暗殺者は王子に溺愛される

熟年カップル編

トロワの妊娠

離れでの新しい生活が始まり早３か月半。

季節は初夏になってきた。

アンは年若いが、立派に宰相として陛下の側で切り盛りしている。
若いアンの後ろ盾になるためにしばらく引継ぎ後も城にあがることにしていたが、この分なら私がいなくとも大丈夫だろう。


サンダルフォン商会で開発を進めていた国際電話の回線は完成し、あとは国と国を繋ぐだけとなっていたが、新しい技術は躊躇する者が多く、なかなか前へ進まなかった。

そんな中でも、ゾーン王国ではクリム殿下が相当根回しを尽くしたらしく、予定より早く回線を結べたのは幸いだろう。



「あっ、あぁっ！あぁんっ。」


離れの庭に作らせたプールに裸で入り、睦あう。


「恥ずかしいか？大丈夫だ、誰も見ていない。」


嘘だ。２階のカーテンの隙間から、遊びに来ているグレイ君とケイ君がドキドキしながらこちらを見ている。

男同士の性交を学ぶといい。

何も知らずにことを進めれば酷いことになるからな。特に男同士は。


昂りをシュヴァリエの中に収め、盛り上がっていたさなかに、国際電話のコールが鳴った。


「あぁ……っ。」

プールの端にしがみついて、絶え絶えに物足りなげな顔をする彼を放置して、いったん電話に出るためにバスローブを着て屋敷の中に入った。



『お父様、トロワです。』


久しぶりに聞く、末っ子の声。


トロワは15の時から声が変わっていない。
『産む』体の両性だったから、声変りをしなかった。


子どもは４人。

全員とも髪の色も気質も、顔立ちも殆ど自分に似たけれど、どこか少しずつ亡くなった妻に似ている。

一番似ているのは、トロワなのかもしれない。



そのトロワに、ついに子ができたという。


だが、この間ゾーンの王妃からの手紙で、ひと騒動があったことをきいている。

夫のクリム王太子とあまりうまくいっていないことも。


夫婦だから喧嘩をすることもあるだろう。

トロワの母親、レイナともよくケンカをした。

レイナも気が強く、そして、自分一人で何でもこなそうとして失敗することがあった。
いきちがいも多かったが、最終的にはすぐに仲直りをした。

意固地になる性格だから、コツがある。



「トロワ。今が大事な時だ。悪阻で食は細くなってないか？食が進まないなら食べられるものでいい。栄養を取って、よく寝て、適度に動いて、休め。リラックスするのが一番だ。こちらはアンは落ち着いているし、シュヴァリエが学園で臨時講師を始めたが、丁度来週から夏休みに入るから、二人でそちらへ行こう。お前の助けになりたいからな。」


私も兄弟もたくさんいる。

みんなで交代で、トロワの応援に行こう。



そして、クリム殿下には、ちょっとした指導とともに、夫婦上手くやっていくコツを教えてやろう。



夏休みの間はケイ君はこの離れで一人になるが。

まあ、大丈夫だろう。


婚約してるし、婚前交渉があっても、まあ。