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逆行した世界線

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「……………キィ。シルキィ!」

懐かしい。


私を呼ぶ声。


私は死んだはずなのに。

私は。

私はその魂さえも消されたはず。



ただ、懐かしいその声の主の顔を見たくて、重い瞼を開けると、そこには大好きな銀色に輝く髪。

菫色の瞳。


ただ、その顔はまだ少年のあどけなさが残っている。




「大丈夫か?いきなり倒れたのだぞ。今医師を呼んでいる。」
蜂蜜色の髪に青い眼のジャスティ。

この頃はまだ、可愛らしい顔立ちだった。


「まだ動かないほうがいいね。じっとしてよ。」


ああ、これはまだ3人がただの幼馴染だった頃。



夢かしら。

覚めない夢であってほしい。


まだ、この頃は私はジャスティの婚約者候補ではあったかもしれないけれど、婚約は結んでいない。



「ねぇ、二人とも、将来のことって考えたことある?」


「将来?………立派な国王になろう、とは思っているが。」

「僕はジャスティを支えられたら。だって時々危なっかしいんだもの。泣き虫だし。」



「………あのね。私ね、大人になってもジャスティやオリーブと一緒にいたい。ダメかしら。」

「わかった!じゃあ今度からシルキィもトラウザーズを履いてこい!」


「何言ってるの、ジャスティ。シルキィはご令嬢だよ!?」

「だって一緒にいたいんだろ?だったら私たちと一緒に家庭教師から同じように習わなきゃ。そうだよ、シルキィ!一緒に剣術も学ぼう!」


「全くジャスティったら、シルキィがいれば先生が大目に見てくれるってあてにしてるでしょ!」


「ふふふ。分かったわ!私も一緒に受ける!意外と私が一番才能があるかもしれなくてよ?覚悟しなさい!」






ああ。こうすればよかったんだ。


楽しい。

楽しい。


大人になって、ジャスティはオリーブを妃に選んだ。

その隣で側近をするのは私。



女剣士もいいものね。

お父様が私のお転婆に困って縁談をとりつけてきた相手は、冤罪で追いやられた異国の元王子。

どことなく線の細い美形ぶりが、オリーブ様に似たところもあった。



初恋が綺麗に終われば、似た誰かを愛することもできるのね。



数年経って、生まれた。

また会えたミルキィ。



ごめんね。

今度は大切に育てるからね。





これはきっと、あったかもしれないどこかの世界線。




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