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溺愛家族との合流

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牢屋に穴を開ける。ここは地下だ。まずは上に上がる必要がある。

使用人が少ないのが幸いし、ここには見張りはいない。

リロンデルは、サンベリルの手を引いていたが、息を切らしているのを見て抱えあげた。

片手がふさがってしまうが、なんとかしよう。



「ひゃっ!」

「しっかり捕まっていてくれ!」


「はいっ!」

小さな腕が首に回る。


「ありがとう、後ろは見えないから任せたよ。何か背後から来るようなら教えてくれ。」

「はい!任せてくださいっ!」


190を超える自分に対し、150しかない細身の彼は大人と子どもくらいの体格差がある。
童顔も相まって少年にしか見えないが、18歳だと言われて喜んだように、年相応に彼には彼の稔侍があり、ただ守られるのではなくちゃんとした役割を提示すると、気合いが入ったようだ。

男ならば、ただ姫のように扱われるのは不本意だよな。



「……っ!なんでっ!」

「リロンデル様が逃げた!サンベリル様も連れているぞ!」


1階に上がれば、使用人が叫びだした。


この屋敷には飾り気が少ない。
その分、どうしても死角が少ないのだ。


相手を躱し、蹴りや右手で捌いて失神させていく。

「後ろ!」

サンベリルの合図で屈み、前から来た者と相打ちさせた。



「ぐは…っ!おかしい、なんでみんなこないっ……。」


失神した者が、恨み節を言う。




そうだ、思ったより少ない。




そのとき。




「サンベリルを離せ!」



魔法の矢が飛んでくる。



矢を躱して、飛んできた方向を見上げると、大剣を握った体格のいい男がこちらを睨んでいた。

ストロベリーブロンドが返り血で染まり、禍々しく見える。





「あっ!だっ、だめっ!お兄様、この人は僕を助けてくれた人だよ!」

俺の腕の中でサンベリルがもぞもぞと動いて前を向く。


そうか。この男が、第一王子のプリンシパル。
サンベリルの双子の兄か。












「サンベリル~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「もう!やだぁ!やめてよぉ!僕もう大人だよぉ!」


これがロイ陛下。

サンベリルを抱きしめて、ほおずりをしている。

兵士たちもみな安堵し、安心している。


「サンベリルを助けてくれて礼を言う。そなたは……。この国の前王の息子、ではないかな。」


察しがいい。

さすが名君と呼ばれたお方。(息子に対して奇行が過ぎるが)


片膝をつき、騎士の礼をする。




「はい。私の名はリロンデル=スカイ=フロース。第一王子でした。しかし、父が倒れ、母も弟も妹も殺され、生き残りは私だけ。もはやただのリロンデルでございます。」


「……うむ。父上は素晴らしい国王だったのに残念だ。時にリロンデル。私たちはものすごくこの国に怒っている。三男のネニュファールの探りによれば、あのモグラめ、うちの天使を寝所に連れて来いと例のヒキガエルに命令したらしい。そうなる前、主の留守中にこうして取り返したわけだが……。こんなことを平気でもくろむような王統をそのままにしておくわけにはいかん。」

ロイ陛下の雰囲気は威圧的で、底の見えない恐ろしさを醸し出している。


「苦しめて苦しめて苦しめて始末してやらないとね。リロンデル、今この国を動かしている奴らのことはよく知っている。なあ、ネニュファール。」
そして、先ほどのプリンシパル王子も、父親に負けず劣らずで腕を組んで殺気を出している。


「ええ。自分で勝手に肥え太って落ちぶれたくせに兄を羨んで兄家族を抹殺し自分が王に成り代わろうとは、トープは許せない悪です。そして、彼により国の重役に躍り出たやつら。容姿のコンプレックスで迫害されていたクラポー公爵。まあ、こいつは小物ですが。キモは、バイオレット伯爵ですね。元々は辺境伯次男で伯爵家に婿入り、騎士団の副団長を務めていたようですが、実家と騎士団長を排除して軍部を握っている。彼は、戦争がやりたかった。自分の強さを過信し、力で他国を制圧して国を豊かにする夢を持っていたようですよ?それを、散々否定されてうっぷんが溜まっていたところをスカウトされたようです。一番の協力者ですね。」

ネニュファールは、淡々と述べた。


「流石、世界で名高いバスティン王国の王族の方々。そのとおりでございます。騎士団長や辺境伯の家族や、軍部でも彼らを支持していた者は、みな行方不明になっております。おそらく、殺されたか、生きていたとしてもどんな状態か…。今の軍部はバイオレットに洗脳された者か、奴に怯えて言いなりになっている者の集まりです。」









サンベリルは、ロイ陛下の膝の上で、リロンデルの身の上を聞かされて驚いていた。



高い身分の方だとは思っていたけど……。この国の王子様だったの?



「リロンデル。私たちが力を貸そう。ここにはいないが、我が国に残っているうちの大天使が一番怒っているのだよ。そして、お前がその先陣に立て。奴らを排除した後、ただ一人生き残った其方がこの国を立て直すのだ。」


「………はい!ありがとうございます!」


リロンデルは、父上の言葉を聞いて感激している。

リロンデルはこの国を立て直す。

彼しかいない。

彼は、王様になる人。


将来、公爵になる僕は―――――――。





初恋に咲いた胸の花が、萎む。

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