦しみ、溶けていく。
「アルフォンス。俺はやったぞ。少しは、お前に相応しい男になれただろうか。この子に誇れる父親になれただろうか。」
「キールっ!!」
立ち上がろうとして、倒れ込むキールを支える。
「ありがとう。キール。」
ただ、ぎゅうっと抱きしめる。
「よくやり遂げたな。おめでとう。先祖の追放はこれで解けた。」
精霊王はずっと泣いている。
「これで、結婚を認めていただけるのですね。」
「もちろんだとも。そして、その樹は今を持って君の樹になった。君は人間であり、帝国の王であると同時に、生命の樹の精霊である。」
「俺が精霊ですか。」
「精霊といっても、君の場合特に今までと変わらないよ。」
精霊王は笑うと、手を叩いた。
あたりから多くの精霊が現れる。
おめでとう。
おめでとう。
お母様は、精霊王の隣で号泣していた。
さあ、結婚式!
ユンスが心配しているから、早く帰ろう。
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