12 / 87
残酷王の溺愛
しおりを挟む
馬と船を乗り継いで、向こう岸のクリスタル帝国についた。
大型の高速船が出ているので、船へは馬車や馬ごと乗り込める。
数時間で、帝国にはつく。
俺は、気持ちの整理がつかずにいた。
プルミエたちが当たりをつけていたくらいだ。
キールももちろん、俺が冒険者ギルドに出入りしていることは当たりをつけていた。
見張りの者からの連絡を受け、すぐに追いかけたらしい。
助けてくれて、嬉しいけど。
二人は死んでしまった。
キールが駆る馬に一緒に乗って、城に向かう。
背中にキールを感じる。
その暖かさが心強くもあり、その存在が怖い。
わかってはいるんだ。
俺は甘い。
彼らは、どこまでも俺を恨んで。
どこまでも俺を追いかけてきただろう。
そしていつか、殺されたかもしれない。
だから、あそこでああすることが最善だったことは。
「ついたよ。」
エスコートされて降りると、白の石でできた美しい宮殿。
「おかえりなさい!アリア!!」
精霊姿のお母様が飛んでくる。
「ただいま。お母様。」
お母様は元気そうだ。
「アリアは元気ないわねえ。まずは休むといいわ! 部屋へ案内してあげる!」
お母様に連れて行かれたそこは、王の部屋とコネクトルームになった王妃の部屋。
高い天井。シャンデリア。広い部屋には金糸で縁取られた赤でカーテンや絨毯が統一され、素敵な調度品もある。
ラベンダーの香りのする香も焚かれていた。
でも、落ち着かない。
「う、ふうっ。」
一人になった部屋で泣いた。
「アリア妃。夕餉の時間ですが、いかがいたしますか?」
キールが俺につけてくれた侍従は、キールの乳兄弟で幼なじみらしい。
俺は男だから、侍女じゃなくて助かった。
「ユンス。ありがとう。でもごめん、食欲がないんだ。一人にさせて。」
「……分かりました。軽いものをなにかお持ちしますから、気が向いたら少し腹に入れてください。体を壊します。」
「ありがとう。」
早めに部屋にある風呂に入り、ユンスが持ってきてくれた果物と果実水を口にして休んだ。
目を閉じると、二人の最期が焼き付いて、寝られず、涙がこぼれた。
嫌な思い出しかない、嫌いな従兄弟だったけど、悲しかった。
自分が本当の姿を明かして王位を取り返していたら、ああならなかったんじゃないか。
結局、自分がよかれとした行動が、ああいう結果を産んだのではないか。
夜になると、キールが部屋に来た。
寝たふりをする俺を起こさず、後ろから優しく抱き締めて。
何もしないで、二人で眠った。
大型の高速船が出ているので、船へは馬車や馬ごと乗り込める。
数時間で、帝国にはつく。
俺は、気持ちの整理がつかずにいた。
プルミエたちが当たりをつけていたくらいだ。
キールももちろん、俺が冒険者ギルドに出入りしていることは当たりをつけていた。
見張りの者からの連絡を受け、すぐに追いかけたらしい。
助けてくれて、嬉しいけど。
二人は死んでしまった。
キールが駆る馬に一緒に乗って、城に向かう。
背中にキールを感じる。
その暖かさが心強くもあり、その存在が怖い。
わかってはいるんだ。
俺は甘い。
彼らは、どこまでも俺を恨んで。
どこまでも俺を追いかけてきただろう。
そしていつか、殺されたかもしれない。
だから、あそこでああすることが最善だったことは。
「ついたよ。」
エスコートされて降りると、白の石でできた美しい宮殿。
「おかえりなさい!アリア!!」
精霊姿のお母様が飛んでくる。
「ただいま。お母様。」
お母様は元気そうだ。
「アリアは元気ないわねえ。まずは休むといいわ! 部屋へ案内してあげる!」
お母様に連れて行かれたそこは、王の部屋とコネクトルームになった王妃の部屋。
高い天井。シャンデリア。広い部屋には金糸で縁取られた赤でカーテンや絨毯が統一され、素敵な調度品もある。
ラベンダーの香りのする香も焚かれていた。
でも、落ち着かない。
「う、ふうっ。」
一人になった部屋で泣いた。
「アリア妃。夕餉の時間ですが、いかがいたしますか?」
キールが俺につけてくれた侍従は、キールの乳兄弟で幼なじみらしい。
俺は男だから、侍女じゃなくて助かった。
「ユンス。ありがとう。でもごめん、食欲がないんだ。一人にさせて。」
「……分かりました。軽いものをなにかお持ちしますから、気が向いたら少し腹に入れてください。体を壊します。」
「ありがとう。」
早めに部屋にある風呂に入り、ユンスが持ってきてくれた果物と果実水を口にして休んだ。
目を閉じると、二人の最期が焼き付いて、寝られず、涙がこぼれた。
嫌な思い出しかない、嫌いな従兄弟だったけど、悲しかった。
自分が本当の姿を明かして王位を取り返していたら、ああならなかったんじゃないか。
