貧乏伯爵の三男(勇者?)は潜伏魔王に嫁ぐ

竜鳴躍

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アザミ=ブラン

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アザミ=ブラン伯爵令嬢は、マーガレット=ブロン公爵令嬢が嫌いだった。

よくわからないが、王家は世代ごとにやたら婚約が遅い世代と普通に婚約者を決める世代がある。
遅い世代は、何かしらの王家の儀式の関係らしく、その場合は王子が生まれても発表はしない。

婚約発表と同時に王太子の発表と、王子達の公表がなされる。

それまでは、城に働く人間やごく一部の人間しか王子達を知らないが、魔法契約を結んで口外を防ぐ。


丁度、私たちの世代は「王子が隠されない世代」で、年頃になればすぐに婚約者が決まるのだと知っていた。
おそらくマーガレットは選ばれる。
でも、負けてなるものですか。


愛しの愛しのお兄様が囁いた。
「可愛いアザミ。必ずお父様とお兄様がアザミをプリンセスにしてあげるからね。」


流石に公爵令嬢に手は出せなかったけれど、お父様はライバルの令嬢のお家に経済的な圧力をかけて没落させた。
お兄さまはお友達と一緒に令嬢たちといたわ。



お相手になるあの人は、髪の色と目の色は鮮やかだけれど、どこかぼーっとして、自分の考えがないような、何を考えているか分からない人だった。

やっぱり素敵なのはお兄様…。

私の処女はあんな男にあげざるを得なかったけど、お家のため…、私の野望のためですもの。


お父様はあの男は国王に相応しくないって。
私とお兄様の子が王様になったらどんなにいいかしら。

フフ、馬鹿な男。





そう、思っていたのに…。





「トロンのためでもある。表向きにはしない。お前の実家は遠縁に継がせる。先代と今代の伯爵は病気、いずれ儚くなるだろう。そしてお前も…。」

宝石もドレスも思いのままだったのに、全て奪われて国庫に戻された。
お兄さまの妻は離縁し、たっぷりと財産を分けてもらい、子を連れて出ていった。
お母様は修道院へ行った。


私は王妃なのに!国母になる女なのに!女の頂点なのに!!


陛下だってマーガレットを抱いて子どもを産ませたじゃない!

私がお兄様と子どもを作って何が悪いのよ!




誰からも愛されて、学園でもちやほやされて。
城の中でも頼りにされて。
いつもみんなの中心で。
そんなあんたが疎ましかった。
私より綺麗な髪、美しい顔、私は全て負けていた。


悔しい。


私の心は黒でいっぱい。

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