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不審者

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「………しまった!」

カブキはジョーの宿泊するホテルへ向かい、チェックアウトしている事実を知った。


夕べ、ハッキリと自分が王になるつもりはないから放っておいてほしいと告げたところだった。

飲み込めない様子だったのが気になって、再度訪問したが…。


ジパンクへの船の出航記録はなく、ジパンクの国旗のついた船だってまだ港に停留している。



―――――まさか。


ビューテ侯爵家へ、彼は向かう。







ジョー=ルリはビューテ侯爵家に来たものの、ミルキィと会えずに困っていた。
美しいミルキィの側には、常にミルクティー色の髪をした男がいる。

しかし、この家の住人はどこかおかしい。


「あなた、うちの関係者じゃないわね。どこから沸いたのかしら。うちの嫁(ミルキィ)を狙ってきたのでしょう!命が惜しかったら帰りなさい!なんで分かったかって?当り前よ。女主人たるもの、使用人はもちろん、出入りの業者、領民の一人ひとりに至るまで、顔と名前を知っているものよ!どれだけ変装しようが、不審者はすぐにわかりますわ!」

ぼーっとしているように見えた女が、先のとがったペンを持って、追いかけてくる。

早い!早すぎる!!嘘だろ!あんな走りにくそうな靴を履いているんだぞ!

忍者と遜色ないとか何事だよ!



なんとか撒いて、今度は茂みに隠れた。

矢が飛んできた。


「お前、不審者だな!残念だったな、私たちはどれだけ遠くにいても不審者は分かるのだ!野生で培われた視力と嗅覚と勘を舐めるな!」

ひぃ!


近づこうにも、弓が。槍が。飛んでくる!

ミルキィ様の声すら聞けない!



いったい何がどうなってるんだ~~!!





「今日も一日平和だなぁ。美味しいお茶、優しい家族、ボク、幸せ~。」

「うふふ、ミルキィちゃんはなーんにも心配しなくていいのよ~。」

「川へ遊びに行くときはみんなで行こう。」

「トニーはミルキィちゃんをしっかりエスコート(護衛)するんだぞ。」

「分かってるよ、大切な大切な俺の宝石なんだから。」


「きゃっ!うれしい!」

「俺は領地なんてないけど、一応爵位はもらえるんだ。贅沢はできないかもしれないけど、笑顔だけは守る、だから俺のお嫁さんになってください。」


「喜んで…。あ、あの。ボク、言ってないことがあって…。」


「なあに?」


「き、嫌いにならない?知ってしまって、距離をとって欲しくなかったの。」

「ミルキィのこと、嫌いになんかならないよ。」



あのね―――――――
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