結局、自分がよかれとした行動が、ああいう結果を産んだのではないか。
夜になると、キールが部屋に来た。
寝たふりをする俺を起こさず、後ろから優しく抱き締めて。
何もしないで、二人で眠った。
1
お気に入りに追加
1,571
あなたにおすすめの小説
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
【R18】らぶえっち短編集
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)
R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。
※R18に※
※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。
※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。
※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。
※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。
巨人族に嫁入り【完結】
米派
BL
両国間の和平のために、巨人族の王と結婚することになった小人族のクルト。ただ体格に差がありすぎて、なかなか本番にまで辿り着けない。不器用な二人が、あれこれしながら初夜を成功させようとしつつ距離を縮めていくお話。
魅了魔法に掛かっていた私は被害者だと元婚約者が復縁を求めてきますが、貴方が魅了魔法に掛かっていた事はみんな知っていましたよ?
庚寅
恋愛
この作品は更新を終了することに致しました。
ここまでのご愛読ありがとうございましたm(_ _)m
✱話の展開速度等が気になる方は、完結表示が付いてから読まれる事をお勧め致します。
「リリーシア嬢!私は貴方との婚約をこの場を以て破棄する!」
ババーン!とでも効果音の付きそうな程に大袈裟な身振りで、彼の人は宣言した。
「婚約破棄、ですか。その意味を理解した上でのお言葉ですか?
セリアージュ殿下」
「もちろんだ!
国の第一王子である私の婚約者という立場に在りながら、妃教育を受けることも無く茶会ばかり催しているような者は私の婚約者には相応しくない!
そんな王子妃の資質の欠片もないような貴方との婚約は今この時を以て破棄だ!
私はこの、ミリアと婚約する!」
そうですか、宜しいのですね。
それではわたくしは自分の国へと帰らせて頂きます。
自国のただの貴族令嬢との婚約など破棄しても問題ないと公衆の面前で婚約破棄を言い渡した王子と、婚約破棄を言い渡された他国の姫君のお話。
タイトル通り
ざまぁするのが中心のお話し。
思いの外説明に文字数を使いそうなので、ショートショートから短編へと表記変更させて頂きました。
✱✱✱✱✱✱✱✱
ここまでの読者様が読んでくださるとは思わず、流行りに乗っかり気楽にたまに更新位の気持ちで書き始めたので、更新が不定期ですみません。
昨夜HOTランキング2位にいるのを発見し、思わず震えてしまいました…。
感想や誤字報告、ご指摘などありがとうございます。
近況の方は別作品の小噺等で活用しているので、ここで挨拶をさせて頂きます。
感想にはネタバレも含まれる事があるので一律お返事は控えさせて頂きますが、応援とても嬉しいです。ありがとうございます。
指摘や誤字報告にのみの返事になるのが申し訳無いのですが、全て目を通し、反映させて頂いております。
稚拙な文でご不快に思われる方もいるかと思いますが、モチベーションのやりくりをしながら完結まで書きたいと思っておりますので、引き続きご覧頂ければ幸いです。
読んでくださる皆様に心からの感謝を。
【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで
あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。
連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。
ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。
IF(7話)は本編からの派生。
神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。
篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
前話
【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる