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彼が消える日(後)
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すみません、予約投稿ミスしましたので一度下げました。
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「俺は今、何を!?」
「何があった!!?」
「え?え?」
「お母さん。あの銀色のお兄ちゃんが助けてくれたんだよ!」
「………え?」
正気を取り戻す人たち。
神葉樹の葉の香りが悪魔避けになったことで、もしかして……とあたりをつけたルシェルが開発した『浄化液』は効果てきめんだった。
「アクセルの奴で実証実験した甲斐があった。効果てきめんだな。各国に普及させよう。」
「お兄様、やりましたね!」
後は、安全に彼らを帰宅させねば…。
――――――――――そう、思って少し油断していた。
「ああぁあ!しまった!なんで俺はこんなことを!」
悲痛な男の叫び声。
男は、セットしたミサイルの発射ボタンを押してしまい、震えてへたりこんでいる。
「俺の結界だけど、ないよりは!」
「シュナイダー!」
ぱっと国民に結界を張り、シュナイダーは一瞬で駆ける。
そして、ミサイルが発射される前に―――――――――。
「シュナイダー!ルシェル!!」
大人しくなったモルヒネを蔦で何重にもグルグル巻きにして、ハピネスの転移で駆けつけると。
そこには傷ついた人たち。
半壊した建物。
「第二王子が……。」
「私たちを守って…。」
「オオバコのことを悪く言えない…。俺たちは、俺たちは…。」
嫌な予感がする。
国境沿いの検問がある手前の広場。だった、はず。
そこに、見覚えのある人がボロボロの服で座り込んでいる。
「ルシェル殿下!」
遠くから叫ぶと、涙にぬれた貌がこちらを向いた。
「……ごふっ。」
ルシェル殿下のそばには、真っ赤な――――――――
「やぁあああ!シュナイダー!!!!」
必死に回復をかける。
ハピネスお兄様も。
でも、でもっ。追いつかない。
大事な人に死が迫る。
「………すみ……せん。あいして…す。あみゅ…し、あわせに」
「やだ!死なないで!僕の命をあげるっ、だからっ」
その言葉はモルヒネに遮られた。
「僕が癒す。」
「………え」
憑き物がとれたモルヒネの顔は、よく見ればアミュレットに少し似ている。
ルシェルとシュナイダーが似ているように、双子だから、彼もアヴァロンと似ていた。
みるみる傷がふさがり、ちぎれかけた肉は再生して繋がり、シュナイダーの顔色がよくなっていく。
モルヒネの体から光が漏れる。
その光は、暖かい光。
やがて光は珠となり、傷ついた国民たちをも癒していく。
爆薬で穢れた空気が浄化されていく。
だけど、モルヒネの体が徐々に薄くなっていく。
「モルヒネ!?」
「………いいんだ、今まで僕がやったことの償いにもならないけど。」
そうか。『悪魔』になったモルヒネには、ここまでの癒しの力は本来、『ない』。
「もう、悪魔はいない。幸せに。お兄様の子孫が幸せに世を繋いでいけば、うれしい。人間は愚かだけど、反省もできるし、うまく治めていってよ。」
そうして、「彼」、モルヒネは世界から消えた。
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「俺は今、何を!?」
「何があった!!?」
「え?え?」
「お母さん。あの銀色のお兄ちゃんが助けてくれたんだよ!」
「………え?」
正気を取り戻す人たち。
神葉樹の葉の香りが悪魔避けになったことで、もしかして……とあたりをつけたルシェルが開発した『浄化液』は効果てきめんだった。
「アクセルの奴で実証実験した甲斐があった。効果てきめんだな。各国に普及させよう。」
「お兄様、やりましたね!」
後は、安全に彼らを帰宅させねば…。
――――――――――そう、思って少し油断していた。
「ああぁあ!しまった!なんで俺はこんなことを!」
悲痛な男の叫び声。
男は、セットしたミサイルの発射ボタンを押してしまい、震えてへたりこんでいる。
「俺の結界だけど、ないよりは!」
「シュナイダー!」
ぱっと国民に結界を張り、シュナイダーは一瞬で駆ける。
そして、ミサイルが発射される前に―――――――――。
「シュナイダー!ルシェル!!」
大人しくなったモルヒネを蔦で何重にもグルグル巻きにして、ハピネスの転移で駆けつけると。
そこには傷ついた人たち。
半壊した建物。
「第二王子が……。」
「私たちを守って…。」
「オオバコのことを悪く言えない…。俺たちは、俺たちは…。」
嫌な予感がする。
国境沿いの検問がある手前の広場。だった、はず。
そこに、見覚えのある人がボロボロの服で座り込んでいる。
「ルシェル殿下!」
遠くから叫ぶと、涙にぬれた貌がこちらを向いた。
「……ごふっ。」
ルシェル殿下のそばには、真っ赤な――――――――
「やぁあああ!シュナイダー!!!!」
必死に回復をかける。
ハピネスお兄様も。
でも、でもっ。追いつかない。
大事な人に死が迫る。
「………すみ……せん。あいして…す。あみゅ…し、あわせに」
「やだ!死なないで!僕の命をあげるっ、だからっ」
その言葉はモルヒネに遮られた。
「僕が癒す。」
「………え」
憑き物がとれたモルヒネの顔は、よく見ればアミュレットに少し似ている。
ルシェルとシュナイダーが似ているように、双子だから、彼もアヴァロンと似ていた。
みるみる傷がふさがり、ちぎれかけた肉は再生して繋がり、シュナイダーの顔色がよくなっていく。
モルヒネの体から光が漏れる。
その光は、暖かい光。
やがて光は珠となり、傷ついた国民たちをも癒していく。
爆薬で穢れた空気が浄化されていく。
だけど、モルヒネの体が徐々に薄くなっていく。
「モルヒネ!?」
「………いいんだ、今まで僕がやったことの償いにもならないけど。」
そうか。『悪魔』になったモルヒネには、ここまでの癒しの力は本来、『ない』。
「もう、悪魔はいない。幸せに。お兄様の子孫が幸せに世を繋いでいけば、うれしい。人間は愚かだけど、反省もできるし、うまく治めていってよ。」
そうして、「彼」、モルヒネは世界から消えた。
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