【完結】囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。

結婚式の準備

ちくちく、一針心を込めて。

執務の合間に息子の結婚式の衣装を縫う父親のそばで、サンベリルはハンカチに刺繍をしていた。


「陛下、新しい書類です。」

「ん。」


ロイ陛下は手を止めて、新しい書類に取りかかる。

文官が処理済みの書類を運ぶ。


「不可のものは、要検討。いいか、優先順位は国防や防災、衛生福祉など国民の安全や健康に関するもの。次が安定的経済。経済発展がその次。最後が娯楽だ。年間の予算には限りがある。余計な計画は、それをするべきというプレゼンをもう少し頑張り給えと伝えろ。」

「他国への支援が多すぎるのでは？」


チラリと文官が僕を見た。

もっと益のある国へ嫁げばいいのに。
そう思われているのだ。


「はっ。他国への支援は、国力を内外に示すこと。富める国の義務。国際社会で力をつけることで、戦争回避にもなる。戦争になれば、どれだけの国民の命を失い、経済的損失になると思ってるんだ。いいか、政治は今だけ考えるんじゃないんだよ。何百年先を見据えるんだ。それに、フロース王国には可能性がある。そういった隣国を支援するのは悪いことではない。向こうで開発している冷凍庫や缶詰めの製造会社の本丸はうちにあるんだぞ？フロース王国への支援はうちの益につながっている。国防と経済発展、な。」

俺が説明するまでもなく、こういう風にお前が黙らせてくれねば困るのだが？

ロイに凄まれ、文官は消えた。



書類に一通り目を通し、仕分けした書類にスラスラと処理をしていく。


「お父様、ありがとうございます。」
涙でいっぱいになる。

「いいんだよ。幸せにおなり。」