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無双

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「許せない!その人を私にちょうだい!ちょうだいよ!あんたなんか不幸になればいいんだ!どんな時も愛されて、幸せそうで、私が欲しいものは全部あんたが持ってる!」

髪を掻きむしり、振り乱して、マルティナが叫ぶ。



僕にはさっぱり分からない。


「何で人を羨むの?貴方は貴方の幸せがあるだろうに。君はちょっと怖い人だけど、美人だし、頭だって悪いわけじゃないでしよ。充分持ってるじゃないか!誰にだって幸せになれる道筋はあるんだ。ひとのものを欲しがって、世界に混沌をもたらして!君は聖女じゃない。だいたい僕は君に聖女の力をあたえていない!」

太っていてもやせていても、美人でも不美人でも。
障がいがあってもなくても。
貴族でも平民でも。
豊かでも貧しくても。
人にはそれぞれ幸せに生きる権利があり、幸せになる道筋がある。
他人の人生を羨んでばかりでは、自分の人生を見失うんだ。

だけど、彼女は――――。



僕は彼女を知らない!

僕の世界を壊してしまう異質な存在は、僕が排除しなければならない。


「今の自分の姿を見るといい。」

僕を抱くマークが魔法で彼女に向けて巨大な姿見を出す。


「ひっ…………!」

ぼさぼさの髪。血走った眼。

その顔は、印象は。
まだ若さがあるとはいえ、あの鳥籠の牢の者に似ている。

雰囲気は禍々しく、確かにその姿は『魔王』にしかみえない。

「いや、うそ、まさかっ!まさか…そうなの!?」








「ふーん、向こうもなかなかたいへんなことになっているみたいだね。」

ガイア様が世界を覗く。

「何故かアースが間違って転生した後に、あの者も産まれたようですが、あれはアースや私の管理から外れた存在。私の分身………身を削って分けたわけではないので、どちらかといえばアバターですが、彼からの情報によれば、それに似た存在で、正体は――――」

マーキュリーは冷ややかにマーズを見る。


「マーズ。」

「ひっ……!」


まずいまずいまずい!
いやだいやだいやだ!
マーキュリー、そんな目でボクを見ないで!

「ふむ。続けて?」

「解析したところ、アースが落ちて、私が管理を始めるまでの時間に第三者のハックがありました。遠隔でもウイルスでもなく、直接干渉した痕跡があり、そこにいた第三者はマーズしかいない。痕跡を調べたところ魔力も検出されました。そしてその魔力は、アースが落下した付近。撒かれた潤滑油からも。微弱な魔力でしたが。」

これが解析結果と抽出できた魔力ですと、ガイア様に渡す。
ガイアは1㎝程の小さな瓶に保存された魔力を眺めた。


「ぼ、ボク…………。しっ、しら」
マーズの頭の中は真っ白になる………。

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