何者かになりたかった、だが王子の嫁になりたかったわけじゃない。

竜鳴躍

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最強の布陣

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「私は、そばにいたかった!あなたのそばに………!」

黒い靄が体を包み、周りの騎士たちの動きを腕の一振りで岩のように固め、ロザリーの体のシルキィはオリーブに手を伸ばす。
ジャスティはオリーブの体に防御魔法をかけ、オリーブは剣に手をかけた。


「そんなの勝手だよ!そんな理由でボクに殿下の妃になれって言っていたわけ!?」

甘ったるい声のミルキィの声が響き、影縛りの忍術でシルキィを止めた。

「ミルキィ!あなた、私の邪魔をするっていうの!」


「もうお母様なんて怖くないし!いい加減反省してよ!そばにいたかった?今のボクを見て分からない?どうすれば正解だったのか!」

「シルキィ=アクオス。私たちは今となってはもう、貴方を倒すしかないのよ。」
リリーがミルキィの右に立つ。

「聖女!」



「ミルキィの言うとおりだよ。」

フォールに抱きかかえられたジェニーも現れる。

「ジェニー!あなたまで!」

オリーブが驚き、ミルキィたちは肩をすくめた。

「ボクたちも止めたんだけどね。でも大丈夫でしょ?フォールが守るから。」



「もうやめましょう?こんなことをしても、三人の思い出が穢れ、繋がりが切れていくだけだと思いませんか?」


「煩い!そうだわ、腹の子に成り代わって――――」


「無駄よ!」
リリーがオリーブに浄化の結界を重ねる。

「ならば!」

今度はジェニーの腹を狙う。



だが。



「ダメです!」

「ひゃ!」


まるで聖女の体のように、パシンとジェニーとフォールにはたかれるだけで、シルキィは弾かれた。


「な、なんで………」


「なんでって言われても、ジェニーは規格外だから……。聖女でもあり、騎士でもあり、偉大な魔法使いでもあり、参謀でもある。私の唯一だ。」


「ジェニー、リリー。お母様をお願い。」


皆の想いを受け取って、ジェニーはリリーとともにロザリーごとシルキィを浄化して。


そして今度こそ。



シルキィ=アクオスはこの世界から消えた。







ぱちくりとロザリーがまばたきする。


「はっ!私、なんで侍女の格好なんか!いやあ、手が荒れてる!」

「ロザリー。貴方、嫁に行きたいなら頑張りなさいよ。貴方はお城の侍女として行儀見習いをしているのよ。」

「お城!私、お城で働いているの!」

「周りにはたくさん独身の素敵な殿方がいるじゃないの。私だって結婚出来たんだから、その性格が少しはマシになれば、きっとご縁があるわよ!」

「リリー!そうよねえ、貴方でさえ結婚出来たんだものね!あ、素敵な騎士様たち!婚約者とかいない独身の方いらっしゃいます?」



なんだか逞しい。

さっきまで殺伐としていたのに、どこかもの悲しさの中に柔らかい空気になった。


「信じてくれてありがとう。ジェニー。」

「当たり前でしょ………………っ!」


青い顔をして目を閉じる腕の中のジェニーに、フォールは右往左往する。

「お母様!もしかして!」

「早く寝かせて!宮廷医を呼んで!」




我が子に会えるまで、あと少し。
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